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概要:ロシアによるウクライナ侵攻が始まって数週間後、西欧主要国の経済は低迷し始めた。だが東欧に目をやれば、いくつかの国では、2桁台の賃金上昇率と政府からの潤沢な補助金により、依然として好景気が続いていた。
[エステルゴム(ハンガリー) 5日 ロイター] - ロシアによるウクライナ侵攻が始まって数週間後、西欧主要国の経済は低迷し始めた。だが東欧に目をやれば、いくつかの国では、2桁台の賃金上昇率と政府からの潤沢な補助金により、依然として好景気が続いていた。
ロシアによるウクライナ侵攻が始まって数週間後、西欧主要国の経済は低迷し始めた。だが東欧に目をやれば、いくつかの国では、2桁台の賃金上昇率と政府からの潤沢な補助金により、依然として好景気が続いていた。しかし、それも過去の話だ。写真はブダペストの商業施設で4月撮影(2022年 ロイター/Bernadett Szabo)
しかし、それも過去の話だ。
小売売上高の急減速と信頼感指数の急落に見るように、生活コスト急騰の危機は欧州の東側にも及んでいる。食品価格の上昇が15─22%となり、エネルギーコストも増大し、解消困難な2桁のインフレにより実質所得が削られ、人々は今や厳しい現実に直面している。
家計消費が打撃を受ける中、アナリストらは国内総生産(GDP)予測を下方修生しており、欧州全体が景気後退(リセッション)に陥るリスクが忍び寄っている。
家計は財布のひもを締めつつある。ポーランドでは休暇取得日数が減り、チェコでは外食支出が切り詰められ、副業を探す人も現れている。ハンガリーでは食品のインフレ率に限っても6月は前年比22.1%を記録。通貨フォリントの下落により輸入品の価格が上昇する中、人々は食料品や耐久消費財の購入を減らしている。
ハンガリー北部、ドナウ川に面した都市エステルゴムの市場で買い物をしていた73歳の男性ラジョスさんは、「ある日パン屋に行ったら1斤550フリント(約190円)だった。翌日には650フリントに上がっていた。何ということだ」と嘆く。
自分の自転車の脇に立つグレーのあごひげを蓄えたラジョスさんは、姓を伏せることを求めつつ、食品価格の急騰に対応するため毎月支給される年金の一部を取り崩しており、光熱費も払えなくなるだろうと話す。ハンガリー政府が先月、消費量の多い家計を対象とする価格上限設定を廃止してしまったため、光熱費の負担は増大する見込みだ。
ラジョスさんは自分なりの対応策を練っているところだ。
「ガスでもまきでも暖房はできる。うちにはまきストーブがあるからね。妻と同じ部屋にこもってストーブをたいて、暖かいセーターを着て、テレビでも観ていることにする」
ハンガリー全土では、6月の小売売上高の伸び率が前年比4.5%と、5月の10.9%から鈍化。家具・家電製品の売上高は4.3%低下した。ビクトル・オルバン首相率いる政権が4月の選挙に向けて導入した大幅な減税措置と財政移転の効果が薄れてきたことを示唆している。
ポーランドでも、小売売上高の伸びは5月の前年比8.2%から6月には同3.2%に減速した。また5日に発表されたデータによれば、チェコでは車・オートバイを除外した調整後の小売売上高が、5月に前年比6.6%減少したのに続き、6月も6.0%の減少となった。
INGブダペスト支店のアナリスト、ピーター・ビロバクツ氏は「家計は生活コストの上昇に確かな反応を見せている。モノの消費の減速が始まっている」と指摘した。
ハンガリー国立銀行(中央銀行)が5日に発表した調査によれば、市中銀行では、下半期には融資需要が減少し、与信条件も厳しくなると予測しているという。
<支出引き締め>
国内需要の低迷、金利上昇、政府支出の削減、企業のコスト上昇といった要因は、中欧諸国における今年下半期の経済成長に打撃を与えようとしており、2023年には急激な減速が見込まれる。
シティグループでは、ハンガリー経済の2022年の成長率を5%に迫ると見ているが、来年に関しては1%と予測しており、しかも下振れリスクがあるとしている。
「2023年に入ってもエネルギー価格が高止まりして2桁領域のインフレが続くリスクがあり、ユーロ圏に関する社内予測でも下振れリスクが指摘されている」とシティグループは説明した。
ハンガリー中銀は2023年の経済成長率について2.0─3.0%との予測を崩していないが、9月には新たな見通しを発表する予定だ。
ポーランド政府は、同国の経済成長率を今年は3.8%、2023年は3.2%と予測している。
チェコ国立銀行(中央銀行)は4日、他国に先駆けて利上げのサイクルを停止することを発表したが、年明けにはリセッションに入ると予想している。2022年第4・四半期には0.4%、2023年第1四半期には1%のマイナス成長になると見ている。
チェコ中銀のアレシュ・ミフル総裁は、「基本シナリオには緩やかなリセッション、テクニカルリセッションが織り込まれている。このシナリオでは、2四半期連続でマイナスになる。これは健全なリセッションとなり、インフレの抑制も可能になる」と述べた。
夏の間は引き続き観光セクターの好調が期待されているが、旅行サイト「Noclegi.pl」によれば、ポーランドではすでに旅行費用を節約する動きが生じているという。
同サイトの専門家、ナタリア・ヤウォルスカ氏は「今シーズンの特徴は、旅行期間が平均して1日短縮されていること、予約がギリギリのタイミングまで先送りされていることだ」と語る。
チェコでは外食支出も低下していることが、「Sodexo」などさまざまなレストラン決済サービスのデータから分かっている。世論調査会社STEMが6月に行った最新の調査では、チェコの世帯の80%が、エネルギー価格の急騰を理由に、購入を削減・制限していることが明らかになった。
チェコ統計当局の月次調査によれば、同国の消費者信頼感指数は7月に過去最悪を更新した。またシンクタンクのGKIが行った調査では、ハンガリーの7月の消費者信頼感指数は、新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)の第1波に襲われた2020年4月以来で最低の水準となった。
チェコの映画プロデューサー、マーティン・フロベック氏(43)は、今のところ収入に関しては心配していないが、将来については楽観的になれないと話す。
フロベック氏は「私にとって、ただちに何とかしなければならない困難な状況はまだ訪れていない。いずれそのときが来るだろうが」
「もっと光熱費やガソリン代を節約できないか考えることになる。子ども用品や衣類、スポーツ用品を新品で買うことは絶対にないだろう。半額で中古品が見つかるのだから」
フロベック氏もやはり、冬が来ても暖房の利用を減らす予定だ。
(Krisztina Than記者、翻訳:エァクレーレン)
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