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概要:「最近の消費者物価指数を見てみると、割と強めに出ている。生活実感としても、食品が特に上がっているという印象だったのが、最近は身の回りの色々なものに広がっていると感じている人が多いのではないか」
[東京 30日 ロイター] - 日銀の氷見野良三副総裁とのインタビューの一問一答は以下の通り。
日銀の氷見野良三副総裁とのインタビューの一問一答は以下の通り。
――物価の現状や先行きについて。
「最近の消費者物価指数を見てみると、割と強めに出ている。生活実感としても、食品が特に上がっているという印象だったのが、最近は身の回りの色々なものに広がっていると感じている人が多いのではないか」
「基本的には輸入物価の上昇の転嫁が時間を掛けて広がっていると受け止めている。では本当に他の要因がないかと言われれば、人手不足や需要の強さ、企業の価格設定行動の変化といったものの兆しがみられる。輸入物価の上昇の転嫁の部分と、そうした新しい要素とがどれくらいの比率で効いているのかを見極めていくことが大事だ」
「価格転嫁中心の物価上昇だという見方を見直すところまでは行っていないが、これから出てくるデータをよく見極めていきたい」
――今年度半ばにかけてコアCPIの伸び率が縮小するとの見方は変わらないか。
「輸入物価だけ(による上昇)ではないが、私自身は他の要素の影響度合いをきちんと見極められる状態にはまだ至っていない」
――2%物価目標の持続的・安定的な達成に近づいているか。
「民間のエコノミストの予測の中心値を見ると、足元は日銀より強いが、先行きについてはどんどん下がっていって1%になって戻らない、というのがコンセンサスとなっている。輸入価格上昇の転嫁の要素と、それ以外の人手不足などの要素がどれくらいなのかを見極めていくことが大事になってくる」
――年内は見極め姿勢か。
「各時点でベストの見極めをしなければならない」
――日本でインフレが想定外に加速するリスクは。
「足元の指標を見る限り、物価上昇率の中心はサービスよりは財から来ているし、財の上昇の相当部分は転嫁で説明がつく。いま欧米のようなことが起きる兆しがあるということではない。ただ、経済は生き物。虚心坦懐にいろいろな要素がどう働いているかよく見ていく」
――スタグフレーションに陥るリスクは。
「現在の状況で日本がスタグフレーションに陥る具体的な懸念があるか、と言うと私はそのような懸念は持っていないし、仮に懸念が生じれば政策的にはそういう状態に陥らないように全力を尽くす」
――スタグフレーションに陥った場合の政策対応は。
「そうした仮定の質問にお答えすべき状況とは思わない」
――金融政策運営に当たり、日銀は「経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応」としている。物価に影響を及ぼす為替や長期金利の変動が大きくなった場合、機動的な対応を取ることになるのか。
「市場のもたらすメッセージは注意深く読み解いていかなければならない。市場の変動が経済に与える影響はしっかり分析していかなければならない。その上でどう政策をやっていくかということなると、経済・物価・金融情勢全体のメインシナリオとリスクシナリオの両方を考えて総合的に判断していくことになる」
――足元で進む円安の経済・物価への影響は。
「為替の足元の動きについては、コメントは控えたい」
――当面は今の緩和を粘り強く続ける姿勢か。
「もちろん経済・物価・金融情勢を見ながら機動的に判断していくわけだが、現在の状態では金融緩和を続けていくというのがとるべき道だと考えている」
――YCCの副作用を考えて、副作用の手当てを直ちに行うことはないか。
「YCCの副作用の手当てが具体的にどういうことが考えられるかとか、いつやるのかとかやらないのかなど、具体的な政策対応についてはコメントを差し控えたい」
――金融システムへの大きな影響なく緩和の修正を行うことは可能か。
「金融政策の運営に当たっては金融システムの安定を維持できる形で運営を工夫していくべきだし、考査やオフサイトモニタリングや金融システムリポートの分析などをみて、政策委員会でも定期的に議論している。その時の環境次第で出口のプロセスも色々な姿をとりうると思うが、いずれにせよ、安定的に移行できるようわれわれも努めていくし、金融機関にも適切なリスク管理を促していきたい」
――金融機関にとって一番怖いのは突然に予想外の政策変更が行われることだ。
「日銀の政策は経済全体や家計・企業など色々な経済主体に影響を与えるので、急激なショックの原因にならないようにするのが望ましい。ただ世界では色々なことが起き、予想できることもあれば予想外のこともある。できるだけ急激な対応を避けるということと、起きている変化にできるだけ機動的に対応するということとの間の判断になる。本当に想定外のことが起きたときにはぎりぎりの判断をするということだろう」
――欧米で起きた金融不安を踏まえ、日本の金融システムで注目すべきリスクは。
「現在、日本の金融システムは全体として安定した状態にある。今後のリスク要因については、国内要因と海外要因がある。国内では経済の好循環があまり本格化せず、ずっと低金利の環境が続くというのが一番答えを見出しにくい。もちろん顧客にどういう付加価値を提供するか、コストカットの道がさらにないか等、金融機関はいろいろ工夫していくと思うが、低金利環境が続く場合の答えというのが一番見つけにくいと思う」
「海外について、日本にとっておそらく一番良いのは欧米の物価がソフトランディングでき、今回の引き締めのフェーズがうまく収束することだ。欧米の物価上昇が予想外に頑健なことが明らかになって、想定以上に引き締めが必要になるということが嫌なシナリオの1つだが、最近の様子を見ているとそのリスクは比較的小さくなってきている」
――将来的に金融緩和を正常化しても、金融機関がスムーズに貸出金利を上げられない結果、収益が思うように上がらず自己資本を毀損する金融機関が出てくるリスクは。
「経済が良くなっていって出口を迎えるとき、国民にとっては良いことでも、金利が上がっていく過程は金融機関には良くないという議論を聞くことがあるが、そんなことはない」
「もちろん移行過程で長期保有債券の含み損が増えることはあるが、基本的にはずっと低金利が続くよりビジネスモデルが考えやすい世界に移っていく。経済に活気がないまま銀行だけ儲かることはあり得ないので、途中過程は注意しなければいけないが、経済の好循環が銀行には困ったことになるという議論は全く賛成できない」
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