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概要:7月28日の日銀金融政策決定会合以降、再びドル/円相場の上昇基調が続き、約3週間で138円台から146円台まで6%弱上昇している。この間の主要通貨の騰落率をみると、ドルが最も強い通貨となっている一方、円が最弱通貨となっている。
[東京 23日] - 7月28日の日銀金融政策決定会合以降、再びドル/円相場の上昇基調が続き、約3週間で138円台から146円台まで6%弱上昇している。この間の主要通貨の騰落率をみると、ドルが最も強い通貨となっている一方、円が最弱通貨となっている。
7月28日の日銀金融政策決定会合以降、再びドル/円相場の上昇基調が続き、約3週間で138円台から146円台まで6%弱上昇している。写真は日本円紙幣。2022年6月撮影(2023年 ロイター/Florence Lo)
<ドル高の背景に実質金利上昇>
ドルは7月半ばごろから上昇基調を続けているが、今回のドルの上昇は米国の実質金利上昇に沿った形となっている。両者はいつも相関が強いわけではないが、昨年初から10月ごろまでドルが強い上昇基調をたどった時も、米国の実質金利上昇に沿っていた。
ただ、昨年は米連邦準備理事会(FRB)の利上げを受けて名目金利が大きく上昇する中、期待インフレ率が低下したことにより実質金利の上昇が大きくなったが、今回は期待インフレ率が横ばっている中で名目金利が上昇していることにより実質金利が上昇している。
仮に今週のジャクソンホール会合でパウエルFRB議長がタカ派姿勢を示したりすることによって、期待インフレ率が下げ始めると、昨年と同様に実質金利の上昇圧力がさらに強まり、ドルの上昇も一段と大きくなる可能性もある。9月は昨年も一昨年もドルが2番目に大きく上昇した月だった。今年も同じような傾向がみられるかどうかが注目される。
ドルは2021年に主要通貨の中でカナダ・ドルの次に2番目の強さを示し、2022年は主要通貨の中で最強通貨となった。2021年は米国経済の「ひとり勝ち」、2022年はFRBの利上げ期待の高まりがドル高の背景だった。
今年のドルは今のところ主要通貨の中で、5番目の強さ、つまりちょうど中間に位置している。現在の市場は、25bpの利上げをあと1回分も完全には織り込んでいないが、仮に市場があと1回、ないしは2回の利上げを織り込むようになると、ドルは今年も最強通貨の一つになってくる可能性もある。
<円が安い3つの要因>
一方の円は、相変わらず弱い通貨だ。実質金利の大幅マイナス、貿易・サービス収支等国際収支の悪化、20年以上ぶりの他国との短期金利差拡大という、3つの円安要因の同時発生により、円は構造的に弱い通貨となっていると考えられる。
こうした日本のファンダメンタルズに変化がなければ、円は主要通貨の中で万年最下位争いをする通貨であり続ける可能性が高い。
円は2021年に主要通貨の中で最弱通貨となり、2022年はスウェーデン・クローナに次いで2番目に弱い通貨、そして今年も今のところ2番目に弱いノルウェー・クローネに対しても3%弱下落している最弱通貨だ。新興国通貨も含めた主要24通貨でみると、2021年中、2022年中、そして本年入り以降で、最も弱い5通貨に毎年入っているのはアルゼンチン・ペソとトルコ・リラと円だ。
日本はトルコやアルゼンチンと同様、国内の実質金利が大幅にマイナスとなっており、当面、マイナス圏から抜け出せる可能性が低い。
<インフレ率3%、どうする日本の家計>
こうなると日本の家計が保有する1100兆円の現金・預金が、外貨を含むその他の資産にシフトする可能性がある。これまでは円の現金・預金を保有することに特に問題は無かったが、インフレ率が3%程度で推移するとなると、金利がゼロのままであれば、現金・預金は毎年3%目減りしていく。
日本の家計が保有する円の現金・預金は、金融資産全体の半分以上となっているが、例えば、ユーロ圏では現金・預金の保有額が金融資産全体に占める比率は35%しかない。仮に日本の家計も円の現金・預金の全体に占める比率を35%まで落としたとしたら、400兆円程度の円の現金・預金からのシフトが発生する計算となる。
ドル/円相場が昨年9月の円買い介入のレベルを超えたことで介入警戒感が広がっている。筆者は今回、そう簡単に円買い介入を行わないだろうとみている。円売り介入とは異なり、円買い介入は外貨準備の保有額という限界がある。
日本の外貨準備は160兆円あるが、それを全部使うわけにはいかない。おそらく使えてあと30─40兆円程度ではないだろうか。それ以上使っても円安が止まらなければ、市場からアタックを受け、新興国でみられるような通貨危機に陥るリスクが高まる。
仮に400兆円のうちの半分が外貨にシフトしただけで、外貨準備全体の額を超えてしまう。もはや家計が動き始めたら外貨準備では円安は止められないだろう。これからの円買い介入は、かなり慎重かつ限定的にしか行われないとみている。
編集:田巻一彦
(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。
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