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概要:銀行が破綻し始めた時、債券市場の反応は非常にはっきりしていた。米2年国債利回りは3月の3営業日で1ポイント低下と1982年以来の大きな下げとなった。
米国株とクレジット市場は米リセッションを確信せず
米国債の動き、経済とは無関係でリセッション警告は誤報か
銀行が破綻し始めた時、債券市場の反応は非常にはっきりしていた。米2年国債利回りは3月の3営業日で1ポイント低下と1982年以来の大きな下げとなった。
こうしたシグナルを絶対視することに慣れたトレーダーにとって、メッセージは明白だった。インフレが主要な脅威であった日々は終わった。債券利回りは、金融システムへのストレスがリセッション(景気後退)を不可避にしたことを示した。
だが、本当ににそうなのだろうか。3週間が過ぎても、債券市場のボラティリティーをどう解釈すべきかを巡る疑問は解決していない。こうした激しいボラティリティーは、株式とクレジット市場にはほとんど見られない。
ウォール街は市場間で異なる反動の解明に躍起になっている。将来のインフレ動向と米連邦準備制度の政策を予測するためのモデルで米国債が大きな要素であることから、この疑問の解消は急務だ。
一つの可能性は、米国債の動きが経済とは無関係なのではないかというものだ。具体的には、投機筋のショートポジション解消が利回りを急低下させリセッションについて誤認警報を発したのではないだろうか。
アンリミテッド・ファンズの最高投資責任者(CIO)でブリッジウォーター・アソシエーツで13年間働いたボブ・エリオット氏は、「銀行危機がないままに1日が過ぎるごとに、現在のプライシングが不合理だという証拠が積み上がっていく。しかし市場が元に戻るには時間がかかる」と話す。
ボラティリティーの格差
いつものことだが、議論は結論に至るにはほど遠く、利回り動向が通常通り、未来への警鐘である可能性も十分にある。現在は平穏のオアシスのような株式市場も、暗雲が完全に晴れたとは全く言えない。
昨年大きく下落した大型テクノロジー株が今年の上昇銘柄上位を占めていることはいずれも、経済に悪いことが起こる先触れと見なされ得る。社債市場も同様だ。
それにしても3月のイベントに対する市場間の反応の乖離(かいり)は歴史的と言っていい。
全体像への理解が浅く取りあえず反応する投機的投資家の多い株式市場は、シリコンバレー銀行(SVB)破綻とその波及懸念を比較的簡単に消化してしまった。社債市場でも、高格付け債もジャンク(投機的格付け)債もスプレッドが昨年秋の水準より拡大することはなかった。
一方、米2年国債利回りの日々の変動幅は先月、40年ぶりの大きさとなった。1カ月物のオプションに基づき米国債市場の予想変動率を示すICE・BofA・MOVE指数3月半ばに2008年以来の高水準に達し、株式と債券のボラティリティーの格差も15年ぶりの大きさとなった。
事態が若干落ち着いた後も、MOVE指数は過去10年平均の2倍余りにとどまっている。
通常ならば、これほど大きなリプライシングは市場が送る最も強いリセッションシグナルだ。しかし今は、その解釈はそれほど自明ではないと、ビスポーク・インベストメント・グループのグローバルマクロストラテジスト、ジョージ・ピアクス氏が指摘する。
米国債市場の「現在の価格設定はかならずしも、『こう考えるべきだ』という先見性のあるシグナルではない」と言う同氏は、クレジット市場への広範な広がりや少数地銀以外の銀行セクターでの預金流出問題は見られないと説明した。
債券vs株式
別の言い方をすれば、「債券市場はおかしくなってしまった」と調査会社マクロ・ハイブのシニア市場ストラテジスト、ドミニク・ドゥオフルコー氏は言う。ニューヨーク連銀の市場部門に勤務した経歴のある同氏は「今回は私は株式市場を信じる。リセッションが来るとは思わない」と話した。
過去1カ月の出来事について株式市場の方がよく理解していたかもしれないと指摘すれば、知識のある投資家が多いと昔から見なされている債券市場の参加者は気分を害するだろう。しかしポジショニングのデータはこの見方を支える。
株式ヘッジファンドはSVB破綻までの9週間に銀行株から資金を引き揚げており、昨年打撃を受けた資産運用会社のロングポジションは10年ぶりの低水準近くになっていた。
一方、24兆ドル(約3185兆円)規模の米国債市場で3月上旬に見られたポジショニングは、債券トレーダーを脆弱(ぜいじゃく)な状態に置いていた。
シティグループのモデルと米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、米2年国債のショートポジションは突然のSVB破綻前に過去最高の水準となっていた。SVB破綻で市場の米金融政策見通しが劇的にシフトしたことでヘッジファンドと投機筋は大きな痛手を被った。
もちろん、米国の3銀行破綻とクレディ・スイス・グループの救済から1カ月足らずの今、イエレン米財務長官がシステムに安定化の兆候があると述べたからといって楽観するのは時期尚早だ。
元メリルリンチのディレクターで1994年にMOVE指数を設計したハーレー・バスマン氏によれば、米国株のボラティリティー指標であるCBOEボラティリティー指数(VIX)とMOVEが異なるシグナルを送ることは時々あるが、過去の例では長続きすることはない。
シンプリファイ・アセット・マネジメントのマネジングパートナーを務めるバスマン氏は「VIXが上昇するのは時間の問題だ」とし、「過去30年を通じて、イールドカーブの形状とクレジットスプレッド、インプライドボラティリティー(IV、予想変動率)には大きな相関があった。VIXもMOVEも含めた全てのボラティリティー指標でそうだった。あらゆるリスク指標は長期的には強い相関を持つ」と同氏は説明した。
出口への殺到
債券市場のショートカバーは張り詰めた取引環境のために痛みが大きくなった。数カ月にわたり低下してきた債券市場の流動性は混乱の中でほぼ消失。ボラティリティー急上昇のため、金利市場の重要な一角はめったにない取引停止に追い込まれ価格変動がさらに増幅された。
ロングテール・アルファ創業者で元パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のポートフォリオ管理アナリティクス責任者、ビニアー・バーンサリ氏は「市場の流動性は極度に低い。2008-09年の債券市場の状態を思い出させる。ある意味で似通っている。まずいポジションに閉じ込められるわけにはいかないということだ」と述べた。
「今の米国債市場は『行きはよいよい帰りは怖い』だ。入ることはできるが出られない。高度の用心が必要だ」と話した。
この出口への殺到が、ボラティリティーが後退した後もチャートに大きな痕跡を残している。ここ数日は正常な値動きに似たものが戻ってきたが、米2年国債利回りは3月に入った時点より1ポイント余り低い。債券トレーダーは米連邦準備制度の利下げについての最も劇的な予想は後退させたものの、利回りはSVB破綻後に達した水準付近で推移している。
しかし米国債弱気派が一挙に一掃されてしまった今、再びショートする勇気がある運用者はいるだろうか。実際、投資家はロングポジションに群がっている。シティのデータによると、投機筋はフロントエンドのショートポジションの大半をカバーしたほか、イールドカーブの一部ではポジションは強気の領域に入っている。
イエレン米財務長官
アンリミテッドのエリオット氏は、米国債市場と株式およびクレジット市場の大きな乖離が埋まるには数カ月かかると予想し、マクロファンドは「傷をなめて」いる状態だと指摘した。それでも、銀行業界の健全性を巡る懸念が薄れ続ければ、市場に戻る誘惑は大きくなっていくだろう。
「より高い金利がより長期化するとみるポジションを組んでいたマクロファンドは価格水準にかかわらず、再びレバレッジを高め始める可能性は低い。やけどをしたばかりだからだ」と同氏は想定。「以前に米2年債をショートしていた投資家が再びそのようなポジションを取るには十分に自信を持てるような一連のデータが必要になる」と話した。
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