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概要:メタやグーグルの広告事業の収益回復を見る限り、オンライン広告不況は収束したようにも見えます。しかし事はそう単純ではありません。企業が制限なしにオンライン広告に巨額の資金をつぎ込む時代は終わり、従来型のマスメディア広告と似たような環境になりつつあることを示す兆候が見られます。
停滞していた企業の広告支出が回復しつつある。では、広告不況は一段落したのだろうか。
今年2023年第1四半期に伸び悩んでいたGoogleは、広告事業において第2四半期には前年比で3.3%増、581億ドル(約8兆1500億円)の収入を計上した。YouTubeも第2四半期には勢いを取り戻し、広告収入で前年比4%%増の77億ドル(約1兆1000億円)を記録している。
一方、メタ(Meta)の広告事業も堅調で、2022年第2四半期には282億ドル(約4兆円)だった収入が、今年の同四半期には大幅に伸び、315億ドル(約4兆4100億円)に達した。このように、各社の業績を見るかぎりはオンライン広告不況が収束したようにも見える。しかし実のところ、ことはそう単純ではない。
企業が巨額の広告費をつぎ込む時代は終わった
ユニリーバ(Unilever)、コカ・コーラ(Coca-Cola)、P&Gなどの企業では、今年下期に広告支出を増やす計画だというが、市況回復の度合いは米国のほうがヨーロッパより勢いがあるなど、地域によって異なる。予算自体は増える見通しだが、支出が複数のプラットフォームに分散されるため、メディアオーナーのなかでも受けられる恩恵には濃淡が生じるだろう。
端的にいえば、企業が制限なしに巨額の広告費をつぎ込む時代は終わったと言える。オンライン広告はいまや成熟市場で成長は鈍化。つまり、オンライン広告が長年挑戦してきた従来型のマスメディア広告と似たような環境になりつつあるということだ。
「現在、広告費の60%以上を占めるまでになったオンライン広告が、従来型の広告と切り離されたかたちで成長する可能性は低い」と、欧州IAB(IAB Europe)でチーフエコノミストを務めるダニエル・ナップ氏は語る。「デジタルの爆発的成長の時代は終わった」。
とはいえ今年の広告費は、2021年から激減した2022年と比べれば、前年比での落ち込み幅は小さいだろう。オンライン広告費の成長率は通年で1桁台と、コロナ禍以前の水準に戻る見通しだ。広告市場がコロナ禍により急回復して大幅に伸びた2021年の状況を考えると、最近の減速は懸念材料というより、調整期に入った結果と解釈すべきだろう。
「今回の調整局面では、成長に地域差がみられる」とナップ氏は言い、「大きく成長しているのが米国とアジア、そして勢いが増してきたラテンアメリカだ。また、中東も堅調だ」と続ける。この傾向は、ヨーロッパの市況が回復しないかぎり、しばらく続くとみられる。
欧州IABの集計によれば、ヨーロッパの広告費は上位5カ国が域内全体の60%を占めている。その5カ国のうちスペイン、ドイツ、イタリアにおいてオンライン広告費の前年比成長率(インフレ調整後)は今年、スペインが0.8%、ドイツがマイナス5.5%、イタリアがマイナス4.6%と、通期で世界平均を下回る微増か、マイナス成長の見通しだという。
これらの国々の市況判断には注意が必要だ。Googleとメタという2大メディアへの広告支出額が開示されていないため、正確な実績値の把握が難しい。ただし、入手可能なデータにもとづいた業界専門のアナリストやエコノミストの分析によれば、あまり楽観視はできないようだ。「一部の国々では景気後退の兆候が出始めており、ほかの国にも影響が及ぶだろう」と、ナップ氏は説明する。
しかし、広告費の変動要因は景気後退だけではない。ヨーロッパの場合、ブロードバンド通信速度、デジタル関連スキル、オンライン購買意欲の面での制約が、オンライン広告市場の拡大を阻んでいる。その影響でナップ氏が言うように、「近年著しかった成長も頭打ち」となっているのだろう。
予算編成の基準となるのは対売上高との比率
一方で、一部の国々では広告をめぐるいくつかの市場障壁が緩和され、見通しに明るさが見えてきそうな気配もある。
たとえば英国広告協会と調査・分析企業のWARCがまとめた最新の支出報告書(AA/WARC Expenditure Report)によれば、2023年通期の英国の広告費は、4月時点の予想より2.2%増加して357億ポンド(457億ドル[約6兆4000億円])に達する見込みだ。
米国でも同様の傾向で、マグナグローバル(Magna Global)が3月に発表した業界動向予測では、今年の米国市場は前年比で3.4%成長し、広告支出は過去最高の3260億ドル(約45兆6400億円)に達するとされる。アジア太平洋地域に関しては、グループエム(GroupM)が6月発表の報告書で前年比6.6%増と予測している。
これらの市場に共通する要素は企業間の熾烈な競争だ。競合に先んじて消費者に自社商品を訴求すべく、広告宣伝を強化する動機づけとなっている。コカ・コーラ、ダノン(Danone)、LVMH、ユニリーバ、レキットベンキーザー(Reckitt Benckiser)といった大手広告主が、年末に向けた広告支出増を計画しているのもうなずける。市場競争に打ち勝てば事業収益が増え、広告投資に回す資金が確保でき、結果として市場で優位に立てる。そうした好循環を確立したいという考えだろう。
メディアアナリストでニュースレター「マディソン・アンド・ウォール(Madison and Wall)」を発行するブライアン・ウィーザー氏は、「企業のマーケティング部門ではたいてい、売上高に占める広告費比率を設定したうえで予算を組む。四半期で10億ドル(約1400億円)の売上が見込まれる場合、広告費をどの程度まで使うかの計算には、あらかじめ決めておいた比率(たとえば4.2%など)を適用することが多い。数値は状況により変わるにしても、予算編成の基準となるのはやはり対売上高との比率だ」と語る。
高い予算を確保する説得方法は?
広告主の予算増はエージェンシーにとってチャンスだ。効果的なキャンペーンでクライアントのマーケティング活動を支援し、業界全体にプラスとなる波及効果を生み出す機会に恵まれる。2022年はその典型的な例だろう。
調査・分析企業のコンバージェンス(COMvergence)の調べによれば、広告主からメディアバイイングの委託を受けた大手6社が投入したメディア費は、2021年には合計3770億ドル(約52兆7800億円)だったが、2022年は6.4%増の4010億ドル(約56兆1400億円)まで伸びたという。2023年もこの傾向が続く可能性は十分にある。広告支出をめぐる好材料はつねに、エージェンシー各社にとっても好材料になるわけだ。
英ロンドンに本社をおく広告エージェンシーのクリーム(Cream)でCEOを務めるニール・カニングハム氏は、「マーケターたちは景気変動にも慣れっこだろうが、費用対効果の高い広告を目指して予算を確保すべく関係者を説得しようとするなら、直感や慣習に頼ってばかりはいられない」と語る。
同氏は続けて、「調査やデータマネジメントでは、より洗練されたアプローチを採用すべきで、マーケティングミックスモデリングなど包括的な測定手法を取り入れ、市場環境について科学的根拠にもとづいた知見を獲得する必要がある。それが経営資源の効果的配分を可能にし、年末に向けて事業の成長を促す役割を果たす」と述べた。
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