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概要:米金融当局が進めているバランスシート圧縮について、そのペースを段階的に落とすテーパリングの開始時期はウォール街の一部の予想よりもずれ込み、一段と長めのプロセスとなる様相を呈しつつあるとの見方を米金融調査会社ライトソンICAPが示した。
QTテーパリング開始は6月となる公算が大きいとみる
当局バランスシートよりも速いペースで翌日物RRP利用が減少
この件について発言した数人の当局者は、QTを当座の問題とは考えていない。金融当局の翌日物リバースレポ(RRP)ファシリティーの利用はバランスシートの規模よりも速いペースで減少し、より多くの流動性が銀行システムに回帰して銀行の準備預金が引き続き潤沢であることを示唆しており、政策転換の緊急性は低い。
連邦準備制度理事会(FRB)の最新データによれば、金融当局のバランスシートはQT開始以降、約1兆2400億ドル減って7兆6800億ドルとなったのに対し、翌日物RRPの利用は同期間に約1兆3800億ドル落ち込んだ。
ライトソンのチーフエコノミスト、ルー・クランドール氏は29日の調査リポートで、「金融当局が7月の入札サイクルまでに米国債のランオフを月間600億ドルから300億ドルに減らす可能性を排除することになるとは現時点では考えていない」としつつも、「QTテーパリングのスケジュールを巡るリスクは、早めの開始時期よりも遅めの開始時期に傾いていることがうかがわれる」と指摘した。
市場参加者の間では、金融当局が30、31両日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)会合後に、バランスシートに関する計画がさらに示されるとの予想が浮上している。
昨年12月のFOMC会合では、一部の当局者がランオフのペース減速の時期を決めるテクニカルな要因について議論を始めるのが適切だとの考えを示した。ダラス連銀のローガン総裁は今月初め、金融市場で流動性低下の兆候が見られれば、バランスシート圧縮のペースを落とす必要があるかもしれないと述べ、当局の計画ついての臆測が広がった。
他の当局者の発言もあって、ウォール街のストラテジストの見解は分かれている。バンク・オブ・アメリカ(BofA)とバークレイズは3月19、20両日のFOMC会合の際にQTテーパリングの発表があり、7月までに終了すると予想。これに対し、ライトソンやドイツ銀行などは、テーパリングの開始時期として6月となる公算が大きいとみている。
現在5810億ドルに利用が減っている翌日物RRPの動向はQT終了の観点からは「炭鉱のカナリア」と見なされている。そこでの応札・落札額は金融システムに残る超過の流動性と考えられるためだ。
銀行の準備預金残高は3兆4900億ドルと、22年6月のバランスシート圧縮開始時の水準を引き続き上回っている。それでも、多くの金融機関は十分な流動性の確保のため準備預金のバッファーを保有したい意向であると見受けられ、現行の残高は当局者が考えるほど潤沢ではない可能性が、市場における最近の不安や当局の最新調査から浮き彫りとなる。
クランドール氏は金融当局について、QTテーパリングに関する内部の議論はまだ初期的なもので決定を下すのは先のことだと示唆する公算が大きいとしても、今から検討を始めるのが賢明だとみている。
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