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概要:日本人は不確実性を嫌い白黒つけたがる「OR思考」の傾向があるため、「AかBか」という発想になりがちだと元リクルートの中尾隆一郎さんは指摘します。しかしビジネスでは、AとBの強みを理解していいとこ取りをする「AND思考」のほうが圧倒的に生産性が高められるといいます。
Andrii Zastrozhnov/Getty Images
異文化理解のフレームワーク「ホフステードの6次元モデル」をご存知ですか? オランダの社会心理学者ヘールト・ホフステード氏が自身の研究をモデル化したもので、国ごとに異なる文化を6つの尺度で比較したフレームワークです。
その6つの尺度の1つに「Uncertain Avoidance(UA:不確実性の回避)」というものがあります。
日本はこのUAが世界で(ギリシャ、ロシア、ベルギーに次いで)4番目に高いとされています。UAが高いとは、不確実なこと、曖昧なことを嫌う文化だということです。
不確実なことが嫌いなので、白黒つけたい。不確実性が脅威と映るので、取り除くためにルールや規則をつくりたくなります。
しかも日本はそこに達成志向の強さが加わって、「How」を決めてプロセス通り例外なく進めたがります。裏を返すと、日本では「AND」の発想で物事を考えるのが得意ではない。みなさんの職場を見渡してみても、そういう傾向があるのではないでしょうか。
なぜこんな前振りをしたのかというと、コロナのパンデミックも終焉が見えてきた今、「スタッフは原則出社にすべきか、在宅勤務を基本とすべきか」という議論があちこちから聞こえてくるからです。
イーロン・マスクはテスラとスペースXのスタッフに原則出社を伝えたそうです。日本でもホンダは原則出社の一方で、NTTグループは原則在宅勤務という方針だそうです。私の周りでも、仕事はやはり対面のほうがいいという声をよく聞きます。
やはりここでも「OR思考」なのです(ちなみにマスクは南アフリカ出身のアメリカ人ですが、両国ともUAは高くありません)。
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全国に散らばるスーモカウンターを束ねられた理由
私は15年ほど前から、テレビ会議で仕事をし続けています。この仕事スタイルの原点は、リクルート時代に全国に拠点があるスーモカウンターという店舗ビジネスの責任者だったときの経験です。
メンバーは全国に散らばっているため、全メンバーとリアルに会えるのは3カ月に1回、全国から全メンバーを東京に集めて行うキックオフミーティングのときだけでした。
私はこの経験をした15年前の時点で、コミュニケーションには3種類あるという整理をしていました。同期コミュニケーション2種類と、非同期コミュニケーション1種類です。
(A)時間と場所を同期させる必要がある「リアルミーティング」
参加者全員の「場所」と「時間」を一致させる必要がある。調整が難しい。
濃厚なコミュニケーションができる(はず)
(B)時間を同期させる必要がある「オンラインミーティング」
参加者全員の「時間」を一致させる必要がある。調整は(1)より容易
そこそこ濃厚なコミュニケーションができる(はず)
(C)時間と場所の制約がないSlackなどの「非同期コミュニケーション」
参加者の「時間」も「場所」も一致させる必要がない。調整は不要。
軽いコミュニケーションはできる(はず)
同じ時間を使うことができれば、濃厚なコミュニケーションは、A>B>Cの順番になります。しかし、調整の手間などはC>B>Aが楽です。
また、一般的にAは本社などで実施することが多いため、本社勤務の人にとっては「場所」を移動する必要はなく、負担は「時間」だけです。しかし支社勤務の人はAに参加するために移動しなければいけませんし、育児や介護など時間の制約がある人にとってはAへの参加はハードルが高く、Bでさえ通常勤務時間外に実施されると参加が難しいものです。
つまり時間や場所の制約がある人にとっては、C>B>Aの順で優しいと言えます。
前述のように私が担当していた組織は全国に拠点があったうえに、仕事のかたわら育児や介護をしている人も少なくありませんでした。
そこで私は、次のような順番でマネジメントすることにしたのです。
可能なかぎりC(非同期コミュニケーション)で対応する
Cではできないものは、可能なかぎりB(オンラインミーティング)で対応する
上記2つに当てはまらないものにかぎり、A(リアルミーティング)で対応する
つまりA、B、Cそれぞれの強みを理解した上で、「A or B or C」ではなく「A and B and C」というように組み合わせることにしたわけです。
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真にリアルでなければならないミーティングとは?
その中で私が当時悩んだのは、「A(リアルミーティング)でなければできないことは本当にあるのか?」ということでした。
私たちは当時、リクルート内で最もC(非同期コミュニケーション)を活用していた組織でした。さらにB(テレビ会議)も活用しまくっていました。
その経験からいくと、確かにAができればそれに越したことはないものの、Aでなくてもどうにか進めることはできていました。単純にコストのことだけを考えれば、3カ月に1度全国からメンバーを東京に呼び集めるのをやめたほうが大幅なコスト削減になることは明らかです。
しかし私は、最終的にこの3カ月に1度の対面でのキックオフミーティングを続けることにしました。この判断は、店舗ビジネスの“大先輩”ともいうべきコンビニエンスストアを研究したうえでのことです。
多くのコンビニチェーンがある中で、トップシェアで他ブランドよりも10万円以上日商が多いブランドだけ、毎月スーパーバイザーを全国から集めて、戦略や方針を徹底的に共有していたのです。これはリアルでないとできないことがある証拠だと感じました。
これを私たちのスーモカウンター事業に置き換えると、戦略などを変更する際の徹底・浸透、つまり「戦略のニュアンスを共有する」場面ではリアルのほうが向いている、という感覚でした。また、戦略を実行するためのロールプレイングなどもリアルで実施する方が浸透・定着がスムーズでした。
こうしたことはビデオなどでも実施しようと思えばできますし、B(テレビ会議)でもかなりの部分は代替できます。しかしイノベーションを生み出したい場合、リアルで会った時の「偶然の出会い」や「セレンディピティ」は、BやCでは代替できません。
勤務地が異なる従業員が、ミーティングの合間の休憩時間や会議後の飲み会などで交わした雑談の中に、実はイノベーションのタネがあったりするものです。それをあらかじめ意図してミーティングを設計していたわけではありませんが、結果的にこうしたセレンディピティはかなりの頻度で起きていました。
偉い人ほど「リアルでなくちゃ」と言う理由
一方で、常にA(リアルコミュニケーション)を求めてくる人たちもいました。C(非同期)などはもってのほかで、B(テレビ会議)でも物足りず、「やっぱり仕事はリアルでなくちゃ」と言う人たちです。
こういうタイプの人たちは、傾向としては本社や本部の「偉い人」に多く見受けられます。彼らはある意味、強者なのです。時間も場所も制約がなく、必要なら自分の部屋や会議室に部下をいつでも呼べるわけですから。
しかしこういう人は、自分ができるからといって他者もできるだろうと考えるのは配慮が足りません。
地方から東京の本社や本部へ出張してくる人は、たった数時間のリアル会議(A)のために、同じくらいの時間をかけてやってきます。もちろん、それに値するだけの濃い内容の会議であればいいのですが、必ずしもそうでないケースもあるのではないでしょうか。
「でも支社の人から文句が出たことはない」と言うかもしれませんが、支社の人にしてみればそこで文句は言いづらいでしょう。言うと嫌われちゃうからです。
私たちはついついUAを避けようとOR思考で物事を考えがちですが、A(リアル)かB(オンライン)かは本来、OR思考で検討すべきものではありません。
今回のケースであれば、C(非同期)でできることはできるだけ実施し、それでもダメならB(オンライン会議)→A(リアル会議)、というように、AND思考でA〜Cを組み合わせればいいのです。
AND思考の重要性が当てはまるのはミーティングに限ったことではありません。何にでも白黒つけようとせずAND思考を意識的に使うことで、コロナ禍以前よりも進化した働き方を実現できるのではないでしょうか。
なお、非同期の会議の仕方を学びたい方は以下の記事も参照してみてください。
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(連載ロゴデザイン・星野美緒、編集・常盤亜由子)
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「自律思考」を鍛える の記事一覧
中尾隆一郎:中尾マネジメント研究所代表取締役社長。1989年大阪大学大学院工学研究科修了。リクルート入社。リクルート住まいカンパニー執行役員(事業開発担当)、リクルートテクノロジーズ社長、リクルートワークス研究所副所長などを経て、2019年より現職。株式会社「旅工房」社外取締役、株式会社「LIFULL」社外取締役、「ZUU」社外取締役、「LiNKX」株式会社非常勤監査役、株式会社博報堂テクノロジーズ フェロー、TEPCOフロンティアパートナーズ投資委員も兼任。新著に『1000人のエリートを育てた爆伸びマネジメント』『世界一シンプルな問題解決』がある。
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