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概要:長期金利が上昇するとの見通しが固まる中、短期的に利回りを押し下げる要因はあまり見られません。
歴史を振り返ってみると、米国債の利回りは過去数十年と比べてそれほど高くない。
Michael M. Santiago / Getty
10年物国債の利回りは5%近くで推移しており、過去16年間で最も高い水準となっている。
バークレイズのストラテジストは、FRBの政策による金融引き締めはそれほど効いておらず、金利はすぐには下がらないだろうと述べている。
ここでは、米国債利回りの上昇について歴史が語っていることと、米国債が次に向かうであろう方向について説明する。
金利上昇が長期化するという見通しに市場が適応してきたことから、投資家は米国債を投げ売りするようになった。
2023年10月初旬に始まった米国債売却は、史上最悪レベルの暴落となっており、10月20日には10年物の利回りが2007年以来初めて5%に達した。
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市場がパニックに陥っているにもかかわらず、過去数十年のトレンドから見ると、利回りは中期的な経済見通しとほぼ一致している。
市場データ・情報企業Qontigoの応用リサーチ担当シニア・プリンシパルを務めるクリストフ・ショーン(Christoph Schon)がInsiderに語ったところによると、10年物の4.7%~5.1%という利回りは、現在の約2.45%という長期期待インフレ率からすると適切な水準にある。
1980年代から1990年代にかけて、米国債10年物の利回りは、10年ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)に代表される期待インフレ率のおよそ2倍だったとショーンは説明する。当時、投資家は期待インフレ率に見合った実質リターンが期待できた。
しかし、ドットコム・バブルと2008年の金融危機でこの状況は一変し、株式市場が長期にわたってボラティリティに見舞われる間、米国債は投資家が現金を保管する手段となった。
「株式と米国債の価格は、リスク選好度によって互いに補完し合いながら、逆方向に動き始めた」とショーンは言う。
さらに、最近のパンデミックとロシアのウクライナ侵攻による消費者物価の高騰は、株式と米国債が再び相関関係にあることを意味しているという。金利が急上昇する中で両資産が連動して売られているのだ。
「現在の環境は2000年代以前に似ているということを我々は主張している。当時の米国債は、混乱時の安全な避難先というだけでなく、株式に対する魅力的な代替手段だった。歴史的に見れば、投資家が求める利回りは期待インフレ率の1.9倍から2.1倍の間だろう。したがって、現在の10年ブレーク・イーブン・インフレ率2.45%は、4.7%から5.1%の名目利回りを意味する」
利回りがどう動くのかについては、歴史がその答えを示している。インフレ予想が大幅に上方修正されない限り、10年物の利回りが5.5%を超える確率は1%未満だという。
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル(Jerome Powell)議長は10月19日の講演で、米国債市場の乱高下は成り行きに任せると述べた。また、利回りの上昇が金融環境の引き締めに役立っていると主張した。現在、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のFedWatchツールによると、11月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが見送られる確率は98%、12月に0.25%引き上げられる確率は24%となっている。
利回りが上昇する可能性はまだあると警告するストラテジストもいる。MRBパートナーズ(MRB Partners)のグローバル・ストラテジスト、フィリップ・コルマー(Phillip Colmar)は、2024年に利回りが5.5%を突破する可能性があると予想し、EPウェルス・アドバイザーズ(EP Wealth Advisors)のポートフォリオ戦略担当マネジング・ディレクター、アダム・フィリップス(Adam Phillips)は、11月に政府閉鎖の可能性があることも利回りを押し上げる要因になりうると述べている。
バークレイズ(Barclays)のストラテジストは、10月18日に公開したノートで、10年物の利回りがFRBによる現在の利上げサイクルで予想される到達金利(ターミナルレート)を下回っていることを指摘した。これは通常の引き締めサイクルの終わり方とは異なっている。
「(米国債)上昇のハードルはまだ高い。景気回復を示すデータが続いているにもかかわらず、大方の予想ではいくつかの四半期にわたって景気が急減速するとしている。予想は何度も外れていることから、金融引き締めがかなり進んでいると過信されているのではないかという疑問が湧いてくる。我々としては引き締めはほとんどできておらず、リスクは引き続き上振れする方向に向かっていると考えている」
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