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概要:今年に入り流出した数千億ドルもの預金の一部を埋め合わせる手段を米銀は見つけたが、それは高くつき、安定した預金と比べてとどまり続ける粘着性が特にあるわけではない。
今年に入り流出した数千億ドルもの預金の一部を埋め合わせる手段を米銀は見つけたが、それは高くつき、安定した預金と比べてとどまり続ける粘着性が特にあるわけではない。
顧客による相次ぐ預金引き出しに見舞われた全米各地の中規模銀行は、バランスシートの強化に向け、通常5%前後かそれを上回る著しく高い金利を要求する他の資金ソースにその場しのぎで頼らざるを得なかった。米連邦準備制度や連邦住宅貸付銀行(FHLB)制度から地銀はさらに数十億ドル借り入れ、驚くべきことだが、仲介者がほとんど知られていないブローカー預金にも手を出した。
米銀行業界資産の80%余りを占める上位84行について、規制・監督当局への四半期報告を分析すると、連邦準備制度やFHLB、ブローカー預金を経由する3月末時点の借入額だけでなく、利益の一部を圧迫し始めている負担の様子がうかがえる。必要な資金を集めるため、貸し付けで得られる金利収入を上回る利払いを迫られており、そうしたコスト増が最も苦境にある銀行の経営を揺さぶる恐れがある。
84行の1-3月(第1四半期)の支払利子は720億ドル(約10兆4000億円)と、前年同期の12倍に跳ね上がり、そこからひずみが既に読み取れる。FHLBからの借入額とブローカー預金の合計額は1兆4200億ドルと倍以上に増え、そのうちブローカー預金は8000億ドル余りに達した。後者は安定した顧客層からの預金ほど粘着性がなく、ホットマネー(短期資金)と呼ばれる。
銀行の株主にとって悪いニュースは、1-3月のコスト上昇が恐らく始まりに過ぎないという点だ。連邦準備制度の積極的な利上げなどが影響し、シリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー・バンクが今年3月に経営破綻した。多くの地銀の資金調達コストは第1四半期の遅い段階になって急上昇し始めた。新たな環境の下で四半期の全体像がどのようなものになるか投資家はまだ目にしていないが、数週間以内に分かるだろう。
このデータは、地銀の混乱の次に予想される光景を指し示す。資金調達コスト上昇の影響が減益から赤字、資本の毀損(きそん)に移行する場合、投資家と規制・監督当局はそれほど忍耐強くいられないと既に示唆している。
ジャニー・モンゴメリー・スコットのアナリスト、クリス・マリナック氏は「これはスローモーションの自動車事故だった。われわれは米利上げが再度あるかどうかさえ分からない。連邦準備制度は銀行に一息つく余裕を与えたが、まだ安心できない」とインタビューで語った。
金利上昇は銀行にとって朗報と通常捉えられており、上位金融機関にとっては実際その通りの展開になった。だが今年はそうした急ピッチの米利上げが一部の銀行を苦しめる状況もあり得ることが示された。金融引き締めに伴い、特に短期金融市場と米国債が普通預金口座に比べ魅力を増した。
最近のブローカー預金の多くは、ほとんど知られていない仲介者が、より高い金利を求める企業や富裕層の個人と銀行を結び付け、譲渡性預金証書(CD)などの形態で取りまとめる。資金を何年もとどめておけるため銀行は助かるが、高い金利をその間払い続けなければならない。
メイヤー・ブラウン法律事務所のパートナー、マット・ビザンツ氏によれば、規制・監督当局は多くの場合、ブローカー預金を快く思っていない。「歴史的に見て、ブローカー預金は素早く動く可能性がある」ためだ。
ブローカー預金が最も増えている一部金融機関に株主も既に注目し、株式を売っている。株価が年初来で60%余り下落したパックウェスト・バンコープのケースを見ると、1-3月期末のブローカー預金は前年同期比1774%増の60億9000万ドルと、全体の5分の1余りを占める。この追加資金がなければ、預金の減少率は15%でなく、32%と報告されたはずだ。
株価がやはり急落しているウェスタン・アライアンスも同じ時間枠でブローカー預金が3倍強に増えた。それらの追加資金を差し引くと、第1四半期末時点で預金は8.8%でなく、20.6%減ったことになる。
そうした状況は、アナリストによる両行の業績見通しを既に曇らせている。ブルームバーグが調査するアナリストは、ウェスタン・アライアンスの通期利益を8億800万ドルと予測し、年初の予想から約4億ドル下方修正した。パックウェストについては、年初の4億7000万ドルの黒字見通しに対し、今は10億ドル余りの赤字を見込む。
ウェスタン・アライアンスのデール・ギボンズ副会長兼最高財務責任者(CFO)は「SVBとシグネチャー・バンクの経営破綻に伴う影響は3月半ばにピークに達しており、当行の3月末時点の四半期データを用いることは、現在の流動性プロフィルについて誤解を与える。当社の借り入れはその後、数十億単位で減少し、より正常化された」と電子メールで説明した。
パックウェストの広報担当者にコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。
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