简体中文
繁體中文
English
Pусский
日本語
ภาษาไทย
Tiếng Việt
Bahasa Indonesia
Español
हिन्दी
Filippiiniläinen
Français
Deutsch
Português
Türkçe
한국어
العربية
概要:アメリカの下院は最近、誰がプライベート市場への投資を許可されるかを決定する「適格投資家」の定義を拡大する3つの法案を可決しました。
アメリカ証券取引委員会のゲイリー・ゲンスラー委員長。
Evelyn Hockstein/Associated Press
数兆ドル規模の資本市場を一変させ、スタートアップの資金調達方法を変容させる可能性のある哲学的な議論がワシントンD.C.で繰り広げられている。
この1カ月の間に、「適格投資家(accredited investor)」の定義を拡大する3つの法案が下院を通過した。この法案は、規制当局が未登録証券、すなわち通常の開示要件の対象とならない証券の購入を許可する人物を決定するために利用するものだ。
同時に、アメリカ証券取引委員会(SEC)はゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長の下、「適格投資家」の定義を狭め、プライベートマーケットに抜本的な新しい規制要件を課す可能性のある一連の規則を再検討している。
これは、アップル(Apple)やグーグル(Google)のような企業の株式が完全な透明性をもって取引される公的な取引所ではなく、プライベートマーケットやスタートアップ投資という陰の世界で、資金をリスクにさらすことが許可されるべき人物は誰なのかをめぐる議論だ。
適格投資家とは?
ある人にとっては、「適格投資家」の定義は遺物であり、成長企業を骨抜きにし、有色人種や低所得者を不当に排除している束縛だ。また、エリザベス・ホームズ(Elizabeth Holmes)やサム・バンクマン-フリード(Sam Bankman-Fried)のようなカリスマ詐欺師と個人投資家の間に立ちはだかる唯一無二の壁だという人もいる。
もっと知る
「世紀の詐欺」セラノス創業者、エリザベス・ホームズに有罪評決…最高で懲役20年の可能性
「適格投資家」の定義の起源は、世界大恐慌と1933年連邦証券法にさかのぼる。
1929年の株式市場の大暴落に対応して可決されたこの法律は、SECを設立し、一般大衆に証券を販売しようとするあらゆる証券発行者に対して厳格な開示要件を課した。今日に至るまで、上場企業が監査済みの財務諸表を含む四半期報告書を発行しているのはそのためだ。
50年近くにわたり、法律で定められた基準が資本市場のほぼすべてを支配していた。そして1982年、ウォール街が台頭し、当時のレーガン大統領が規制緩和の福音を説くなか、 SECはレギュレーションD、通称「Reg D」を採択した。
この規則は、純資産が少なくとも100万ドル以上、または年収が少なくとも20万ドル以上の人物と定義した適格投資家にのみ証券を販売することを条件に、証券発行者が通常の開示要件を負うことなく無制限に資金を調達することを認める例外規定を設けた。
この区別は、特にスタートアップに関係してくる。スタートアップは一般的に、公募増資の過酷な、そしてしばしば法外に高価な開示要件を避けるために、適格投資家からのみ資金を調達することに固執する。
また、Reg Dが創設されて以来、ほとんどの証券発行者が資本市場にアクセスする方法は、プライベートマーケットが主流となっている。SECのデータによると、2021年7月から2022年6月までの間に、公開市場では1.2兆ドル(約173兆円、1ドル=144円換算)が調達されたのに対し、プライベートマーケットでは約4.5兆ドル(約648兆円)が調達された。株式の新規公開は、かつては成長企業にとって資金調達のための定番の方法だったが、同じ期間の調達額はわずか1260億ドル(約18兆1400億円)に過ぎなかった。
今月初めに下院を通過した「Fair Investment Opportunities for Professional Experts Act」を提出したアーカンソー州選出のJ・フレンチ・ヒル(J. French Hill)下院議員(共和党)は「プライベートな証券は、今日の資本市場において1982年当時よりもはるかに重要な側面を持っています」と述べた。この法案は「適格投資家」の定義を拡大し、財務的な資格は満たしていないものの、問題となっている投資に関連する専門的な経験を持つ人々を含めるというものだ。
「特にヒスパニック系やアフリカ系アメリカ人のコミュニティなど、純資産を築くことに関心のある人々により多くの機会を提供する素晴らしい方法です」
米下院金融サービス委員会の民主党幹部であるマキシン・ウォーターズ(Maxine Waters)下院議員(カリフォルニア州選出)は、党の垣根を越えてヒル氏の法案への支持を集めた。このため、何人かの民主党議員たちと対立した。その一人であるマサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員は、この法案は「投資家にとっても、ひいては市場にとっても良くないものです」とポリティコ(Politico)に語った。
下院は最近、適格投資家プールを拡大することを目的とした他の2つの法案も可決した。そのうちの1つは、投資家になる人に認定試験を設ける「Equal Opportunity for All Investors Act」、もう1つは、SECに適格投資家の定義を適切に拡大する広範な権限を与える「Accredited Investor Definition Review Act」だ。
「悪いことは暗闇で起こる」
超党派の支持にもかかわらず、すべての人がこれらの法案に賛成しているわけではない。
アメリカ消費者連合の投資家保護担当ディレクターであるマイカ・ハウプトマン(Micah Hauptman)氏は次のように述べている。
「このようなプライベートマーケットは闇であり、情報も少ない。悪いことは暗闇で起こるものです」
同氏は、公開市場という投資家保護がなければ、個人投資家は悪徳商法や欺瞞的な商習慣の影響を受けやすい「カモ」になると主張した。
それ以上に同氏は、こうした投資家が公的年金基金や他の大手資産運用会社などの機関投資家に太刀打ちできなくなることを懸念している。
「カルパース(CalPERS、カリフォルニア州職員退職年金基金)やイェール大学基金(Yale Endowments)は常に最良の取引にアクセスできるのに対し、100万ドル規模の純資産を持つ投資家は、樽底の残りかすを手にすることになるでしょう」
ブルッキングス研究所(Brookings Institution)の分析によると、1983年にはわずか1.8%だったのに対し、2020年にはアメリカの世帯の13.85%が適格投資家に該当するという。
この急速な拡大は、1982年に設定された所得と純資産の基準値がインフレに応じて更新されていないという事実によるところが大きい。一部の提唱者たちは、これらの基準値を現在の物価水準に調整するようSECに要求しており、そうすれば、所得要件は約64万5000ドル(約9300万円)に、純資産要件は約320万ドル(約4億6000万円)に引き上げられることになる。
エンジェル投資家への影響
この単純な変更でさえも、少なくとも1つのグループ、つまりエンジェル投資家には大きな影響を与える可能性がある。1万5000人以上の適格エンジェル投資家を代表するエンジェル・キャピタル・アソシエーション(Angel Capital Association=ACA)のマーシャ・ダウッド(Marcia Dawood)会長は、インフレに連動させれば、一夜にしてACA会員の半数以上が資格を失う可能性があると述べた。同氏は、これは駆け出しのスタートアップにとって重要な資金源を危険にさらすことになると述べる。
「エンジェルは、アーリーステージの企業を後押しする存在です。エンジェルがいなければ、今日のような多くのイノベーションは起こらなかったでしょう」
ダウッド氏はまた、エンジェル投資は、他の方法ではスタートアップのエコシステムにアクセスできない投資家にとって重要な手段であると述べた。女性はエンジェル投資家全体の34%近くを占めるのに対し、従来のVCファンドでは15%弱に過ぎない。
ACAはワシントンでロビー活動をする企業を雇い、議会とSECに認定投資家の定義を拡大するよう働きかけている。
しかし、SECの元証券弁護士で、公的年金基金などの機関投資家を代表するヘルシー・マーケッツ・アソシエーション(Healthy Markets Association)のCEOであるタイラー・ゲラシュ(Tyler Gellasch)氏は、プライベートマーケットに参入できるほど十分洗練されているのは誰かという議論は的外れだ、と指摘する。
ゲラシュ氏は、誰がどの証券への投資を許されるかを取り締まるよりも、証券発行者自身にもっと透明性を求める方が、より効果的なアプローチだろうと述べる。
「誰が適格投資家であるべきかというテストを考え出そうとするのは、誰が目隠しされた状態で最高のドライバーになれるかという運転テストを課すようなものです。あなたは優秀な投資家かもしれませんが、情報がなければ、それはギャンブルです」
大多数の証券発行者が最も厳格な開示要件を課せられている1982年以前の世界に戻ることはなさそうだが、より透明性を高める動きは、認定投資家論争の核心にある多くの問題を改善するのに役立つだろう、とゲラシュ氏は述べる。
「FTXとセラノス(Theranos)が生まれたのには理由があります。もし彼らが株式公開をしていたら、あるいは少なくとも事業に関する情報の公開が求められていたら、もっと早く破綻していたでしょう」
免責事項:
このコンテンツの見解は筆者個人的な見解を示すものに過ぎず、当社の投資アドバイスではありません。当サイトは、記事情報の正確性、完全性、適時性を保証するものではなく、情報の使用または関連コンテンツにより生じた、いかなる損失に対しても責任は負いません。