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概要:政府が近く発表する2023年度予算の概算要求基準は、岸田文雄政権が掲げる看板政策などで歳出の目安を示さず、例年以上に形骸化した姿となる。年末にかけた予算編成過程で検討する歳出項目も多く、要求を丸のみすれば歳出はさらに膨らみかねない。歳出・歳入両面での財政改革が守勢に立たされるのは必至の情勢だ。
[東京 28日 ロイター] - 政府が近く発表する2023年度予算の概算要求基準は、岸田文雄政権が掲げる看板政策などで歳出の目安を示さず、例年以上に形骸化した姿となる。年末にかけた予算編成過程で検討する歳出項目も多く、要求を丸のみすれば歳出はさらに膨らみかねない。歳出・歳入両面での財政改革が守勢に立たされるのは必至の情勢だ。
政府が近く発表する2023年度予算の概算要求基準は、岸田文雄政権が掲げる看板政策などで歳出の目安を示さず、例年以上に形骸化した姿となる。都内のオフィス街で2020年12月撮影(2022年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
<特別枠に4.5兆円>
概算要求基準は与党などとの調整も踏まえ、29日に閣議了解する。基準に沿って各省庁からの予算要求を8月末に締め切り、予算編成作業に着手する。
ロイターが入手した概要によると、今回の予算要求基準でも既定予算の見直しに応じた「重要政策推進枠」を設ける。特別枠では、1)人への投資、2)科学技術・イノベーション、3)スタートアップ、4)グリーン・デジタル化――を柱とする要求上乗せを容認し、政権が掲げる新しい資本主義実現に備える構えだ。
各省庁の裁量で使える裁量的経費を原資に、4.5兆円規模の特別枠を講じる枠組みは今回も変わらない。前年度分(22年度は14.9兆円)から裁量的経費を10%減らせば、削減額の3倍を特別枠に要求できる仕組みとする。
前年度に13.3兆円だった人件費などの義務的経費(コロナ予備費を含めた場合は18.3兆円)でも、削減額に応じ特別枠への要求を認める、としている。
歳出の見直しでは、国が地方自治体に配る地方交付税交付金や、年金・医療などの社会保障費も含め「聖域を設けることなく施策・制度を抜本的に見直す」ことも、併せて明記する。
<予測不能な事項要求>
ただ、新型コロナウイルスの流行拡大や、原油・物価高の動向が見通せないなどの理由で事項要求を認める分野も多い。
23年度の概算要求基準では、新型コロナ感染対策や物価高対策も含めた重要施策については「重要政策推進枠や事項のみの要求も含め、適切に要求・要望を行い、予算編成過程において検討」するとし、歳出の目安を設けていない。
引き続き経済・財政一体改革を推進する考えも明記するが、一方で「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならないとの方針を踏まえ措置する」とも記す。
焦点となる防衛力強化では、国家安全保障戦略や防衛計画の大綱改定を踏まえ、新たに策定する中期防衛力整備計画を反映させるため、結論を得て必要な措置を講じる構え。
中期防衛力整備計画に加え、少子化対策・子ども政策やGX(グリーン・トランスフォーメーション)への投資にかかる各分野の経費は「骨太で示された方針を踏まえ、予算編成過程において検討」すると追記する。
<「十分精査」と財務相>
概算要求基準の閣議了解に先立つ26日の会見で、鈴木俊一財務相は「(事項要求については)防衛費に限らず、今までもあった。これまでも予算編成過程で精査のうえ、各省庁と必要な調整を行ってきている」と述べた。
その上で「内外の重要課題にしっかり取り組みながら経済再生と財政健全化を進めていくため、各省庁の柔軟な要求を認めつつ、予算の中身を大胆に重点化するものとなるよう、(基準案の)検討を進めていく」とも強調した。
一方、防衛予算を巡って自民党の茂木敏充幹事長は25日の講演で「年間5兆円台半ばの防衛費について6兆円台半ばまでもっていく」と言及。今後3年間で4000億円を投じる人への投資に関しても「率直に言うと少ない」と述べ、さらなる増額に含みを持たせた。
政府内には「物価高対策の追加に防衛費増額、こども家庭庁創設に伴う関連予算増額となれば、年末にかけ税負担のあり方を詰める必要がある」(財務省幹部)との声もあるが、政権与党からの歳出圧力は強く、歳出ありきの予算編成となる懸念は拭えない。
(山口貴也、金子かおり 編集:石田仁志)
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