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概要:フードロス削減に取り組む食品ECのクラダシが6月30日、東証グロース市場に上場します。フードロスになりそうな食品を安価に販売する「1.5次流通」で成長してきた同社は、「フードロスは企業努力ではなくせない」と言います。
Kuradashiの関藤竜也代表取締役社長(右)と河村晃平CEO。
撮影:土屋咲花
「意味消費やエシカル消費をする消費者が増えている中で、弊社との取引は新たなブランドイメージの構築につながります。『時代が求めてくる一歩手前に上場する』という判断をしました」
創業者の関藤竜也社長(52)はこのタイミングでの上場についてこう話した。
SDGsという言葉は今やすっかり浸透し、環境問題への意識も高まっている中、フードロス削減に取り組む食品ECのクラダシ(Kuradashi)が6月30日、東証グロース市場に上場する。
「タイミング」を重視する関藤社長は常に社会の変化を先読みしながらビジネスを拡大してきた。2022年6月期の売上高は20.7億円。2014年の創業以降、2期目から黒字化し、着実に売り上げを伸ばしてきた。
クラダシが業界の課題として着目したのは、小売業の「3分の1ルール」と呼ばれる独特の商習慣だった。
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日本の商習慣「3分の1ルール」に着目、フードロス1.6万トン削減
第4期~8期の売上高。ここ2年はIPOを見据えた組織拡大やコロナ禍によるEC化の伸長などによって売上を大きく伸ばした。直近8期は、広告宣伝費への投資で約8000万円の純損失を計上している。
有価証券報告書をもとに作成
3分の1ルールとは、賞味期限が残り3分の1となる前に、卸業者が小売店に納品しなければならないルールのことだ。期間を過ぎると廃棄される可能性が高くなり、食品ロス発生の要因の一つになっている。食品メーカーとスーパーなどの小売店の間で続く、独特の商習慣と言える。
クラダシは、3分の1ルールに抵触したそのままでは廃棄されてしまう商品を買い取り、ダイナミックプライシングによる最適割引額で売り切る食品ECを主力事業にしている。「1.5次流通」※と呼ぶこの独自のビジネスモデルが強みだ。
これまでに削減したフードロスは1万6077トン、経済効果は78億円に上る(2023年3月末時点)。
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食品ロスはなくならない?
前出のとおり、クラダシは3分の1ルールという課題に着目したビジネスだ。とはいえ、3分の1ルールは環境意識の高まりなどから是正の動きもある。仮に撤廃されればクラダシのビジネスも揺らぐのではないか?
関藤社長は「大前提として、3分の1ルールを緩和する、減らすことは是としています」との立場を明確にしつつも、見方は現実的だ。
「3分の1ルールは約10年前から農林水産省を中心に緩和を促す動きがありますが、繰り返し課題として指摘されていながらも、あまり変わっていない現状があります。大手企業などでは2分の1まで許容する取り組みもなされ始めているものの、全体から言うとパーセンテージは少ない。
よく、これが全部2分の1になったらクラダシはダメージを受けるのか?と聞かれます。その場合、メーカー側のロス発生比率は減るかもしれませんが、代わりに卸売業者や小売店でのロスは増える可能性があります。
私たちはメーカーとだけしかお取引できないわけではないので、急にビジネス的ダメージを受ける心配はないと考えています」
環境省の最新の推計によると、日本の食品ロス量は523万トン(2021年度)。減少傾向であるとはいえ、国民1人当たりに換算すると毎日茶碗一杯分を捨てている計算だ。
関藤社長は「フードロスはいけないものではないというか、企業努力だけではなかなか減らすことができない部分です」と言う。規格外品の発生や在庫保持などによって、流通の仕組み上出てしまうものだからだ。
「そこで、クラダシの1.5次流通の仕組みがあります。今回の上場で知名度や社会的信用を得て、フードロス削減のインフラとしてクラダシを進化、伸長させたい」
大量廃棄「いずれ社会問題に」先見の明で起業
「たまプラーザ テラス」にオープンしたKuradashi(クラダシ)初の実店舗。
撮影:荒幡温子
クラダシの原点は、関藤社長の住金物産(現・日鉄物産)勤務時代の経験にある。
「1998年~2000年に『世界の工場』と言われ始めていた中国で勤務していたのですが、大量生産、大量流通、大量販売を通して経済成長と豊かな食を実現する一方で、 大量廃棄も目の当たりにしました。大きな疑問を感じたとともに、これが繰り返されていくといずれ環境面で大きな社会問題になると思いました」
資金を貯め、2014年7月に起業。創業して約7カ月後の2015年2月27日、100社のパートナー企業を集めたうえで、クラダシのサービスをローンチした。
当時は実績もない、いわば「ぽっと出」のスタートアップ企業。賞味期限が短い飲食物を売るという前例のないビジネスモデルに社会の理解も進んでいなかった。安価で商品を提供することでブランド棄損につながりかねないという懸念から取引を断られることも多かった。
信頼獲得には、流通の川上から川下までを見てきた商社時代の知見が生きた。
「与信調査があった時に、主要取引先企業やその割合について『業務の性質上、全てを答えられない』と回答したのですが、それで『この人、分かっているなと思って安心して取引した』と言っていただいたことがあります。
自分のブランドを預けても情報が変な飛び方をしたり、どこかに転売されたりするリスクがないと認識いただいたようです。
サービス開始当初から、弊社と取引することが企業の社会的価値の向上につながる —— という未来を描いていました。ただ、社会や企業の受け入れ体制に合わせてマーケティングのあり方は変えてきました」
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「売れ残り」食品ECのクラダシがたまプラーザに初の常設店。「実店舗」ならではの体験も
企業の意識が「隠したい」から「開示したい」に変わり始めた
関藤竜也代表取締役社長。
撮影:土屋咲花
「クラダシへの出品は内緒にしたい」から、「開示したい」に企業の態度が変わったのは2018年ごろだったと、関藤氏は振り返る。メディアでSDGsが頻繁に取り上げられるようになり、反対に実態の伴わない「SDGsウォッシュ」などという言葉も生まれた。
「その時に、『これは間違いないものになってきたな』と。(サステナビリティーをめぐる)ネガティブな情報が入るということは、一つのシグナルだと思いました」(関藤社長)
2018年当時に取引をしていた約100社に対し、「クラダシが上場したら現取引がもっと拡大するかどうか」をヒアリングした。
「上場は全てを公開することを意味しますが、ヒアリングした企業の回答は1社残らず『ぜひ』と。時代がだいぶ動いてきたという実感をもとに、上場へ向かう意思決定をしたのはその頃のことです」(関藤社長)
「目的は社会的信用を得ること」
「たまプラーザ テラス」にオープンしたKuradashi(クラダシ)初の実店舗。
撮影:土屋咲花
現在、パートナー企業は約1300社に上る。取引先企業には伊藤園や江崎グリコ、ロッテなど大手メーカーも名を連ねるが、自身では「まだまだ」だと言う。
「どの企業もロス率は同じくらいなので、取り扱い高の大きい大手企業をいかに巻き込むかが重要です。上場で社会的信用を得ることで取引をさらに拡大し、ミッションに掲げる『ソーシャルグッドカンパニーでありつづける』を実現したい」
上場後の目標について、2022年7月にCEOに就任した河村晃平氏(37)は
「2022年6月期の売上高が20.7億円 で、今期は30億円の着地見込みです。今期の3年平均成長率(CAGR)は74.4%。当然ではありますが、グロース市場で求められる水準の成長率を維持していきたいと思っています。現在の会員数は約46万人なので、まずは年内に50万人を目指しています」
と話す。
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そのために、食品ロスを販売するEC事業を主軸に、付帯するビジネスとの相互作用で事業を成長させていく計画だ。
その一つがオフライン事業。2023年5月と6月、たまプラーザと三井不動産の新施設「木更津コンセプトストア」に立て続けにリアル店舗を出店した。
「手に取って見てもらう購入体験はオンラインでは提供できません。ECでの販売はロット数が多いのですが、オフラインでは1点から購入できることもあり、チャネルの意義は大きい。オフラインで見た商品をオンラインでも買ってもらうといったOMOも進めていきます」(河村CEO)
他にも、クラダシのデータやノウハウを法人向けサービスとして提供していくことを検討する。
クラダシはECサイトで取り扱う商品の約8割を企業からの在庫買い取り、約2割は出品企業側からの直送で販売している。値付けにはダイナミックプライシングを取り入れ、最大97%オフで商品を売り切る。
「まさに賞味期限の緊急患者といいますか、賞味期限の短い商品がどんどん入ってきます。これらを消化する在庫管理はクラダシ独自のノウハウで、今後取引先にも提供していける強みだと思っています」(関藤社長)
蓄積されたデータを基にした需給予測システムの販売も検討し、「在庫を買い取る前のファネルから関わることで、フードロスになる商品自体を削減していきたい」(河村CEO)という。
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