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概要:米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は今、3つの任務を背負っている。つまりインフレの制御と最大雇用追求、そして世間一般から嫌われるのを甘受することだ。FRBは27日、政策金利を6月に続いて75ベーシスポイント(bp)引き上げることを決めた。2カ月合計の利上げ幅は41年ぶりの大きさだ。今後さらに大幅な利上げをすれば、米経済は景気後退(リセッション)に突入しかねない。しかしパウエル氏はFRB議長として、とにかく利上げを断行する使命があるし、そのための政治的な資源も確保している。
[ワシントン 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は今、3つの任務を背負っている。つまりインフレの制御と最大雇用追求、そして世間一般から嫌われるのを甘受することだ。FRBは27日、政策金利を6月に続いて75ベーシスポイント(bp)引き上げることを決めた。2カ月合計の利上げ幅は41年ぶりの大きさだ。今後さらに大幅な利上げをすれば、米経済は景気後退(リセッション)に突入しかねない。しかしパウエル氏はFRB議長として、とにかく利上げを断行する使命があるし、そのための政治的な資源も確保している。
7月27日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長(写真)は今、3つの任務を背負っている。ワシントンで撮影(2022年 ロイター/Elizabeth Frantz)
FRBの急速な引き締めによって、米経済は岐路に立たされている。現在の政策金利は2.25─2.5%にまで高まった。だが物価が何十年ぶりもの高い伸びのままか、あるいは一段と上振れるなら、さらに利上げが行われて経済成長を押しつぶしてしまう恐れが出てくる。アトランタ地区連銀が算出した指標によると、投資家はFRBが来年中には利下げを迫られるとみている。確かに来年までに経済成長が著しく減速するか、足元で3.6%の失業率が例えば5%を超える水準まで上昇するならば、利下げが現実になってもおかしくない。
米国民は既に痛みにさらされている。住宅ローン金利は上がり、クレジットカード・ドット・コムが20日に発表した新規クレジットカード向け平均金利(年利)は2011年以降で最も大きく上昇。小売り大手ウォルマートの買い物客は必需品以外の購入を手控えつつある。
ではパウエル氏が金融を引き締め過ぎた場合には、どんなコストが生じるのか。同氏自身はさほど打撃を受けない。何か不正でも行わない限り、2028年まで辞めさせることは不可能だ。同氏は議会の幅広い支持も得ている。5月に上院で実施されたFRB議長再任承認に関する投票では、99人の議員のうち80人が賛成した。歴代のFRB議長に比べて、議会とより実のある対話も行ってきた。議長に就任した2018年、同氏は100人近い議員と面会しており、前任のジャネット・イエレン氏の就任初年(22回)よりずっと多いことが、公式記録から分かる。
もちろん政治家は別のやり方でFRB議長にしつこく不平不満をぶつけることはできる。かつてFRB議長として実効政策金利を19%超まで引き上げ、1980年代に2回のリセッションをもたらしたポール・ボルカー氏は、議会でさまざまな弾劾要求決議に直面。1982年には当時のジム・ライト民主党下院院内総務がボルカー氏に辞任を要求した。
この種の動きがまた出てくれば、パウエル氏の仕事も難しくなるだろう。議長再任に反対した1人である民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は27日、CNBCテレビで一連の大幅利上げが大量の失業者を生み出す恐れがあると発言した。誰であっても、将来起こり得るリセッションの責任を追及されたくなどない。それでもインフレが脅威となり続ける間は、パウエル氏は批判を恐れて利上げをためらってはならないし、ためらう必要はない。
●背景となるニュース
*米連邦準備理事会(FRB)は27日に終わった連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を75ベーシスポイント(bp)引き上げ、2.25─2.5%とすることを決めた。6月から2会合連続の75bp利上げ。アトランタ地区連銀が算出する指標によると、投資家はFRBが来年中には利下げを開始する必要が出てくるとみている。
*6月の米消費者物価指数(CPI)前年比上昇率は9.1%と、1981年以来の高い伸びだった。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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