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概要:梅雨明け直後の外国為替市場で歴史的なスイスフラン高・円安が進んでいる。6月29日には一時143円76銭と1980年5月以来、約42年1カ月ぶりの高値を記録する場面があった。
[東京 12日] - 梅雨明け直後の外国為替市場で歴史的なスイスフラン高・円安が進んでいる。6月29日には一時143円76銭と1980年5月以来、約42年1カ月ぶりの高値を記録する場面があった。
7月12日、梅雨明け直後の外国為替市場で歴史的なスイスフラン高・円安が進んでいる。6月29日には一時143円76銭と1980年5月以来、約42年1カ月ぶりの高値を記録する場面があった。写真は1000フラン紙幣。2019年4月、チューリヒの銀行で撮影(2022年 ロイター/Arnd Wiegmann)
<40年ぶりに見る140円台のスイスフラン/円>
その後はようやく頭打ちになり、歴史的な高値圏での利益確定売りが優勢になると自律反落に転じたが、138円台では押し目買いも確認されて下げ渋り、40年以上ぶりにみる「140円アラウンド」のレベルを維持して次の方向感を模索中だ。
近年のスイスフラン/円相場の足跡を振り返ると、2015年1月にスイス国立銀行(SNB)が前日まで続けていたフラン売り・ユーロ買いの無限介入を突然やめると市場に通告、スイスフラン/円が1日2割を超える暴騰を記録した時ですら、ローソク足の上ヒゲの先端は139円14銭付近でストップしている。
今から42年1カ月前、1980年5月当時の筆者は、まだ中学生だった。88年に社会人になった後、為替予想の職責を負うようになったのは22年ほど前なので、140円を超えるスイスフランを目撃したのは初めてsだ。現役で活躍している為替市場関係者の大半にとって「140円超のスイス/円」は初見の領域だったに違いない。
<きっかけはSNBの利上げ>
スイスフラン/円はなぜ、こんなにも値上がりしているのか──。きっかけはスイス中銀(SNB)による予想外の利上げだった。6月16日にSNBは大半の市場関係者が全く予想していなかったタイミングで2007年9月以来、約15年ぶりとなる利上げを決定。マイナス0.75%の政策金利を翌日からマイナス0.25%へ一気に引き上げる方針をアナウンスした。
一方、SNBが政策金利を引き上げる当日の17日に日銀は金融政策決定会合の声明文を公表、短期金利の誘導目標を水準をマイナス0.1%に据え置く一方、長期金利の許容上限を0.25%以下に抑え込む現行の長短金利操作を続ける方針を国内外に知らしめた。「マイナス金利国からの卒業」に向けた第一歩を踏み出したスイスと踏み出さない日本の違いが浮き彫りになり、歴史的なフラン高・円安が進む原動力になったと推測される。
<9月にマイナス金利実施国は日本だけに>
国内外の市場関係者の不意をついて始まったスイスの利上げを受け、この夏以降の為替市場では、マイナス金利政策を現在採用している国や地域の出口競争が注目されそうだ。
足元で短期政策金利をマイナス・ゾーンに設定している中央銀行は、世界に数えるほどしかない。SNBと日本の他では、ユーロ圏の金融政策を司る欧州中央銀行(ECB)とデンマーク国立銀行(DNB)だけなので、たったの4つだ。
このうち、6月に予想外の利上げを発表して市場を驚かせたSNBのジョルダン総裁は、今後もさらなる利上げを検討すると明言していた。ECBのラガルド総裁も現在マイナス0.5%の政策金利を今月下旬の理事会でマイナス0.25%に引き上げることを予告しており、夏休み後に開く9月の理事会での追加利上げの可能性についてもほのめかしている。今年の秋頃にはスイスとユーロ圏のマイナス金利政策は終了しそうだ。
デンマークは自国通貨の対ユーロ相場の許容変動域を「1ユーロ=7.46038クローネの上下2.25%」に設定、自国通貨の「ほぼユーロペッグ制度」を採用している。このため、DNBの金融政策は基本的にECBに追随する。今後、ECBがマイナス金利政策を打ち切ったなら、ほぼ同時期にデンマークもマイナス金利国ではなくなるだろう。
一方、日銀の黒田東彦総裁は日本で起きている2%超のインフレは、政府と日銀が目指している安定的な賃金上昇の好循環を伴っておらず、最近の資源高によるコスト・プッシュ型の悪い物価高であることなどを理由に掲げ、短期政策金利をマイナス0.1%に据え置く現在の政策を維持する姿勢を崩していない。早ければ今年の秋にも、日本は「世界で唯一のマイナス金利国」となる可能性がある。
日銀が現在の政策を続けている限り、円売りの相手探しの循環物色は今後も続くだろう。6月はスイスフラン/円が約42年1カ月ぶりとなる143円台まで上昇したのが目立っていたが、ドル/円も7月11日には一時137円75銭と約24年ぶりの高値を記録した。今後も、様々な通貨を相手に「XX年ぶりの円安」というニュース・ヘッドラインを冠した場況記事を目撃することになるのではなかろうか。
<安全神話が瓦解する円>
いずれにしろ、昨今の為替市場で観測されているスイスフラン/円の歴史的な高騰劇は、平成年間まで隆盛を誇っていた日本円の安全神話の瓦解を暗示している。かつて日本円とスイスフランは「市場心理が冷え込む時にリスク回避マネーが疎開先として選ぶ安全通貨」として甲乙つけがたい存在感を示していた。だが、円はその地位を失いつつあるようだ。
実際、ロシア・ウクライナ戦争長期化の影響で資源高が進行、主要国の金融引き締めで世界各国の株式市場関係者のメンタル・ヘルスが悪化している現在のような局面では、ジュネーブ条約による永世中立国宣言と憲法9条に掲げる戦争放棄宣言によって国際紛争に巻き込まれる可能性が低く、巨額の経常収支黒字国の通貨であるスイスフランと日本円は、昔だったらいずれも「買われる側の通貨」となる。このため、スイスフラン/円がどちらか一方向だけに偏って動き続けるというイメージは抱きにくかった。
だが、近年の日本は世界的な資源高のあおりを受けてインフレ懸念が強まる中でも、諸外国との利上げレースに参戦できるだけの基礎体力の無さが目立っている。加えて貿易収支の赤字が大幅に拡大して実需の円余剰が定着している。令和の日本円は国際紛争の勃発時や世界的な株価の下落時に避難先として選ばれる「リスクオフ通貨」と見なされなくなっているようだ。
ここ数カ月、目を見張るような速度と値幅で一方的に進んだスイスフラン/円相場の歴史的な高騰には、日本人としてやや残念な含蓄も含まれている。中長期的な為替相場の変動は、国の栄枯盛衰を映す水晶玉でもある。外国為替市場における日本円の地位の変化を示すインディケーターの1つとして、今後はスイスフラン/円相場の動きにも注目したい。
編集:田巻一彦
*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。
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