简体中文
繁體中文
English
Pусский
日本語
ภาษาไทย
Tiếng Việt
Bahasa Indonesia
Español
हिन्दी
Filippiiniläinen
Français
Deutsch
Português
Türkçe
한국어
العربية
概要:ニューヨーク地区連銀のスタッフが今月、景気を熱しも冷ましもしない短期的な中立金利が上昇した可能性が高いとブログの中で指摘した。
[30日 ロイター] - ニューヨーク地区連銀のスタッフが今月、景気を熱しも冷ましもしない短期的な中立金利が上昇した可能性が高いとブログの中で指摘した。
10月以降、日本では輸入物価指数の上昇に伴い、交易条件の悪化や輸入インフレの加速が見込まれる。具体的な時期や水準の予測は容易ではないが、ドル/円が150円に近づくにつれて、為替介入の可能性は高まっていくのではないか。内田稔氏のコラム。写真は都内で2013年4月撮影(2023年 ロイター/Toru Hanai)
これが事実であれば、今の政策金利のままでは、想定したほど景気が十分に減速せず、インフレ圧力の鎮静化にもまだかなりの時間を要することになる。そればかりか、インフレが再燃するリスクも残るだろう。
こうした中で、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」での講演の中で、昨年同様にインフレ抑制に軸足を置いた姿勢を示した。
一方、市場で注目された中立金利を巡っては、その水準が不確実であり、どの程度の引き締めを要するのか不透明感を伴うと、やや曖昧な表現ですり抜けた。
結局、FRBの当局者たちも、現在の政策金利が果たしてインフレに対するブレーキ役として十分に機能しているのかどうか、確信を持てていないようだ。それを象徴しているのが、「データ次第」という表現なのだろう。
市場では、利上げについて残すところ「あってもあと1回(0.25%ポイント)」とみており、もっぱら来年の利下げ時期に関心が向けられている。しかし、大方の市場参加者の予想に反し、これまで米経済が好調ぶりを維持してきた点に照らせば、利下げ時期に目を向けるのは、まだ、時期尚早かもしれない。
<9月FOMCの注目点>
そこで注目すべきなのが、次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示されるドットチャートの中のLonger Runではないか。これは、政策金利の落ち着きどころを示し、長期的にみた中立金利に近いものと解釈されている。
中央値をみると公表が始まった2012年当時の4.25%からすう勢的に低下し、2019年3月以降は一貫して2.5%のままだ。しかし、この中央値や加重平均値が上昇していた場合、政策金利見通しを巡る市場の見方も修正を迫られよう。
為替市場で言えば、金利上昇を受けたドル高が見込まれる。一昔前であれば、ここにリスク回避の円高が加わり、その力加減によってはドル/円が下落することもあり得た。
ただ、貿易赤字や日銀の金融緩和姿勢、実質金利低下といった数々の円安材料に照らせば、ドル高はシンプルにドル/円も押し上げるだろう。
<静観する日本政府とその背景>
そこで気になるのが、日本政府による為替介入の有無だ。既に足元のドル/円は、昨年9月22日に政府と日銀が介入に踏み切った当日の高値、145円90銭を上抜けしている。そこで、昨年秋と現在の状況を比較してみよう。
まず、ドル/円の1カ月物のボラティリティをみると、昨年9月の月中平均が13%台であったのに対し、現在は9%台と低い。じわりと円安が進行しており、投機的な動きとは説明しにくい状況だ。
また、円安は訪日外国人の呼び水にもなっている。昨年9月、20万人台だったその数は、今年7月には232万人を超え、コロナ前の約8割まで回復した。
さらに、輸出物価指数を輸入物価指数(ともに円ベース)で除した交易条件を比べても、低下の一途をたどって0.70に達した昨秋と異なり、今年の7月にかけて0.83まで改善している。
交易条件は、言わば貿易のしやすさを表しているが、輸出物価指数が昨秋と同水準を維持する一方、輸入物価指数が約17%も低下したことが大きい。総合的にみて、昨年ほど円安悪玉論が高まりにくい状況だ。
<輸入物価上昇のおそれ>
もっとも、輸入物価指数はここから上昇に転じる公算が大きい。輸入物価指数は、ドル/円とWTI原油先物相場を掛け合わせた数値に3カ月ほど遅れる動きをたどってきたが、このうち、原油先物相場が7月以降に反転したためだ。
従って、10月以降、日本では輸入物価指数の上昇に伴い、交易条件の悪化や輸入インフレの加速が見込まれる。具体的な時期や水準の予測は容易ではないが、ドル/円が150円に近づくにつれて、為替介入の可能性は高まっていくのではないか。
<介入効果とドルの地合い>
ここで問題となるのが、為替介入が効くのかどうかである。そこで、介入後のドル/円の値動きを振り返っておこう。
昨年9月22日、約2兆8382億円を投じた円買い介入を受け、146円目前に迫っていたドル/円はいったん140円35銭まで下落した。ただ、そこからすぐに持ち直しに転じ、10月に入ると151円台に達した。為替介入が円安抑止効果を発揮したとは言えない。
一方、10月21日ならびに週明け24日の介入では、合わせて約6兆3498億円の円買い介入が実行された。151円台から急落したドル/円は、概ね146円台で底堅く推移したものの、徐々に上値も切り下がった。結局、11月に入ると10月分の米消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことを受け、ドルが全面安となったため、介入効果の持続性は不明だ。
それでも、9月介入に比べれば、円安抑止に一定の効果を発揮したと映る。その点、両者の間では介入規模に違いが見受けられる。ただ、スポット取引だけで一日に約2.1兆ドルもの取扱高を数える外国為替市場(国際決済銀行調べ)では、この違いはあまり意味をなさないのではないか。
それよりも重要なのは、ドルの地合いと考えられる。具体的には、9月時点においては、依然として米国のインフレ高進が見込まれており、政策金利の天井もまだみえていなかった。このため、ドル高トレンドがまだ鮮明であり、こうした状況下での日本政府による介入の効果は乏しかったと評価できる。
一方、10月に入るとドル高トレンドに陰りが生じていた。米国の実質金利(=長期金利-10年物ブレークイーブン・インフレ率)の上昇が頭打ちとなった上、一部の米紙報道を受け、11月以降の利上げペース減速の可能性が取り沙汰されていたためだ。
従って、日本政府の介入がどの程度の円安抑止効果を発揮するのかどうかは、ドルの地合いが重要と考えられる。そこで足元のドルをみると、今年7月以降の金利上昇を受けて、安値圏から持ち直しつつある。
ここからの経済指標次第ではあるが、適度にタカ派トーンを示したパウエル議長の講演を踏まえると、まだ、ドルの反発余地が残されていると見受けられる。こうした中では、仮に日本政府が介入に踏み切っても、昨年9月のパターンと同様、十分な円安抑止効果を得られない可能性が高いのではないか。
<日銀は緩和姿勢維持、円安進展も>
仮に、日本が円安の阻止に向けて本腰を入れるのであれば、最も効果的なのは金融緩和の調整と為替介入とを同時に行うことだろう。とは言え、植田和男総裁は金融政策を見直す条件に、持続的な賃金の上昇を掲げており、緩和継続の意向を崩していない。
このため、ドルが下落トレンドに転じる以外、ドル/円が反落する可能性も低いように思われる。150円大台の定着やさらなる続伸には、ドル高と円安の両輪が必要とみられ、まだ、そこまでの力強さは今のドルにはない。
ただ、1)短期的な米国の中立金利が上がった可能性、2)依然として多くの円安材料が残っている点、3)日本政府の介入効果が乏しい可能性──などに照らせば、ドル/円が昨年高値である151円94銭を試す可能性は決して低くないだろう。
編集:田巻一彦
(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*内田稔氏は、高千穂大学商学部准教授、FDAlco外国為替アナリスト。慶應義塾大学卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。マーケット業務を歴任し、2012年から2022年まで外国為替のチーフアナリスト。22年4月から現職。J-money誌の東京外国為替市場調査では2013年より9年連続個人ランキング1位。国際公認投資アナリスト、証券アナリストジャーナル編集委員、公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、経済学修士(京都産業大学)。
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。
免責事項:
このコンテンツの見解は筆者個人的な見解を示すものに過ぎず、当社の投資アドバイスではありません。当サイトは、記事情報の正確性、完全性、適時性を保証するものではなく、情報の使用または関連コンテンツにより生じた、いかなる損失に対しても責任は負いません。