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概要:世界最大級の資産運用会社ステート・ストリートは「景気後退入りすれば、投資家たちは安堵のため息をつき、確実にやって来る回復の日に目を向けるようになる」と極端に前向き。自信に満ちたその勝算の根拠を探りました。
Reuters
マイケル・アローン氏によれば、投資家にとって2023年のネガティブなニュースと言えば、景気後退が米経済を直撃する可能性が高いことだ。一方、ポジティブなニュースは市場の回復が遠からず始まることだという。
運用残高3兆2000億ドルを誇る資産運用大手ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)のチーフ投資ストラテジスト(米上場投資信託[ETF]事業担当)を務めるアローン氏は、最近の顧客向けレポートでこう述べている。
「現代史上、目前に迫りくる今回の景気後退以上に期待された景気後退があったでしょうか。
乱暴な言い方ですが、景気後退入りの日がやって来れば、投資家たちは歓迎してひとたび安堵のため息をつき、それから間違いなくやって来る回復の日に目を向けるようになるでしょう。
景況感や企業収益、雇用市場などの指標が底を打つ頃には、すでに投資家たちは景気サイクルの次のフェーズを織り込み始めているはずです」
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これから迎える景気後退期とその後の回復期に向けて、アローン氏は投資家向けに3つの戦略を紹介している。
ポートフォリオの具体的な組み方
第1の戦略は「配当利回りの高い銘柄を選ぶ」こと。それにより、景気見通しの有意な改善が確認されるまでの間、下振れリスクから資産を守ることができる。
「配当金は株価より安定した性向を持ち、トータルリターンに対するクッションの役割を果たします。そのため、高配当戦略は概して弱気相場時のドローダウン(下落率)やボラティリティ(価格変動性)低下の影響を軽減することに成功してきたのです。
1960年以降に発生した13回の弱気相場において、高配当銘柄は低配当銘柄に対して12%、市場平均に対して8%のアウトパフォームをそれぞれ記録しています」
下の【図表1】を見ると、株価低迷期に高配当銘柄が他をアウトパフォームしてきた実績が一目瞭然だ(2008年の世界金融危機、2020年のパンデミックは例外)。
【図表1】弱気相場における高配当銘柄のアウトパフォーム実績。黒が市場平均、緑が低配当銘柄、青が高配当銘柄のリターンをそれぞれ示す。
State Street Global Advisors
さらに、アーロン氏によれば、足元のような高インフレ環境においても、高配当銘柄の優位は変わらない。インフレ率(=米消費者物価指数の前年同月比伸び率)が3.25%以上(11月は7.1%)なら、高配当銘柄は低配当銘柄や市場平均をアウトパフォームする【図表2】。
【図表2】高インフレ環境における高配当銘柄のアウトパフォーム実績(年換算のリターン)。五分位数分析の各グループについて、青が市場平均、緑が高配当(上位20%)、黒が低配当(下位20%)。左側2グループのうち左がインフレ率5%以上、右が3.25%以上5%未満の場合。
State Street Global Advisors
高配当銘柄へのエクスポージャーを取る上場投資信託の例として、「バンガード高配当利回りETF」が挙げられる。
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第2の戦略は「短期債および投資適格債を購入する」ことだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めを受け、短期債と投資適格債の利回りは長期債のそれに対して魅力的な水準となっている。また、両債券は償還期限が短いため、金利の急上昇リスクにさらされる度合いも限られる。
「金利上昇により、3カ月物と10年物のイールドスプレッド(利回り差)が逆転し、イールドカーブのうち残存期間の短い側、つまり満期が1年未満の短期債にディフェンシブな魅力が生まれました。
FRBは(利上げペースこそ減速させたものの)タカ派姿勢を崩しておらず、今後も利上げが実施される可能性が高いため、3カ月〜1年物国債の利回りは他を上回っている状態です。
償還期限が短いこれらの債券に関しては、下の【図表3】を見ると分かるように、金利リスクが最小限となっています」
【図表3】足元(11月13日時点)の3カ月〜1年物米国債は高利回りで低リスク。黄土色の点は残存期間1単位(1年)当たりの利回り(右軸)、濃緑は残存期間に対する最低利回り(左軸)。
State Street Global Advisors
短期債および投資適格債へのエクスポージャーを取る上場投資信託の例として、「ゴールドマン・サックス米国債0〜1年アクセスETF」「SPDRポートフォリオ短期社債ETF」が挙げられる。
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第3の戦略は「見捨てられた市場、すなわち過小評価され割安感のある市場に注目する」ことだ。
ひと口に割安と言っても、いくつかの意味合いが含まれるが、アローン氏がまず挙げるのは、バリュエーションが魅力的な米国株以外の株式だ。
「米国株以外の株式は、2023年の予想株価収益率(PER)が12.17倍で、過去平均の14.94倍を2割下回っています」
その一方、米国株については、依然として過去平均を上回るバリュエーションが続いている。
ただし、米国株の中にも割安な銘柄はあるとアローン氏は指摘する。例えば、小型株がその好例だ。エマージング(新興国)市場をはじめ世界のさまざまな市場についても同じことが言える。
下の【図表4】を見ると、過去平均に対して割安価格で取引されている市場が分かる。
【図表4】過去平均に対する割安感について、市場別のバリュエーションを比較。グロース・バリューを問わず米大型株は過去平均の7〜9割、米中小型株やアジア太平洋株は過去平均の1〜2割で取引されている。
State Street Global Advisors
アローン氏によれば、半導体銘柄も歴史的割安水準で取引されている【図表5】。
【図表5】魅力的な水準で取引される半導体銘柄。ハイテクセクターが市場平均(左から2番目)やS&P500種平均(右端)に対して8割程度で取引されているのに対し、半導体業界は市場平均(左端)およびS&P500種平均(右から2番目)に対し2〜4割程度となっている。
State Street Global Advisors
割安感のある多様な市場へのエクスポージャーを取る手段としては、「SPDRポートフォリオS&P600種小型株ETF」「シュワブ・エマージング・マーケッツ・エクイティETF」「ヴァンエック半導体ETF」が挙げられる。
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※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。
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