英経済の暗い見通し、市場で強まる緩和観測－来年３回の利下げ視野

イングランド銀行（英中央銀行）のベイリー総裁は「利下げについて考えるのはあまりにも時期尚早」だと述べたが、金融市場はそうは考えていない。

英中銀は２日、過去30年で最も急速に進めてきた利上げサイクルを前回会合に続いて休止させた。この発表後、短期金融市場は来年末までに英中銀が0.25ポイントの利下げを３回行い、政策金利を4.5％まで低下させることを織り込みつつある。

この投資家の動きは、ベイリー総裁が最近７回のインタビューや今回の政策発表後の記者会見で語ったメッセージとは大きく食い違う。

英中銀、政策金利を15年ぶり高水準で据え置き－利下げ議論は否定

ベイリー総裁は、なお目標の３倍超に上るインフレを抑制するため高水準の金利を長期にわたって維持することを市場に準備させたい考えだ。チーフエコノミストのヒュー・ピル氏は英中銀の金利見通しを、頂上が平らなことで有名な南アフリカ共和国ケープタウン郊外の「テーブルマウンテン」に例えた。

それでも投資家は、15年ぶりの高金利に英国経済が耐えられなくなるとみて、来年下期に急激な利下げがあるとの見方を強めている。賃金は過去最高に近いペースで上昇しているものの、失業率も上がり、住宅市場の活動は停滞している。複数の調査はリセッション（景気後退）が既に進行中であることを示す。

ジャナス・ヘンダーソンのポートフォリオマネジャー、オリバー・ブラックボーン氏は、英中銀の利上げ回避は「経済見通しについて不安が膨らんでいることを示唆する」と指摘した。

中銀の政策発表日程にリンクしたスワップ金利の動向によると、２日の政策発表後に市場は来年８月から年末までの２回利下げを完全に織り込み、３回目の利下げも視野に入れている。２週間前には１回の利下げをかろうじて織り込む程度だった。

英中銀の新たな経済見通しも、１回の利下げを仮定している。先週策定された最新の経済予測は、来年末までに１回の利下げで金利が５％になるという、当時の市場の想定を組み込んでいる。