富裕層が長蛇の入会待ち、分割所有型プライベートジェットの人気沸騰

ネットジェッツは航空機大量発注、フレックスジェットも購入か

定期便の旅客機に乗りたくない富裕層にとって、プライベートジェット機の部分所有は、ジェット機全体を所有するより都合が良い。

そして、フラクショナル・プログラムと呼ばれる分割所有形態のサービスには、チャーター便からのアップグレードを望む顧客と、社用ジェット機からのダウングレードを望む顧客の双方向からの需要がある。

フラクショナル・オーナーシップ制度は1980年代半ばに始まったモデルで、飛行時間と引き換えに飛行機の所有権のわずか16分の1を購入するというものだ。

業界分析会社ウィングＸのマネジングディレクター、リチャード・コー氏によれば、新型コロナウイルスのパンデミック（世界的大流行）時にチャーター便を試した裕福な旅行者は、最短４時間前でもフライト予約できるようにするためアップグレードしている。また、社用ジェット機の動きを追跡する探偵に取引案件が漏れるのを避けるため、名前を伏せたフライトを希望するビジネス旅行者が増えているという。

コー氏は「フラクショナル・プログラムにアップグレードする人もいれば、ダウングレードしてくる人もいる」と述べ、その結果、こうしたプログラムの運営会社がかつてないほどの業績を上げていると分析した。

ケン・リッチ氏

持ち株会社を通じてプライベートジェット機会社を複数所有するケン・リッチ氏は、傘下の企業のうち分割所有プログラムを運営するフレックスジェット社が最も多くの需要を集めていると話す。リッチ氏はフレックスジェットについて、「顧客から向こう１年分の受注残がある。これまでなかった状況だ」と語った。

ウィングＸによると、分割所有プログラムはバークシャー・ハサウェイ傘下のネットジェッツとフレックスジェットが業界大手で、同プログラムのフライト数は今年１－９月期に5.2％増加した一方、チャーター機のフライトは6.4％減少した。過去４年間、分割所有型ジェット機のフライトの伸びは、チャーター便や企業所有機のフライトを上回るペースだ。

プライベートジェット機を使ったフライトはコロナ禍でブームとなった。空港の保安検査をスキップし、エコノミー席に搭乗する一般客から離れた別のターミナルから出発するプライベートフライトは、米国で増え続ける富裕層にとって大きな魅力となった。

その中でもフラクショナル・オーナーシップは、プライベート旅行の提供競争において勝ち組に浮上した。

高まる需要

コロナ禍のさなか、こうした分割所有権型フライトを運航する航空会社に旅行者が殺到したため、カンザス州オーバーランド・パークを拠点とするエアシェアなど多くの運航業者が2021年に新規顧客の受け入れを中止せざるを得なくなった。「横ばいになったとはいえ、コロナ禍前と比べればはるかに高い水準だ」とエアシェアのジョン・オーウェン最高経営責任者（ＣＥＯ）は言う。

ネットジェッツは需要に対応し古い航空機を入れ替えるため、ブラジルの航空機メーカー、エンブラエルの中型プライベート機「Praetor 500」を最大250機購入する契約を５月に結んだのに続き、９月にはテキストロン社のセスナ部門から15年間で1500機を購入するオプションを盛り込んだ契約を発表した。

ネットジェッツによると、分割所有型航空機の多くは25年１月まで売り切れ状態にあり、新しい航空機の分割所有権を購入するのを待ちつつ、すぐに同社の航空機で飛行したい顧客からの預かり金を受け付けている。

フレックスジェットも、航空機を追加購入するために交渉中で、リッチ氏は「近いうちに何かが発表されるだろう」と語った。フレックスジェットから受注する可能性が高い航空機メーカーはカナダのボンバルディアだと、ＪＰモルガン・セキュリティーズのアナリスト、セス・サイフマン氏は予想した。