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概要:Edward Hadas [ロンドン 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 高額の報酬を受け取り、世界各地を出張で飛び回り、何度失敗しても罰を受けることはめったにない──。そんな恵まれた生活を享受してきた株式アナリストたちが、いま様変わりの厳しさに直面している。 投資銀行で「バイ・アンド・セル」業務を担当する専門家(ただし概ね「バイ」サイドだが)の高額報酬を生む主な源泉となっていた株式トレーディングの収益は大きく減少した。ベンチマークに連動するパッシ
Edward Hadas
[ロンドン 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 高額の報酬を受け取り、世界各地を出張で飛び回り、何度失敗しても罰を受けることはめったにない──。そんな恵まれた生活を享受してきた株式アナリストたちが、いま様変わりの厳しさに直面している。
投資銀行で「バイ・アンド・セル」業務を担当する専門家(ただし概ね「バイ」サイドだが)の高額報酬を生む主な源泉となっていた株式トレーディングの収益は大きく減少した。ベンチマークに連動するパッシブ資金運用が拡大しているためだ。
規制強化の打撃も大きい。欧州連合が厳格な金融商品市場指令を発動し、上場企業に関する長大な、しかしほとんど深みのないアナリスト・レポートにクライアントからの資金を期待することは難しくなった。ウンザリするほど詳細だが、将来の展開も過去とほとんど変わらない展開になると予測するだけの複雑なスプレッドシートを投資家に山ほど提供する口実はもはや存在しない。
投資家と直接会ってミーティングを持つ意味も低下している。最も貴重な情報を、目配せやちょっとした素振りでクライアントに伝えようという手法が社内のコンプライアンス部門に制止されるからだ。
企業がますます株式非公開に動く中、伝統的な株式アナリストにとっては、調査対象が減っているという現実もある。株式価値をすばやく計算できるという彼らの大切なスキルを活かして、さらにうまみのある社内ポストに転じる機会もすっかり少なくなってしまった。
さらに悪いことに、世界も以前とは違う動き方をしている。端緒となったのは、ほぼすべての人の不意を突いた2008年の金融危機だ。他の金融市場参加者と同じく、企業分析の専門家でさえも、押し寄せる雪崩に直面しながら道路標識を確認しているような混乱に見舞われた。
とりわけ時代遅れになってしまったのは、銀行のアナリストたちだろう。市場予測には政治だけが意味を持つようになり、企業や産業に関する彼らの詳細な知識はほぼ無意味になった。いかなる金融モデルをもってしても、政府がどのタイミングで銀行を救済するのか、その救済策がどのようなものになるのかを予想することはできない。
こうした打撃は一時的なものではない。個々の銘柄の値動きは、新製品や市場シェアの変化、あるいは利益率の上下などの情報で変動するよりも、アナリストが判断できる範囲を超えた大きな動きに翻弄される可能性が高くなっている。
金融政策を例に取ろう。企業・家計におけるレバレッジ比率(負債比率)が上昇した結果、企業利益にとって、金利動向を決める中央銀行の政策が自社の価格支配力とほとんど同じくらい重要な要因になった。だが株式アナリストは一般に、金融規制については言うに及ばず、将来の金利政策についても特別な知見を持っているわけではない。
またレバレッジ比率が上昇していることで、企業はアナリストにはなかなか予想しづらい些細な変化に過敏になっている。ビール製造大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブは、ビール需要がごくわずか低下すると予測されただけで、バランスシート上の負債を減らそうと努力しているほどなのだ。
ドナルド・トランプ大統領にも困ったものだ。トランプ氏はいともあっさりと株価の予測不可能性をかなり高めてしまった。大統領が次にどのような混乱をもたらそうとするか、彼の攻撃的なツイートが実際に政策変更につながるかどうかは誰にもわからず、株式アナリストとしてはお手上げの状態だ。
さらに中国も、トランプ氏が仕掛ける貿易戦争や為替操作国という非難がなかったとしても、やはり、アナリストらにとっては「私の責任じゃない」と言いたくなる大きな変動要因になりつつある。
世界第2位の経済大国である中国が重要なのは、単に国際貿易を大きく広げ、グローバルな経済的影響力を強めようという野心を抱いているからだけではない。中国は巨額の債務を抱えており、労働年齢人口は縮小し、独裁政権により経済が圧迫される可能性もある。アナリストが中国への希望的観測を語ることはできても、その動きについて現実的な予測を行うのは無理だ。
地球の反対側には、ブレグジットという問題がある。英国経済に対するエクスポージャーを抱える企業を分析する上で、英国の欧州連合離脱は予断を許さない大きな未知数だ。現時点で想定されている離脱期限まで3ヶ月を切った。しかしなお、悲惨な結果になりかねない「合意なき離脱」から、信頼感の上昇につながる離脱プランの全面撤回まで、さまざまなシナリオが残っている。多くの人々と同じく、株式アナリストにもまったく先が読めない状況なのだ。
大きな要因が市場を動かす時代は、しばらくは終りそうにない。気候変動やラディカルな経済政策を掲げる独裁政権、新たな金融危機などによる潜在的な影響を考えてみるがいい。
とはいえ、株式アナリストという職業が消滅することはないだろう。想像力豊かな株式アナリストは、新たな不確実性に反応し、そこから利益をどう上げるか、という助言をアクティブ投資家に提供する方法をすでに見つけつつある。
自分のスキルを別の方面で活かしたいと考える株式アナリストもいるかもしれない。
企業の仕組みについて詳細を把握し、どのような種類の特権が最も豊かな見返りをもたらすかを理解している人々にとって、特にふさわしい職業が1つある。そう、株式アナリストは、企業のロビイストとして適任なのだ。
もちろん、ある程度の再訓練は必要だろう。特に、独りよがりな企業戦略を耳ざわりよく説明する技法は必要だ。しかし、コーポレートバンキング部門の怪しげな顧客のために、ベタ誉めの「買い」評価を書いたことのあるアナリストだったら、真実を(あるいはそれに類する何かを)、自分の雇い主の有利になるようにねじ曲げた経験は持っている。
ロビイストにはスプレッドシートはあまり必要とされないし、営業活動のために出張であちこち出かけられるわけでもない。とはいえ、報酬は引き続き高い。外部の大きな要因に振り回されることも減る。
市場サプライズの予測に苦労してきた株式アナリストが立場を変え、今度は影の権力者であるパワーブローカーとして、そうしたサプライズを自ら作り出すことが可能になるかもしれない。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストで、1989-2004年は投資銀株式アナリスト。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
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