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概要:昨年来の米連邦準備理事会(FRB)による連続利上げにもかかわらず、米国経済が底堅い。5月の米雇用統計では、非農業部門就業者は33.9万人増と、市場予想の19.5万人と前月の29.4万人も大きく上回った。同じく5月の米個人消費支出も、前月比プラス0.8%と、市場予想のプラス0.5%よりも強かった。インフレ率について鈍化が見られるといっても、ターゲットの2%は大きく上回っている。
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[東京 7日] - 昨年来の米連邦準備理事会(FRB)による連続利上げにもかかわらず、米国経済が底堅い。5月の米雇用統計では、非農業部門就業者は33.9万人増と、市場予想の19.5万人と前月の29.4万人も大きく上回った。同じく5月の米個人消費支出も、前月比プラス0.8%と、市場予想のプラス0.5%よりも強かった。インフレ率について鈍化が見られるといっても、ターゲットの2%は大きく上回っている。
米利上げは昨年春から続いてきた。ここにきて倒産が急増している理由はなぜか。大槻奈那氏のコラム。写真は米ドル紙幣。2011年8月、東京都内で撮影(2023年 ロイター/Yuriko Nakao)
それにもかかわらず、今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げのいったん休止が見込まれている。3月の金融機関の動揺や、足元で下落が目立つ商業不動産などが懸念材料とされる。
これらに加え、足元で変調の兆しが見えてきたのが企業倒産だ。5月の米企業倒産は前年同月比31%増の2324件となった。前月比でも27%の増加だ。2023年通年の米企業倒産件数は、リーマン後最高に達すると予想されている。
<破産法11条適用申請の急増>
とりわけ、日本の民事再生法に当たる米連邦破産法11条適用ケースの急増が目立つ。5月の申請件数は、前年同月比で105%増、前月比では76%の急増となった。家庭用品のベッド・バス・アンド・ビヨンドや、データセンター運営のサイクステラなどがその例である。いずれも立派なナスダック上場企業である。
なぜ、米連邦破産法11条の適用申請が増えているのか。一般に同法11条は、清算型の同法7条に比べて、債務返済等の負担は重いものの事業の継続自体には問題が少ない場合に用いられることが多い。
米企業の金利は2.3ポイントも上昇している(BB格企業の社債イールド。2019年平均と今年1─5月の平均の比較)。これらを基に試算すると、企業の平均の利払い費はコロナ前比で1.8倍に膨張しているということになる。
一方で、企業の営業利益も増加はしているものの、増加幅は3割強程度だ。利払い負担増は特に借入比率が高い企業にとっては大きな重しだろう。
<金利上昇と企業財務の悪化>
しかし、利上げは昨年春から続いてきた。ここにきて倒産が急増している理由はなぜか。
要因の1つに、企業の手元資金の枯渇があるとみられる。コロナがまん延した時期に、企業の現預金は一時73%も増加した。この現預金で一定程度しのいできたとみられる。しかし、企業の現預金は、ピークの2021年第3四半期から1年余りにわたって取り崩され、昨年末にはほぼ定常状態に戻っている。
金利上昇の企業財務への影響は、ここからが正念場だ。では、銀行の貸出動向はどうか。銀行の担当者に貸出態度を聞くローン・オフィサー・サーベイでは、昨年初頭から徐々に貸出条件が厳格化し始めている。貸出態度に影響を与えているのは、銀行自身の財務状況、すなわち、不良債権比率や資本比率や預金残高である。
これらを1四半期先行させた値と銀行の企業向け貸出残高は、いずれも有意な相関(有意水準1%。不良債権比率は負の相関)がある。
<懸念される負のスパイラル>
このことは、企業融資が不良債権化し、銀行の自己資本比率が低下し始めると、銀行が企業向け貸出を減らすことを意味する。貸出の減少はさらなる倒産を招くことから、典型的な悪循環に陥ることになる。
おりしも、資産1000億ドル以上の銀行の資本規制が厳格化されると報じられた。平均で20%程度資本要件が引き上げられる可能性があるとされる。適用になる銀行は貸出により慎重にならざるを得なくなるだろう。
さらにその他のリスクマネーの動きも不透明だ。世界のプライベート・デット・ファンドのドライパウダー(調達されたものの投資されていない待機資金)は2022年末で約4000億ドルとも試算される。まだ、大きな金額ではあるものの、昨年からは2割減少している。
このうち約半分が2020年以前に調達されたものであるため、投資期限が迫っているものも多いと見られる。運用会社は、契約期限内に投資しようと試みるとみられることから、銀行の消極姿勢はこれらのマネーで一定程度補われるだろう。しかし、ファンドの貸出金利は銀行よりは総じて高いし、逃げ足も速い。
仮に、こうしたファンドに救ってもらったとしても、金利上昇に苦しむ企業にとっては、寿命を縮めかねない「両刃の剣」だ。
投資マネーはまだ様々なところにあふれている。しかし、昨年までと比べれば、だいぶ選別的になってきた印象だ。こうした流れは、まだ始まったばかりかもしれない。
(編集:田巻一彦)
(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*大槻奈那氏は、ピクテ・ジャパンのシニア・フェロー。東京大学卒業、ロンドン・ビジネス・スクールでMBA、一橋大学ICSで博士(経営学)。スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチ、マネックス証券などでアナリスト業務に従事。2022年9月より現職。名古屋商科大学大学院教授を兼務。
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