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概要:[東京 16日] - 現段階では国会同意前だという点を承知して、4月9日に植田和男総裁が誕生した後、4月27─28日の金融政策決定会合で、どう動きそうかを考えてみた。
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[東京 16日] - 現段階では国会同意前だという点を承知して、4月9日に植田和男総裁が誕生した後、4月27─28日の金融政策決定会合で、どう動きそうかを考えてみた。
現段階では国会同意前だという点を承知して、4月9日に植田和男総裁が誕生した後、4月27─28日の金融政策決定会合で、どう動きそうかを考えてみた。熊野英生氏のコラム。写真は都内の日銀本店で1月18日撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)
もちろん、それは4月時点での物価・経済情勢次第であろう。インフレ圧力が強まっているという前提で、新しく政策の仕切り直しに着手する新体制の運営を考えてみたい。
<植田日銀が直面する課題>
まず、考える際の枠組みを最初に示しておこう。新体制が取り組む目先の課題が3つある。1)長期金利の変動幅の上限が0.50%でよいか、2)その上限を守るために指し値オペを打ち続けるのでよいか、3)より広い問題としてイールドカーブ・コントロール政策(YCC)を見直す必要はないのか──である。この3つが、金融市場で日銀の課題として注目されている。
次に、4月時点の物価・経済情勢はどうなっているか。基本は、インフレ・リスクが強まっていて、かつ、景気が現在よりも強くなっていることが前提になる。おそらく、1月の展望レポート時よりも、4月の見通しは、物価・景気がともに上方修正に向かっているだろう。そこでの論点は、物価、景気、為替動向の3つとなる。
さらに、新体制がもっと大枠で再確認していくテーマもある。新しい体制に移行するのだから、黒田東彦総裁の時代との連続性があるかどうかが大きなポイントとして意識されるだろう。政府との共同声明や、黒田時代に行われた物価情勢・政策効果の点検・検証などについて評価する。そしてインフレターゲットそのものに対する理解も改めて説明することになるだろう。
以上をまとめると、「目先の課題」は、1)長期金利の上限、2)指し値オペの扱い、3)YCCの見直し、となる。
「現状判断」は、1)物価、2)景気、3)為替、の評価となる。
そして、「再確認すべきテーマ」として、1)共同声明、2)物価と政策の点検、3)インフレターゲットが俎上(そじょう)にのぼる。
<YCC見直しの着地点>
目下の課題は、指し値オペをずっと使い続けるかどうかにある。長期金利の上限を実勢よりも大幅に引き上げれば、指し値オペを使う必要はなくなる。しかし、そのことは長期金利コントロールの目的をあいまいにする。
究極的に指し値オペをやめてしまうことは、YCCの長期金利コントロールを見直すことにつながっていく。もしも、4月に長期金利の上限を0.75%もしくは1.00%にすることは、先々におけるYCC見直しを強く意識させるだろう。
では、「一足飛び」にYCC撤廃はあるか。それは無理だろう。予想外に長期金利が跳ね上がったときは、無策ではいられない。YCCには、長期金利上昇の行き過ぎに歯止めをかける安全装置の側面もある。その役割は別の手法を講じることになろう。
問題なのは、人為的に長期金利を低位にくぎ付けにしている点だ。それを過剰に行ったために、長期国債の市場取引が乏しくなっている。その弊害について、新体制がどう考えるのかが問われる。4月会合後の記者会見でも、新体制の考え方が質問されることだろう。
<高まるインフレ圧力>
筆者が注目するのは、2023年1─3月の消費者物価指数(CPI)である。3月の全国データが4月21日に発表される。4月中旬の東京都区部のデータは4月28日の発表だ。そこで、予想以上にインフレ圧力が高まっていれば、長期金利の上限を引き上げる公算は高まっていく。4月の展望リポートも、物価上振れを強調することになりそうだ。
CPIのヘッドラインは、2月と3月に電気・ガス代の政策支援によって伸び率が鈍化するだろう。しかし、日銀が注目するのは、そうした支援を除いた実勢の方だ。その実勢が上向きになると、日本の長期金利には追加的な上昇圧力がかかる。
4月の状況を考えるとき、景気情勢も重要になる。4月末のタイミングであれば、5月8日の新型コロナウイルスの感染法上の分類見直しを前に、個人消費の改善が意識されるだろう。
米国では米連邦公開市場委員会(FOMC)が5月2─3日に予定されている。おそらく、米国経済は強さの方が目立ち、米国のインフレ圧力はくすぶり続けるだろう。日米景気が底堅いことが確認されることも、日銀の新体制にとって政策修正がしやすくなる外部環境が整うことを意味する。
<インフレターゲットの取り扱い>
4月会合では、新体制が長期金利の上限を引き上げたり、指し値オペの運用見直しについてアナウンスする可能性はある。
だが、この会合での注目は、前述の3番目の「再確認すべきテーマ」である共同声明などの取り扱いを示すことだろう。何しろ新体制の初めての決定会合であり、対外的に政策の刷新を印象づけるにはよい機会になる。黒田東彦総裁も、2013年4月の初回会合で方向転換を打ち出した。だから、新体制が仕掛けてくるのならば、やはり初回の4月だと予想される。
半面、金融市場は新体制があまりにタカ派に傾くことには警戒するだろう。4月会合で、同時に点検が行われるときは、新体制はタカ派色を打ち消すような慎重なコミットメントを発表する可能性もある。
この4月会合で共同声明の見直しや確認が行われるとすれば、大掛かりな発表となるだろう。2013年1月は、政府から大臣や副大臣が出席して、声明文が発表された。日銀の新体制と岸田文雄内閣は、用意周到に下準備をして、あまり利上げに予断を与えない書き方で声明文をつくることになるだろう。
そして、インフレターゲットの取り扱いは、現状維持にするのではないか。2%の目標は、長期的な位置づけにするという見方もある。しかし、それでは日銀がすぐに利上げに動く可能性を読み取られてしまう。だから、もっとハト派的な文言を入れることで、タカ派的なイメージを消していく可能性がある。
このように考えると、4月会合はかなり大きな手術になると予想される。黒田緩和を清算するのは困難を伴うということだ。反対に、激変は困るから、かなり現状維持的になる選択肢もあり得る。考えるほどに「うまい出口」は見つけにくいと感じられる。
編集:田巻一彦
(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。
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