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概要:独金融最大手ドイツ銀行は現在、生成AIツール約25件の試験運用を行っており、それらの多くが2024年初頭に本番稼働します。今後1年間で行内のAI人材を2〜3倍に増やし、既存行員の再教育にも着手するそうです。
ドイツ銀行(Deutche Bank)の人工知能(AI)チームを指揮するチーフ・イノベーション・オフィサー、ギル・ペレス氏
コンピューター6台を組み合わせたマルチディスプレイの大画面を、大勢の男たちが集まって見上げていた。彼らが目を凝らしていたのは、銀行の未来を変えるかもしれないジェネレーティブ(生成)AIのデモンストレーションだった。
ある企業の業績とESG(環境・社会・ガバナンス)戦略について生成AIに質問すると、ディスプレイには折れ線グラフや棒グラフ、業績報告書、株価チャートなどが次々と表示された。
デモではシンバル(Cymbal)社という架空の企業のデータが表示されたが、実在の企業に関しても、この生成AIツールは同様の結果を瞬時に提示することができる。
このツールはドイツ金融最大手ドイツ銀行(Deutche Bank)が試験運用しているもので、クライアント向けの説明資料を自動作成できる。ジュニアバンカー(調査・分析や資料作成を担当する若手行員)たちが数日がかりでまとめる資料もわずか数秒で仕上げる。
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ツールのデモが披露されたのは、8月下旬にグーグル(Google)のクラウド部門がサンフランシスコで開催したイベント「Google Cloud Next 2023」の会場だった。
ライブデモでは、会話の途中で言語を切り替えられるチャットボット、見込み顧客に関するブレインストーミングに使う分析用ダッシュボード、最新の自動コーディング手法など、ドイツ銀行が試験運用中の複数のツールが紹介され、会場からは驚きの声が上がった。
「ChatGPT」の華々しいデビュー以来、生成AIは金融業界でも大流行している。ウォール街の関心と投資は生成AIに集中しており、多くの金融機関がこの新しいテクノロジーの用途を模索している。
ドイツ銀行は、ビジネスと行員たちの業務を生成AIで変革しようとしている。同行は現在、約25件の試験運用を行っており、それらの多くが2024年初頭に本番稼働する予定だ。
今後1年間で行内のAI人材を2〜3倍に増やすとともに、既存行員を再教育することで、フロントオフィスからバックオフィスまでAIを浸透させようとしている。
しかし、生成AIについては将来的なコスト、規制に関する議論、過熱する人材争奪戦など、未知の地雷原が広がっている。その点に関して、ドイツ銀行のチーフ・イノベーション・オフィサー(最高革新責任者、CIO)、ギル・ペレス氏は次のように語る。
「生成AIは全く新しいもので、ベンチマーク(基準となる指標や先例)がないため、多くの推測が飛び交っています。現時点では『全ての詳細が分かっているわけではありませんが、生成AIを使うのが当たり前になる日が必ず来ます』と言うしかありません。
役員会や最高財務責任者(CFO)にそれを理解してもらうのは難しく、発想の飛躍を促す必要があります」
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300人規模のAI人材を2〜3倍増する計画
ドイツ銀行は2020年にグーグルとパートナーシップ契約を結び、銀行システムをグーグルクラウド上に移行することを表明した。
グーグルはAI活用についてもドイツ銀行をサポートし、2021年からAI戦略の構築を進めてきた。現時点では、100人弱のテクノロジスト(体系的知識と技能を持ち合わせた専門家)で構成されるAIチームが中核的な役割を果たしている。
ドイツ銀行はAI帝国を築き上げるため、テクノロジストを積極的に増員しており、各事業部門も含めて合計300〜400人がAIプロジェクトに取り組んでいる。ペレス氏によれば、今後12カ月以内にAI人材を現在の規模の少なくとも2倍、最大で3倍に増やす計画という。
ドイツ銀行の広報担当にAI関連の取り組みに対する具体的投資額を尋ねたが、回答は得られなかった。
同行のアプローチでユニークなのは、約13人の業務責任者がAI戦略の推進役として各部署に配置されていることで、それぞれの責任者を通じて業務改善に資するさまざまなユースケースが吸い上げられるようになっている。
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2024年初頭からAIツールの本格運用
ドイツ銀行の2023年上半期(1〜6月)の税引前利益は前年同期比2%増の33億ユーロ(約5210億円、1ユーロ158円換算)と、2011年以降で最高を記録。主力のコーポレートバンキング部門が好調をけん引した。
こうしたビジネスの勢いに乗って、同行のAIツール開発はかつてないスピードで進んでいる。
普通の企業であれば、テクノロジー部門が新しい機能やツールを開発する前に、予算を割り当ててもらえるよう事業部門を説得する必要がある。反発を受け、ツールの開発や導入が大幅に遅れるのは決して珍しいことではない。
しかし、ドイツ銀行では先述のように事業部門から各責任者を経由してAI活用のアイデアが上がってくる仕組みになっているため、開発の提案にはすぐにゴーサインが出て、迅速に行動することができる。
「例えるなら、我々(テクノロジスト側)はもう(事業部門を)プッシュする側ではなく、プッシュされる側にいるということです」(ペレス氏)
早ければ2024年1月にも、同行の行員の日常業務は大きく変わるかもしれない。
コーポレート・バンキング部門は2月以来、AIツールの実証実験の場となっており、ユースケースの多くは、ジュニアバンカーが担ってきた手間のかかる業務プロセスの効率化を目指している。
グーグルのイベントでデモを行ったツールは、ほんの数回のキー操作でクライアントへのブリーフィング資料を作成して見せた。
Insider編集部の取材に対し、コーポレート・バンキング部門副会長のタマラ・ビティックス氏はこう説明した。
「(AI活用によって)時間を節約することで、ジュニアバンカーはクライアントやクライアントが属する業界内の動向、競合他社などを分析し、じっくり考察するのにより多くの時間を割くことができます。
加えて、クライアントの話に耳を傾け、その意向を読み取り、信頼関係を構築するといった、人間がやるべき仕事に集中できるのです。
悩ましい問題は、当行のジュニアバンカーたちが情報を集めるのに必死で、分析や考察が足りないこと。それもAIがもうすぐ解消してくれるかもしれません」
ドイツ銀行は現在、コーポレートおよびインベストメント・バンキング部門で顧客対応のためのAIチャットボットを試験的に導入している。
例えば、クライアント企業が口座の署名者を変更する必要がある場合、その人物が署名者もしくは承認者となっているクライアントの保有口座を全て表示するなど、チャットボットは複雑な質問にも対応できる。
同行は2024年第1四半期(1〜3月)にこのAIチャットボットを本番稼働させる予定で、現時点では一部のクライアントと社内の人事部門に限定して試験運用中だ。
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リスクと未知の領域
ドイツ銀行の生成AI戦略構築の前途は平坦ではない。
例えば、需要の高いAI人材の獲得競争に勝つ必要がある。また、開発する技術者を外部から連れてくるだけでなく、既存の従業員に再トレーニングおよびスキルアップしてもらうためのプログラムも確立しなければならない。
「パーソナルアシスタント(個人秘書)があなたを助け、あなたのために何かをしてくれるように、AIはあなたをサポートしてくれるのだということを、従業員に理解してもらおうと取り組んでいます。
同時に、最終的な責任を負うのはAIではなく、それを使う人間であるということも理解してもらわなくてはなりません」(ペレス氏)
生成AIの進化と規制当局の受容性には大きなギャップがある。
ウォール街の金融機関でイノベーションやテクノロジーを担当するチームの多くにとって、当局の規制はフラストレーションの種だ。政府が生成AIに対しどのような規制を敷くのか、現時点ではまだ見えてこない。
テクノロジーの投資対効果をどう見極めるのかも、未知の問題だ。パブリッククラウドやモバイルアプリのような他のテクノロジーと異なり、生成AIには投資対効果を測るための前例がない。
「取締役会で投資対効果を数値化して説明するのが難しく、他のテクノロジー投資案件に比べて承認を得るのがより困難です」(ペレス氏)
さらに、本番稼働した後のコストの問題もある。
「生成AIツールは膨大な演算処理を行うので、それに見合ったサーバーの処理能力が必要です。試験運用が終了し、本番稼働するようになれば、必要な処理能力は10〜20倍になる可能性があり、その分だけコンピューティングに要するコストも膨らみます」(ペレス氏)
そして、ペレス氏は本音をこう語る。
「生成AIは素晴らしい技術です。でも、投資リターンはどうなるのか、それをどうやって数値化すればいいのか、当社が得るベネフィットはどれだけのものか。正直なところ、その答えはまだありません」
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