Snapchatは広告売上回復を実現できるか。ユーザーとサブスクリプションは増加

Snapchatの広告事業は、果てしなく続く負のループに捕らわれているようだ。

Snapchatは、何とかユーザーを引きつけエンゲージを保っているが、そうした注目を広告売上の増加につなげるのに苦労している。強力な直販広告事業の構築や測定事業の進化など、Snapchatの現在の取り組みがどうであっても、それをまとめ上げて、広告主が支持するような魅力的な提案を生み出すことはできない——少なくとも、Snapchatが望むほどには。

現実には、広告主がSnapchatへの支出額を増やさないのには、まだ多すぎるほどの理由がある。数字がそれを裏付けている。

広告売上はいまだ減少

Snapchatの2023年第2四半期の売上高は10億7000万ドル（約1525億円）で、前年同期比4％減だった。Snapchatの売上高は、これで2期連続減少したことになる。4月には、売上高が前年比で7％落ち込み、2017年の株式公開以来、初めて四半期売上高が減少した。

Snapchatは歯止めをかけようと取り組んでいるが、こうした売上減少はまだしばらく続きそうだ。

世界的な消費財メーカーでメディアを担当するあるマーケターは、匿名を条件に、Snapchatへの予算配分の増額を正当化するのが難しいと語った。同メーカーの事業にとって、広告支出の点では、Snapchatは、2番手か、おそらく3番手のプラットフォームだという。このマーケターがSnapchatへの広告支出を増やしたくないというわけではない。

それどころか、Snapchatのオーディエンスとイノベーションを考慮して、広告支出を増やしたいと思っている。だが、上司は、Snapchatでの広告についてまだ確信が持てずにいる。それに、そのせいで、Snapchatは常に、インスタグラム（Instagram）ストーリーと比較されており、｢我々の業界では、（Snapchatの）評判が良くない｣とマーケターは続けた。

このような見方が強まっているのは、マーケターが、Snapchatで広告をトラッキングすることがますます困難になっているからであり、同プラットフォームへの予算配分増額を正当化することがいっそう難しくなっている。

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｢TikTokが台頭する以前は、Snapchatは、若いオーディエンスにリーチする好ましい手段のように感じられた｣と、ニュー・エンゲン（New Engen）傘下のインフルエンサーマネジメント企業、アコーン・インフルエンス（Acorn Influence）で製品およびイノベーション担当バイスプレジデントを務めるケリー・ダイ氏は言う。｢今はそれほど重要ではなく、TikTokのおかげで、一時的ではないコンテンツでZ世代以降の層にアクセスできる｣。

これはすべて、かつてはソーシャルメディア界の寵児だったSnapchatにとって厳しい言葉だが、その運命はまだ決まったわけではない。

2023年の苦難の第1四半期後、Snapchatは、将来の成長に向けて態勢を整えるため、販売を監督する同社初の米州担当プレジデントとしてマイクロソフトのロブ・ウィルク氏を雇用するなど、好ましい方向へと多くの動きを示したように見える。ARやクリエイターへのさらなる投資は言うまでもなく、クリエイターは、クリックベースのインタラクションに移行し、クリックスルーのさらなる最適化に向けた機械学習アルゴリズムの再トレーニングに励んでいる。

こうした動きの結果について判断を下すのは時期尚早であり、失敗のレッテルを貼るのは早計だ。長期的には、Snapchatにとってうまくいく可能性もある。

｢スナップは、収益源の多様化のために多くの取り組みを行ってきた。広告事業で奮闘してきたことを考えると、賢明で、適切な動きだ。だが、プラットフォームの最終損益に大きな影響を与えることはまだないだろう｣とインサイダーインテリジェンス（Insider Intelligence）のソーシャルメディア担当主任アナリスト、ジャスミン・エンバーグ氏は述べている。

少なくとも、Snapchatはオーディエンスについて心配する必要はない——今はまだ。

ユーザーは増加中

直近の四半期に、Snapchatは1日当たりのアクティブユーザー数（DAU）が前年同期比14％増の3億9700万人に達し、第1四半期のDAU計3億8300万人からさらに増加した。この増加傾向は、しばらく続く模様だ。

将来を見据えて、市場調査会社のインサイダーインテリジェンスは、米国では、Snapchatは月間アクティブユーザー数（MAU）が2023年末までに計9170万人に達し、2024年には9380万人、2025年には9590万人に増加すると予想している。さらに広く見れば、世界全体では、MAUは2023年末までに6億9470万人に達し、2024年には7億3480万人、2025年までには7億6920万人にまで増加する見込みだという。

もちろん、これらの予測は、2月にSnapが発表したMAUの7億5000万人を下回るが、これは、ボットや偽アカウント、単一ユーザーの複数アカウントを除外しているからだ。

インサイダーインテリジェンスの予測に基づくと、Snapchatは、世界で今年最も急成長するプラットフォームとしてTikTokを上回る可能性もある。だが、こうした成長の可能性は、Snapchatのインドで高まる人気に大きく左右される。インドでは、TikTok禁止を受けてシェアをかなり伸ばしてきたからだ。

また、TikTokは、同プラットフォームのデータによると、2021年9月にすでにMAUが10億人を超えたという。そのため、Snapchatは、成長が最も速いプラットフォームになるかもしれないものの、全体的なユーザー基盤はまだTikTokよりかなり小さい。

これが問題というわけではない。Snapchatはこの数年のあいだ、既存オーディエンスとのエンゲージメントを効果的に引き上げられることを示してきた。TikTokスタイルの短編動画フィード｢スポットライト（Spotlight）｣の最新データが、それを証明している。

会見を行ったSnapのCEO、エバン・シュピーゲル氏によると、第2四半期に、スポットライトは、コンテンツの総視聴時間が前年比で3倍になった一方で、MAUは平均で前年同期比51％増の4億人超に達したという。

明らかに、Snapchatの問題は、オーディエンスよりもむしろ、どれだけマーケターに受け入れられ、競合プラットフォームと差別化することができるかという点の方が大きい。Snapchatが、広告の先にあるオーディエンスからの収益獲得に目を向けているのも、不思議ではない。

サブスクリプションが増加

Snapchatのサブスクリプションサービス｢Snapchat+｣は、リリース前の実験的機能を独占的に提供するもので、料金は月額3.99ドル（約570円）だが、そこそこの成長が見られた。

利用登録者基盤については、2023年6月までに、すでに400万人の有料会員に達しており、会見では繰り返し述べられた。有料会員は、第1四半期の計300万人から増加しており、この急成長は、Snapchatの忠実なユーザーを示し、ユーザーがサービスに求めている機能や特典を理解するのに役立つだけでなく、それまで無料で利用していたサービスにユーザーは金を払う気がないという説が間違っていることを証明している。

特にZ世代は実際に、ソーシャルメディア体験を高める一定の機能やサービスには支出を厭わないので、Snapchatにはそのための適切なユーザー基盤がある、と、インサイダーインテリジェンスのエンバーグ氏は指摘している。

｢利用登録者が400万人というのは快挙だ。明らかに、Snapchatはユーザーがプラットフォームに求めているものという点で、いいところに気づいている。だが、それでもまだ、年間売上高は2億ドル（約285億円）を下回っている。あらためて言うが、（サブスクリプション売上は今のところ）最終損益に大きな影響をもたらしていない｣とエンバーグ氏は付け加えた。

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