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概要:東欧地域の消費者は、クリスマスに伝統的な食材をテーブルに並べるために最大限の節約を強いられている。特にハンガリーやバルト諸国で食品価格が跳ね上がり、その上昇ペースは欧州連合(EU)全体をはるかに上回っているからだ。
[ティサエスラール(ハンガリー) 7日 ロイター] - 東欧地域の消費者は、クリスマスに伝統的な食材をテーブルに並べるために最大限の節約を強いられている。特にハンガリーやバルト諸国で食品価格が跳ね上がり、その上昇ペースは欧州連合(EU)全体をはるかに上回っているからだ。
東欧地域の消費者は、クリスマスに伝統的な食材をテーブルに並べるために最大限の節約を強いられている。写真はブダペストの市場で3日撮影(2022年 ロイター/Marton Monus)
EU統計局によると、ハンガリーの10月の食品価格は前年比45.2%上昇。東欧のEU加盟10カ国の上昇率も20%を超える。リトアニアとラトビアはそれぞれ33.3%と30%だった。
一部の国では物価全般はピークを付けた可能性があるものの、食品価格はなお力強く上昇を続けており、生活費をさらに圧迫している。これらの国の中央銀行は、経済が急減速し始めているにもかかわらず、政策金利を高水準に維持せざるを得ない。
複数の専門家の話では、食品価格はエネルギーや肥料の高騰という世界的要因だけでなく、食品産業の低い生産性や輸入依存度の高さ、労働需給ひっ迫に伴う賃金の大幅上昇という東欧固有の事情によって押し上げられている面もある。
ハンガリーの場合、今年は深刻な干ばつのためにトウモロコシや小麦の収穫が激減し、家畜飼料の価格が一気に上昇したばかりか、通貨フォリントの下落で輸入物価も上がるという「弱り目にたたり目」の状況となった。
東部ティサエスラールで国宝に指定されている「マンガリッツァ豚」2000頭余りを飼育しているラヨス・カンデルさん一家にもその影響が及んでいる。この養豚場は従来、トウモロコシと小麦を自家栽培して飼料に回してきたが、今年は干ばつのせいで飼料の購入を余儀なくされた。ところがトウモロコシと秋小麦の価格は、昨年の2倍近かったという。
カンデルさんは「飼料を買わないといけないので来年はとても厳しい局面になる」と語り、電気料金や賃金、獣医の診察代もかさんでいると付け加えた。
例えば養豚場が支払う電気料金を見ると、年末までの契約はキロワット時(KWh)当たり29フォリントだが、その後は同138フォリントに上がる見込み。豚のワクチン接種料金は年間で450万フォリントと3倍に膨らんだ。
カンデルさんは豚の卸値をおよそ20─25%引き上げたとはいえ、これ以上コストが増大しても価格に転嫁するのは難しくなると話す。「業者側がある程度コストを負担して今の状況を乗り切るしかない。本音を言えばキロ当たり2000フォリントにしたい。(しかし)それでは誰も買ってくれない」と打ち明けた。
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ハンガリーの11月消費者物価指数(CPI)は8日に発表される予定。こうした食品価格が主導する形で前年比上昇率は22.2%に加速すると見込まれている。燃料価格上限の撤廃もあり、今後さらに上振れる流れだ。
チェコの10月CPIは前年比上昇率が15.1%に鈍化したものの、食品は値上がりした。ポーランドでも食品とアルコール以外の飲料は11月の前年比上昇率が22.3%と、CPI全体の17.4%を上回った。
ハンガリー国立銀行(中央銀行)のマトルチ総裁は5日、来年の物価上昇率は平均15-18%で推移し、上昇分の半分以上は食品が占めるとの見通しを示した。
マトルチ氏は「ハンガリーの食品産業は受け入れがたいほどの低い生産性で操業しているし、競争がない。輸入比率は高く、投入されるエネルギー費用は増大している」と指摘した。
<貧しいクリスマス>
物価高騰で消費は冷え込み始めた。
ハンガリーの10月の食品売上高は5.6%減少。食肉・魚介が前年比34%、パンが同80%も値上がりし、各家庭が節約モードに入ったためだ。チェコでは砂糖が105%、ポーランドでは小麦が45.4%も上がっている。
ブダペストの市場では75歳のエバ・ラーツさんが、今年はクリスマス用の鯉を買う余裕がないと嘆いていた。ハンガリーでは昔から鯉料理でクリスマスを祝う習慣がある。
自身と夫の2人で毎月20万フォリント(507.74ドル)の年金を頼りに生活しているラーツさんは「私たちの年金はわずかで、まず光熱費と薬代を払う必要がある。だからいつもより貧しいクリスマスになるだろう」と語り、一体いつまでこんな境遇が続くのかと絶望的な気持ちになると付け加えた。
ある調査によると、ポーランドの人々が今年のクリスマスに使う費用は平均で1259ズロチ(281ドル)と1年前より307ズロチ増えた。だが回答者のほぼ半数は、節約のためにより安い商品を買うと述べた。
ハンガリーのCPI前年比上昇率は来年前半になって減速するが、そのペースは非常にゆっくりにとどまる見通し。ゴールドマン・サックスは「ハンガリーで物価情勢が改善していることを示す持続的な兆候はまだ見えていない」と分析した。
(Krisztina Than記者)
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