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概要:南アフリカ最大都市ヨハネスブルクに暮らすストリートミュージシャンのトーマス・ナサベルさんは、あるショッピングモール内の駐車場の料金支払機の横で、10年以上も演奏を続け、買い物客からギターケースに小銭を投げ入れてもらう日々を送ってきた。
[ヨハネスブルク 12日 トムソンロイター財団] - 南アフリカ最大都市ヨハネスブルクに暮らすストリートミュージシャンのトーマス・ナサベルさんは、あるショッピングモール内の駐車場の料金支払機の横で、10年以上も演奏を続け、買い物客からギターケースに小銭を投げ入れてもらう日々を送ってきた。
南アフリカ・ヨハネスブルクのストリートミュージシャン、トーマス・ナサベルさんは、買い物客からギターケースに小銭を投げ入れてもらう日々を送ってきた。しかしこの1─2年で稼ぎは激減している。駐車場に新しくキャッシュレス決済システムが導入され、カードで料金を支払う客が増えたためだ。写真はヨハネスブルクで2018年11月撮影(2022年 ロイター/Siphiwe Sibeko)
しかしこの1─2年でナサベルさんの稼ぎは激減している。駐車場に新しくキャッシュレス決済システムが導入され、カードで料金を支払う客が増えたためだ。中には、ナサベルさんに小声で謝りながら通り過ぎる人もいる。
ナサベルさんはギターを鳴らしながら「モールにキャッシュレス決済の機械が入って以来、投げ銭収入はおよそ半分になってしまった。多くの人はもう現金を持ち歩きたくないと思っている」と悲しげに話す。
犯罪が横行する南アでは、コロナ禍も加わってキャッシュレス決済の利用が増加している。カードやスマートフォンをタップしたり、QRコードを読み取ったりする方が、現金をやり取りするよりも便利で安全、清潔とみなされた点がその理由だ。一方でこうした流れは、公的に定められたさまざまな枠組みに参加できない人々が活動する領域である「インフォーマル経済」を犠牲にしている面もある。
アナリストの話では、キャッシュレス化は確かに中小企業の売上高押し上げに貢献してきた。だがストリートミュージシャンや露天商、客からのチップを受け取るガソリンスタンド店員など少額の現金に依存してきた人々は、収入が大打撃を受けたと悲鳴を上げている。
プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の報告書によると、アフリカで2020年に590億件だったキャッシュレス取引は2030年までに3倍近く増え、1720億件に達する見通しだ。
ナサベルさんは、1人の客から1ランド(約8円)硬貨をギターケースに落としてもらいながら、トムソンロイター財団に対して「私たちは技術が事態を変えていくのを受け入れなければならない。でもキャッシュレスで収入がなくなるのが怖い」と打ち明けた。
<さらなる拡大阻む壁>
南アではスマホ普及率が過去4年で48%から78%に上昇し、2011年に54%だった15歳超の銀行口座保有者の割合も21年には84%まで高まったことが、世界銀行のデータで分かる。
これで南アにキャッシュレス決済に向けた強力な土台が形成された、と非接触型のQRコード決済アプリ「スナップスキャン」のクリエイティブディレクター、マイケル・トムソン氏は指摘した。同アプリは国内の7万店で利用可能で、ダウンロード数は300万に上る。
もっともさらなるキャッシュレス化を阻む要素も幾つか残っている。ヨハネスブルク大学の調査では、南アの女性は他のアフリカ諸国に比べると銀行口座保有の割合が高いとはいえ、金融知識の欠如や差別的な扱いのために今も銀行サービスを全面的に活用する機会を得られていない。
キャッシュレス決済には銀行口座、携帯電話の電話番号、インターネットアクセス、デジタルの知識が欠かせないが、身分証明書もしくはスマホを持たない移民、ホームレスなどはこれら全てをそろえることもできない。
PwCの戦略・決済チーム責任者チャンタル・マリッツ氏は「正式な決済システムとその技術革新は低所得層や開発が遅れている経済セクターよりも、高所得層に活用される傾向がある」と述べた。
ところがワールドエコノミクスのデータに基づくと南ア経済の3割近くはインフォーマル経済に属する。
マリッツ氏は、銀行口座を持つ南ア国民の25%、830万人はそのサービスをフルに利用できない「アンダーバンクト」の状況に置かれていると指摘。「デジタル決済に銀行口座は必要ないとはいえ、露天商やストリートミュージシャン、物乞いなどもデジタルマネーを保管して決済手続きをするための価値保存手段は欠かせなくなる」と付け加えた。これには銀行にひも付けされたe-ウォレットなどが含まれるだろう。
<現金のありがたみ>
ガソリンスタンド店員もキャッシュレス化で困り果てている。今は、客の車にガソリンを入れ、窓ガラスをきれいに拭いた後、カード支払いを希望されれば、決済端末を持って行かなければならない。
ヨハネスブルクのスタンドで働くレボギャング・ラマソカさんは「ドライバーはタップしてすぐに去りたがる。カード決済の場合、チップが常に支払われるわけでないため、われわれにとって好ましくない事態だ」と嘆き、以前は毎月の賃金の3割相当以上ものチップをもらえていたと説明した。
ラマソカさんによると、最近は一部のスタンドで客がカード支払い時にチップを上乗せできるようにしているが「カード機械自体にチップを加算したいかどうかをたずねる選択肢を組み込むべきで、そうすれば私たちがわざわざ口頭で客にお願いするより気まずくならないで済む」という。
足元ではキャッシュレス化促進を狙って、続々と新たな決済手段も登場している。特定の携帯電話番号に送金できるファースト・ナショナル・バンクのe-ウォレット、スナップスキャンやザッパーのQRコードアプリ、ブルートゥースでスマホとつながる小型決済端末のヨーコーなどだ。
南アの25万社が利用するヨーコーは無料で無制限の4Gデータ通信とWiFi接続サービスも提供しており、決済手数料は3%弱。
スナップスキャンのトムソン氏は、最終的に銀行口座やデジタルウォレット、SIMカードの確保に必要な身元と居住地の確認書類がもっと簡単に手に入るようになれば、社会の片隅に追いやられている人たちにとってもキャッシュレス決済の扉は開かれていくとの見通しを示した。
それでもラマソカさんのようなガソリンスタンド店員は、キャッシュレス決済でこの世から現金を一掃されないことを切実に願っている。
「人々の財布のひもは固く、カードを端末にくぐらせるよりも持ち合わせの硬貨を手渡す方がハードルは低い。そうした硬貨がなくなれば、私たちはとても苦しくなるのではないか」とラマソカさんは心配する。
(Kim Harrisberg記者)
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