ＰＥ投資会社の若手バンカー引き抜き、競争が限界に－急ぎ過ぎが原因

若手バンカーをウォール街の大手銀行から引き抜くプライベートエクイティー（ＰＥ、未公開株）投資会社の競争は限界に達した。

ＰＥ投資会社は2024年に入社するアソシエートを採用しようとしているが、今年は１回目に十分な人が集められず２回目の採用活動を行っている。人材あっせん会社のオデッセイ・サーチ・パートナーズの分析が示した。

ライバルに後れを取らないように、多くのＰＥ投資会社は22年に銀行に入社したばかりの若手バンカーを勧誘し始めた。しかし、働き始めたばかりのディールメーカーの卵たちはまだ実績がなく、１件の取引もまとめられていない若手もいる。

オデッセイのリポートによると、ＰＥ投資会社の多くは必要な人数を採用できていない。アナリストの肩書を持つ若手バンカーにしてみれば、あまりに早く勧誘されても転職する意思も湧かず、そのための能力も備わっていないからだとオデッセイは分析している。

ＰＥ投資会社はかねてから、バンク・オブ・アメリカ（ＢｏｆＡ）やシティグループ、ＪＰモルガン・チェース、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス・グループなどから若手バンカーを引き抜こうとしてきたが、その勧誘の時期はここ10年の間にどんどん早くなっている。

大学を出て就職したばかりの若者が最初の職に就いてすぐに次の職について交渉し、合意するというこのプロセスは常に問題だった。銀行は折に触れてＰＥ投資会社の勧誘を制限しようとしてきたが、ＰＥ投資会社はしばしば銀行の最大の顧客でもある。

2010年当時、ＰＥ投資会が若手バンカーを引き抜くための勧誘を始めるまでにバンカーらが銀行で業務を学ぶ時間は11カ月程度あった。しかし24年に入社するアソシエートについては、ＰＥ投資会社はバンカーが仕事を始めて１カ月もたたないうちに勧誘を始めている。オデッセイによればこれは今までで最も早い。

オデッセイのリポートによると、22年の勧誘期間にはバンカーの多くは銀行にとどまった。「バンカーは通常、面接で語る材料として少なくとも１件の取引を成立させていなければならないと考えるが、Ｍ＆Ａ（企業の合併・買収）が低迷している環境で22年入社組の経験は以前の新人バンカーより少ない」とリポートは指摘している。