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概要:日銀の植田和男総裁と米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の最近の発言を比較すると、日米中銀の政策スタンスの差はこれまでより明白となっている。日米の実質金利差が拡大方向に動き、ドル高・円安が一段と進行すれば、日本の消費者物価指数(CPI)を押し上げる大きな要因になる。
[東京 22日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁と米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の最近の発言を比較すると、日米中銀の政策スタンスの差はこれまでより明白となっている。日米の実質金利差が拡大方向に動き、ドル高・円安が一段と進行すれば、日本の消費者物価指数(CPI)を押し上げる大きな要因になる。
6月22日、日銀の植田和男総裁と米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の最近の発言を比較すると、日米中銀の政策スタンスの差はこれまでより明白となっている。東京都内で1月18日撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)
2023年度後半にCPI上昇率が鈍化して2%を割り込むという日銀のシナリオとは別の展開になりそうだとわかった場合、政府が電気・ガス料金の支援策を延長し、日銀に手を差し伸べるかどうか。その点が、イールドカーブ・コントロール政策(YCC)の枠組みにおける長期金利の上限をどうするかという問題と密接に関連しそうだ。
<慎重な日銀総裁と審議委員>
16日の植田総裁の会見では、物価に関し「下がり方が想定よりやや遅い感じがする」と述べつつ「企業の価格設定や賃金引き上げの影響を含め、極めて不確実性が高い状況にあり、物価安定の目標の持続的・安定的な達成には、なお時間がかかる」と指摘。現在の超緩和的な政策をしばらく維持している姿勢を強くにじませた。
また、日銀の安達誠司審議委員は21日、6月分までのCPIでは日銀のメインシナリオを上振れていくか「確証を持って判断しがたい」と述べた。
さらに野口旭審議委員は22日、コアCPI(除く生鮮食品)の前年比が、輸入物価高の価格転嫁が一巡するにしたがって「今年度半ばにかけて2%を下回っていく」と指摘した。
いずれも日銀がCPI上昇率の上振れを材料視し、YCCの枠組み修正など政策対応に着手する局面とは、かなり距離があるとのニュアンスを示したと言える。
<パウエル議長、2回の利上げ否定せず>
これに対し、パウエル議長は21日、米下院金融サービス委員会の公聴会で証言を行い、経済が現在の方向で推移する場合、FRBは一段の利上げを実施するということが「かなり正確な推測」になると表明。最新の金利・経済見通しに年内にあと2回の利上げが実施されるとの見通しが盛り込まれたことについて「経済がほぼ予想通りに推移した場合にどうなるかをかなり正確に推測したものだ」と述べた。
超緩和政策の維持を当面、継続するとしている日銀と、年内2回の利上げの可能性を否定しないFRBとの差は16日以降、歴然としてきたと言っていいだろう。
<開く日米の実質金利、円安進展の地合いに>
その結果、外為市場ではじりじりと円安が進み、21日のNY市場では一時、142.37円まで円が売られた。日米間の実質金利差はじわじわと拡大を続けており、円安が止まる気配は短期的には見えない。
ドル高・円安が止まるときは、1)欧米などでの金融ショックの発生、2)FRBの利上げの累積的効果による米経済の急速な後退──などが考えられる。金融ショックはいつ発生するのか特定できないが、パウエル議長が「米経済は非常に強い」と述べており、景気後退は早くても年明けになるだろう。
このように考えると、年内にゆっくりと円安が進み、どこかの時点でドル/円が145円を突破して150円に接近する展開もあり得ると筆者は考える。
<円安と物価押し上げのルート>
この円安が日本経済に与える影響は、物価の押し上げ効果と日本株上昇による個人と企業のリスク許容度の拡大だろう。
前者は、輸入物価の低落傾向がCPIに波及する経路で、その下落効果を圧縮させ、どこかで上昇させる効果を持つ可能性が高まる。
また、外国人観光客の増加をもたらすと同時に、宿泊・外食・交通などの各分野で人手不足を深刻化させ、人件費上昇の要因になる。このルートでサービス価格が広範に上がると筆者は指摘したい。実際、4月の宿泊料金は前年比8.1%増と目立って上がってきた。
日本株の上昇は、海外勢の日本株買いとヘッジの円売りがセットになっているために目立ってきたが、ここにきて買い遅れてきた国内勢が日本株買いを増やしてきたため、円安効果を期待できる輸出系企業を物色しているというかたちで連鎖する動きも出てきたようだ。
株を保有する個人と企業は含み益を拡大させ、リスク許容度の拡大を背景に消費や投資を増やす余地が出てきたとも言える。
<物価上昇と生活の余裕度合い>
こうなると、23年度後半にコアCPI上昇率が2%を割り込むという日銀のシナリオの実現性に陰りが出てくることになる。言い換えれば、2%の目標に一歩近づいた可能性があるとも言えるが、16日の会見で植田総裁は、物価の動向に関し「不確実性が高い」と繰り返し述べ、慎重な姿勢を示している。
他方、日銀の「生活意識におけるアンケート調査」(23年3月調査)では、現在の暮らし向きに「ゆとりがなくなった」との回答が56.0%となり、物価について1年前と比べて「かなり上がった」が62.8%となった。
つまり、慎重を期し、失敗をしないように「石橋をたたく」戦略の植田総裁にとって、国民のゆとりがなくなり、物価高に不満が高じてくると、じっくりと待つ時間の長さに微妙な影響が出てこないとも限らない。
1ドル150円に接近するような円安進展となった場合、物価押し上げ効果の増大に対する「世論」の批判が、日銀の政策修正への圧力になる可能性がありそうだ。
また、バブル後高値を更新し続ける日経平均とリスク許容度の増大が、長期金利を0.5%で抑える緩和効果と見合うのか、という実体経済と緩和効果とのバランスという点でも、日銀に政策の修正を迫る声が高まると予想される。
<どうなる政府の支援策>
そこで、注目されるのが政府の電気・ガス支援策だ。9月末を期限に個人の電気・ガス料金の一部を政府が支援する内容で、前年比で全国CPIを約1%ポイント押し下げている。4月全国のコアCPIは3.4%上昇なので、もし、支援策がなければ4.4%になっていたことになる。
政府が打ち切りを決めれば、日銀がYCCの枠組み変更に向けて「背中を押される」ことになる構図ができる。ただ、一部では今年秋の衆院解散もささやかれる中で、政府批判の1つになるかもしれない4%の物価上昇を政府が、そのまま容認するというのも想像が難しい。
何らかの支援を継続することになれば、物価水準が押し下げられ、日銀の見極めの時間が「延長」されることになるかもしれない。
政府の支援策の取り扱いは、日銀の物価や金融政策そのものの判断に大きな影響を与えうると指摘したい。
●背景となるニュース
・物価のメインシナリオ、6月分までの指標では判断困難=安達日銀委員
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