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概要:2018年7月に政治SNSアプリ「PoliPoli(ポリポリ)」をリリースした現役慶大生らのスタートアップが、6000万円の資金調達に成功した。次はどんな展開が待っているのか。
2018年9月、自民党総裁選で3選を果たした安倍晋三首相だが、党内他勢力の伸張、沖縄県知事選での惨敗などの先行き不安から、野党不利を狙った衆参ダブル選挙もあり得るとの見方が出てきている。
REUTERS/Toru Hanai
4月に統一地方選挙、平成からの改元をはさんで、7月に参院選。10月に予定される消費税増税の先行き次第では、衆参ダブル選挙の可能性もあると言われる2019年。名実ともに「時代の変わる節目」になりそうだ。いや、なりそうだ、というのはいくら何でも能天気過ぎるかもしれない。
参考記事:消費増税を再延期・衆参ダブル選挙で勝ち、改憲へ —— 急浮上する「安倍首相のベストシナリオ」
2018年末には、景気拡大の長さが「戦後最長に並んだ可能性が高い」(茂木敏充経済再生担当相)と報じられたが、社会保障費の増大や人口減少による人手不足は深刻で、少子高齢化による税収減や自治体機能の低下に多くの地方が苦しんでいる。
いつ破裂するかわからない爆弾を抱えながら、根本的な対策に乗り出せない現状のもとで、改元や選挙があるから時代が変わるなどという見方には、何の説得力もない。
ユーザーターゲットを絞り込み、地方重視の展開を
リニューアル後のPoliPoliアプリ実画面。左は「新着」タブ。具体的な課題を議論する投稿が目に見えて増えた。右は「政治家」タブ。地方議員も含めて政治家のアプリユーザーは120人を超えた。
提供:PoliPoli
景気拡大が喧伝される一方、本質的な問題の解決については先送りが続くなか、2018年7月に政治SNSアプリ「PoliPoli(ポリポリ)」をリリースした現役慶大生らのスタートアップ(アプリと同名)は、「政治家と市民のコミュニティを形成し、誰もが困った時に政治・行政にアクセスできる」社会の実現を目指し、いくつかの新たな試みに乗り出した。
2018年11月には、西日本新聞とタッグを組んで市民による議論を配信するなど、福岡市長選挙を盛り上げた。また、同月から神奈川県と連携し、PoliPoliアプリの「トークルーム」を通じて行政への意見や提案を集める取り組みを始めた。
そうした試みを通じて得た経験から、PoliPoliは2019年、二つの大きな進路修正を行うことを決め、その実現と加速のために6000万円の資金調達を行った。
進路修正の一つは、ユーザーのターゲットを絞り込むことだ。
サービス開始当初は、人件費も含めて6兆円と言われる政治市場にテクノロジーを導入し、国家システムを再構築することを掲げた。この理想にブレはないものの、実現に近づくためには、当面「明確なイシューを抱えた人たちの課題を解決する」ことに特化したほうが、より建設的な議論を呼び込み、結果的にコミュニティの拡大を加速できると判断した。
そのため、公的書類などによる本人認証こそしないものの、実名でのユーザー登録を推奨するシステムに変更し、議論の質や精度を高めることにした。同時に、具体的で身近な課題がテーマになりやすく、それゆえに政治家や行政からのフィードバックにもつなげやすい、地方でのユーザーコミュニティ拡大に重心を移す。
リスクをとる政治家の「巻き込み」に注力
プロジェクト機能の追加で、一定数の共感を得ると政治家を招待して議論を深められるように。また、投稿への共感やいいね!の数に応じて算出されるスコアリング機能の付加も注目。
提供:PoliPoli
もう一つの進路修正は、政治家の巻き込みに人的資本や労力を傾けることだ。PoliPoliの伊藤和真代表はこう話す。
「行政との連携の取り組みを通じて、行政や市民のユーザーエクスペリエンス(アプリを通じた政治参加の体験)を向上させる余地があることはよくわかった。けれども、そこに政治家に入ってきてもらわないと、リスクをとる人がいないので、具体的な問題の解決につながる動きにまで発展しづらい」
問題解決の実例を積み上げるため、1月16日に発表したリニューアル版アプリには「プロジェクト」機能を盛り込んだ。具体的な課題・問題を投稿するためのスレッドの一種で、一定数の「共感する」ボタンが押されたプロジェクトは、アプリにユーザー登録している政治家を招待できる。政治家を巻き込んで議論を深めることで、議会などへの問題提起につながる可能性も高まる。
3月には地方統一選に関連した特設ウェブサイトを開設する。地域ごとの課題について情報提供を行い、アプリとの連携で議論の活性化を図るなど、現実の課題解決にこだわった展開を予定している。並行して、国会・地方議会を問わず、政治家のアプリ参加を促す活動も強化する。
「ワンクリック献金」機能の実装を目指す
サービス当初は、人件費を含む6兆円の政治市場を壮大な「ブルーオーシャン」と表現していたが、今回の進路修正では個人献金や広告費など、スケールアップの足がかりになる分野にターゲットを絞った。
提供:PoliPoli
PoliPoliが今回の資金調達をバネに実現を加速したいと考えているのは、クレジットカード経由でのワンクリック(個人)献金機能の実装だ。
政党など全国の政治団体の収入は2286億円(2015年)で、その1割弱にあたる200億円超を個人献金が占める。これを仲介する機能をPoliPoliアプリで担うことができれば、政治家の参加を促すインセンティブになる。具体的な課題解決の実例を増やすことにもつながる。
また、プロジェクト機能を通じて課題や問題の存在を明らかにし、その解決方法についてコミュニティ内での議論が深まることで、直接的に政策をつくるケースも生まれてくる。政治家にとって有権者にアプローチする場ともなる。こうした機能の対価として政治家に課金し、マネタイズにつなげる道筋も見えてきた。
「ローンチ当初掲げたように、トークンを発行して通貨発行益を得つつ、コミュニティが自律的に拡大していく展開が理想。実際、政治の側からも協業の要望をもらっています。ただ、日本でのトークンを含む暗号資産の市場拡大は、これから法規制やセキュリティの向上などに合わせて着実に進んでいく流れ。情報収集を進めながらも、足もとではコミュニティの強化に注力したい」(伊藤さん)
「6000万円」という資金調達額
昨今は「カネ余り」などと言われ、実績の薄いスタートアップが数億円単位の資金調達を実現するケースも増えている。その状況を考えれば、6000万円という今回の調達額は、スタートアップが事業展開を加速する上でいまや大きな額とは言えないかもしれない。
しかし、社会が抱える現実の課題を解決し、楽しみながら政治に参加する人を増やしたいという、PoliPoli。ハードルの高い取り組みを後押しするために、これだけの資金が集まるのはむしろ近未来への希望と言えるのではないだろうか。
調達額の多寡について感想を聞くと、伊藤代表はまったく興味なさそうな表情を見せた。2018年5月、初めてPoliPoliを取材した時に語ったスタンスは、いまも一切、ブレていないようだ。
「自分たちのサービスで社会を変えていくことが、何より大事なことだと思ってるので」
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(文・川村力)
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