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概要:毎年年末になると話題になる「ふるさと納税」。どこの自治体の返礼品をもらうか、で盛り上がりますが、ふるさと納税が実はメリットばかりではないという事実はあまり知られていません。国民に将来大きなデメリットをもたらすかもしれない、ふるさと納税の「不都合な真実」をお伝えします。
総務省のふるさと納税ポータルサイト。
撮影:Business Insider Japan
毎年末になると盛り上がる「ふるさと納税」。2022年分の期限12月31日まで、残り1週間を切った。
ふるさと納税は2008年に「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」として始まった。
自分の選んだ自治体に寄付(ふるさと納税)を行った場合に、寄付額のうち2000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度であり、2021年には寄付金総額が8302億円にまで達した。
2021年に受け入れ額は遂に8000億円を超えた。
総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」をもとに編集部作成
だが、このふるさと納税が実はメリットばかりではないという事実はあまり知られていない。国民の将来に大きなデメリットをもたらすかもしれない、ふるさと納税の「不都合な真実」の側面を専門家に聞く。
ふるさと納税は「未来を食べて“今”の享楽にふける」行為
実質自己負担2000円でリターンがもらえる「お得」な制度として利用者が増えている。
出典:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」
そもそもふるさと「納税」という名前がついているが、正確には都道府県や市区町村など地方自治体への「寄付」だ。
年収や家族構成などの条件で決まる「上限額」までなら、寄付金控除により、その年の所得税や翌年の住民税が減る。実質的な自己負担額2000円で寄付先の自治体から寄付額の最大30%相当の返礼品をもらえる「お得な制度」として、利用者が増えている。
だが、桃山学院大学経済学部教授で財政学者の吉弘憲介氏は、ふるさと納税を「未来を食べて“今”の享楽にふける」行為だと説明する。本来、子や孫、あるいは老後の自分が受けるはずだった未来への投資利益を肉や魚に変えて今食べてしまっているのだ。
「例えば我々が使っている道路や橋などのインフラ、部分的には電気事業など公益事業にも税は利用されています。ふるさと納税がそうした社会の屋台骨をすぐに崩すことはありませんが、このまま拡大していくと、ボディーブローのようにダメージを与えていくでしょう」(吉弘教授)
ふるさと納税に支払った金額のおよそ半分が返礼品やコストとして消えてしまうことはあまり知られていない。
「ふるさと納税によって、本来税収になるはずだった額の3割が返礼品に使われ、2割はコストに消えています。2021年はふるさと納税の寄付額が8000億円を超えたので、半分の4000億円が本来使われるはずだった公共サービス以外のものに使用されたということです」(吉弘教授)
こうした事実が無視されて、ふるさと納税がここまで広がった背景は何だろうか。
Advertisement激化する「返礼品競争」に逮捕者も
撮影:今村拓馬
2001年の小泉改革以降、財政再建のため地方交付税が減らされたことで各地の自治体はなんとか財源を確保しようと必死になった。
そこに2008年登場したのがふるさと納税だ。これは「本来、国の責任として手当てしなければいけない地域間の再配分の責任を放棄して、地方に対して自分で頑張れという非常に無責任な制度」(吉弘教授)であり、地域間の競争を煽り、財源を奪い合いをさせる制度とも言える。
実際、自治体間の競争は激化している。総務省は過度な競争を抑えるため、返礼品の調達額は「寄付額の3割以下」などと定めたが、違反する自治体は後を絶たない。
例えば、2022年に入り宮崎県都農町、兵庫県洲本市がふるさと納税制度の対象から除外された。また、高知県奈半利町(なはりちょう)のふるさと納税を巡る汚職事件では、町地方創生課の元課長と元課長補佐らに実刑判決が言い渡されている。
税という「共同の財布」からお金を引き出すことは許されない
そもそも税金とは「人々の共同の財布であり貯金」(吉弘教授)だ。
だからこそ税を公平に平等に集めるための厳しいルールがあり、本来、共同の財布から個人が勝手にお金を引き出すことは許されない。「財布に手を突っ込んで、俺はいくら入れたから、これだけリターンをくれというのはできない」(吉弘教授)のだ。
「共同で集めたお金でみんなの役立つものを買うことによって、社会を素敵にしようというのが税と財政なのです。ただ、共同で買ったものに対する満足感や信頼性が認識されないと、共同の財布から自分が好きなものをもう1回引き出せるということに魅力を感じるのは、仕方のない面もあるのかもしれません」(吉弘教授)
「一旦税金を払った以上は個別に取り出すことはできない」という税の原則に反することから、多くの財政学者はふるさと納税の問題点を制度創設初期から指摘してきた。しかし、そうした声は顧みられることなく、利用額は拡大し続けている。
横浜市から「230億円が流出」した現実
では、実際にふるさと納税で自治体がどのような影響を受けているのか。他の自治体に寄付をした住民が多いため税収が減った自治体の流出額とふるさと納税によって税収が増えた自治体の流入額トップ10をそれぞれ見ていこう。
都市部からの税源流出が相次ぐ。特に神奈川県は横浜市、川崎市の2自治体がランクイン。
NHKの報道をもとに編集部まとめ
北海道、九州の自治体が多くランクイン。肉などの特産物がある自治体が多い。
NHKの報道をもとに編集部まとめ
横浜市の「230億円という税収減」には驚く人も多いのではないか。
都市部は待機児童問題を抱えている自治体が多く、保育人材の不安定雇用や低賃金問題、児童相談所の人員不足が問題になっている。
本来こうした問題を解決するために使われるはずだったお金が「流出」して、肉や魚に形を変えている。「子どもたちの未来」を食べる行為だという指摘は、こうした現実があるためだ。
「金持ちほど得をする」逆進性という問題点
ふるさと納税には所得税のような累進性のある税とは異なり、「逆進的な税の構造を作ってしまう」問題もある。年収が増えるほど寄付上限額も増える一方で、自己負担は一律2000円だ。つまり「金持ちほど得をする」制度でもある。
さまざまな問題を抱えるふるさと納税をどうすれば、「税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会」という本来の目的に回帰させることができるだろうか。
吉弘教授は、集めた税の使途について明確化することが大事だという。
目的なくただお金を貯め込むのではなく、クラウドファンディング的な目的ベースに制度を改めるべきだとする。
「返礼品目当てではなく、自治体のプロジェクトを応援するという形でお金を集められるような制度になれば、死蔵されるお金も減り、良いと思います。
プロジェクトを応援する、という趣旨であれば、ふるさと納税が依拠する寄付金控除の仕組みにも整合的です。つまり地域を豊かにする、人々の生活を守るためのこういうプロジェクトをやります。だから全国の皆さん応援してくださいという仕組みです。そうなれば自治体間の競争も価値あるものになるのではないでしょうか」(吉弘教授)
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