ステーブルコインのテザー、時価総額ほぼ回復－テラ崩壊時の喪失分

テザーの資産、昨年４－６月に20％近く減少していた

ＵＳＤコインなど圧迫した銀行業界混乱やビットコイン上昇が追い風

ステーブルコインのテザー（ＵＳＤＴ）は、１年弱前にライバルのテラＵＳＤが崩壊したのをきっかけに失った時価総額を間もなく全て回復する見込みだ。

データトラッカーのコインマーケットキャップによると、ＵＳＤＴの裏付けとなる資産について運営者の保有額は21日時点で計約814億ドル（約10兆9000億円）。約830億ドルとピークに達した昨年５月には、テラ崩壊で暗号通貨が軒並み売られた。テザーの資産は昨年４－６月（第２四半期）に20％近く減少した。

足元の回復はテザーが取引や価値保存の手段として、暗号資産（仮想通貨）の分野で支配的な役割を果たしている証左だ。世界で最も取引が多い暗号資産であるテザーは、現金・現金同等物の準備金を裏付けにすることでドルとの１対１の償還を維持する方針。

テザーはテラＵＳＤ崩壊時には一時１ドルを下回り、暗号資産交換業者ＦＴＸが破綻した11月にはで再び１ドルを割り込んだ。テザーが準備金として利用する資産の質はこれまでに疑問視され、世界各国・地域の規制当局はステーブルコインの発行者に注意を向けた。

テザーは今年に入り、サークルのＵＳＤコイン（ＵＳＤＣ）などのライバルを圧迫した銀行業界混乱に加え、仮想通貨ビットコインの約70％上昇につながった流れが追い風になっている。ギャラクシー・デジタルの調査責任者アレックス・ソーン氏によると、テザーの流通量は相場上昇局面で増加し、下降局面で横ばいや小幅減少になることが多い。

「クジラ」と呼ばれる大口投資家も、うまみの大きい取引を手じまいし、その収益をテザーで保管していると、ウエーブ・デジタル・アセッツのＤｅＦｉ（ディーファイ、分散型金融）責任者、ヘンリー・エルダー氏は指摘している。