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概要:7月15日に欧州委員会が夏季経済見通しを公表し、ユーロ圏の実質国内総生産(GDP)成長率について、2022年はプラス2.6%と、下方修正された前回5月分(同2.7%)からさらに引き下げられている。
[東京 15日] - 7月15日に欧州委員会が夏季経済見通しを公表し、ユーロ圏の実質国内総生産(GDP)成長率について、2022年はプラス2.6%と、下方修正された前回5月分(同2.7%)からさらに引き下げられている。
ユーロ圏は通貨安に悩んでいる。20年ぶりのパリティ(1ユーロ=1ドル)割れからは早々に復帰しているものの、軟調地合いが継続していることには変わりなく、それ自体がインフレリスクを高める一因になり得る。
今年2月の冬季見通し、同5月の春期見通し、そして今回の夏季見通しを経てプラス4.0%─同2.7%─同2.5%と年初時点からは1.5%ポイントも切り下げられたことになる。2023年に関して同様の軌道を見るとプラス2.8%─同2.3%─同1.4%となっており、年初時点からは1.4%ポイントの切り下げ幅となった。
春期見通しからの段差で言えば、2023年の傷が深くなっていることが印象的である。これはひとえにインフレが想定以上に長引くことで金融引き締めの度合いが強まること、それに付随して(インフレもあいまって)消費・投資意欲が削がれることの結果である。
<7-9月期にインフレはピークを付けるのか>
ユーロ圏消費者物価指数(HICP)の見通しに目をやれば、2022年がプラス7.6%(前回は同6.1%)、2023年は同4.0%(同2.7%)と大幅に予測の上方修正が行われている。今回の予測ではピークが今年7─9月期でプラス8.4%とされ、2023年末には同3%を割り込んでくることになっている。
米国同様に「インフレは7─9月期がピーク」との想定が本当に的中するかが年内の焦点となる。それが確認できる今年10月以降の金融政策運営を見なければ、2023年の経済・物価情勢に関しては何も言えないというのが実情だろう。真っ当に考えれば、今年秋以降に欧米ともにベース効果はく落が見込め、こうした予想が最も説得力を持つようにみえる。
<ユーロ相場の想定は崩れ始めている>
ただ、ユーロ圏は米国にはない悩みが浮上している。それはユーロ安だ。20年ぶりのパリティ(1ユーロ=1ドル)割れからは早々に復帰しているものの、軟調地合いが継続していることには変わりなく、それ自体がインフレリスクを高める一因になり得る。
今回の欧州委員会予測では、ユーロ/ドル相場の予測に関し「2021年が1.18ドル、2022年が1.06ドル、2023年が1.05ドル」と想定している。
また、ユーロの名目実効相場(NEER)に関しては「2021年がプラス1.2%、2022年がマイナス3.9%、2023年がマイナス0.4%」と想定されている。
2022年の現状に目をやれば、本稿執筆時点でユーロ/ドルは平均1.09ドル、NEERは平均マイナス3.6%で推移しており、ユーロ安は想定の範囲内」と言い張ることはできる。
もっとも、最近のユーロ安傾向の最中に発表された予測なので、想定と実績のかい離は小さくなるように設定されているのは当然でもある。予測作業においてこの種の想定はギリギリまで修正可能にしているはずである(なお、筆者は欧州委員会経済金融総局で当該作業に携わっていたことがある)。
だが、図表にしてみると良く分かるが、ユーロ/ドル相場にしても、NEERにしても、売りが本格的に加速したのは今年4月以降である。年初来6カ月間のうち前半3カ月は安定していたが、後半3カ月は下げ足を速めており、7月に入ってからはさらに性急なペースになったという実情がある。この構図が続けば、ユーロ安によってインフレ予測が振れる可能性も出てくるはずである。
実際、7月13日にビルロワドガロー仏中銀総裁はフランス国内のラジオインタビューで、ユーロ安に関して「輸出企業の後押しになるため経済活動には朗報だが、残念なことにインフレをやや押し上げる」、「インフレに意味を持つため注視している」と述べている。為替市場の安定を明示的に政策目的とはできないものの、政策反応関数において重要な変数になりつつあるのは間違いない。
<ECBにとってのユーロ安の影響>
ECBが2007年8月に発表したワーキングペーパー『The impact of exchange rate shocks on sectoral activity and prices in the Euro area』では、1%のユーロ高は1年後(4四半期後)のユーロ圏消費者物価指数(HICP)を0.07%ポイント押し下げるとの試算が示されている。
また、2014年3月6日の理事会後の記者会見においてドラギ元ECB総裁が「実効(NEER)ベースで10%のユーロ高はインフレ率を0.4─0.5ポイント下押しする」と述べたこともあった。ラフに言えば、NEERが「1%変化すれば0.05%ポイント程度、1年後のHICPを動かす」というのがイメージになるだろうか。
この点、今年4月以降のNEER(日次)について前年比変化率を見ると平均12%程度で下落が続いていることが分かる。上記試算に沿って考えれば、1年後の2023年4─6月期のHICPはユーロ安効果だけでプラス0.5─0.6%ポイント押し上げられる可能性がある(もちろん、その他条件が一定ならば、の話である)。
もっと言えば、直近のNEERは15%のペースで下落が続いており、この地合いを放置すればHICPの制御を困難にする状況も想起される。ビルロワドガロー総裁に限らず、今後、複数のECB高官が同様の論点を槍玉に挙げてくる可能性は否めないだろう。
それは利上げ幅の拡大やバランスシートの縮小といった正常化のアクセルを踏む合図として解釈できるはずである。脆弱国の利回りが騰勢を強めるという市場分断化の対応に苦慮するECBは、その点については局所的な「ハト派」を演じなければならないが、為替市場におけるユーロ売りを制御するにあたってはやはり「タカ派」を押し出せねばならないという極めて難しい立場に置かれている。
ラガルドECB総裁は5月の「ブログ騒動」でマイナス金利解除を表明し、6月は緊急政策理事会を開催して何も決定しないなど、コミュニケーションが荒れている印象がある。市場との意思疎通がうまく行っていない中で、はっきりと何がしたいのかを発信する必要性は増しているように見える。
7月21日の政策理事会は25bpの利上げと、分断化対応を企図した再投資柔軟化や新枠組み発表がメインシナリオとなるが、ラガルド総裁の会見でユーロ安とインフレの関係にどのような言及があるのかも見どころの1つではないかと筆者は考えている。
編集:田巻一彦
(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*唐鎌大輔氏は、みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミスト。2004年慶應義塾大学経済学部卒業後、日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。06年から日本経済研究センター、07年からは欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向。2008年10月より、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。欧州委員会出向時には、日本人唯一のエコノミストとしてEU経済見通しの作成などに携わった。著書に「欧州リスク:日本化・円化・日銀化」(東洋経済新報社、2014年7月) 、「ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで」(東洋経済新報社、2017年11月)。新聞・TVなどメディア出演多数。
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