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概要:6月は主要な中央銀行の引き締めラッシュとなった。米連邦準備理事会(FRB)が、直前に発表された消費者物価指数(CPI)の結果を受け、75bpの利上げに踏み切ったほか、イングランド銀行も5会合続けての利上げを実施した。欧州中央銀行も利上げを宣言しており、9月には中銀預金金利がマイナス圏を脱する。さらに、スイス国立銀行による50bpの利上げは多くの市場参加者のサプライズを誘った。
[22日 ロイター] - 6月は主要な中央銀行の引き締めラッシュとなった。米連邦準備理事会(FRB)が、直前に発表された消費者物価指数(CPI)の結果を受け、75bpの利上げに踏み切ったほか、イングランド銀行も5会合続けての利上げを実施した。欧州中央銀行も利上げを宣言しており、9月には中銀預金金利がマイナス圏を脱する。さらに、スイス国立銀行による50bpの利上げは多くの市場参加者のサプライズを誘った。
6月22日、今月は主要な中央銀行の引き締めラッシュとなった。写真は同日、都内の為替ディーリングルームで撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)
<世界同時にスタグフレーション突入か>
一方、金融引き締めによって、多くの国では景況感の悪化を示す経済指標が散見されている。中央銀行が金融引き締めによって対処できるのは、需要面から生じるインフレに限られる。引き締めが続く限り、これからも景気は減速する公算が大きいが、供給制約から生じるインフレは今後も続く可能性が高い。結果的に多くの国や地域が、景気減速とインフレが同居するスタグフレーションに直面する危険性にさらされている。
<通貨価値からみたインフレの意味>
昨日に比べて、今日は1枚余分に紙幣を差し出さなければ同じモノが買えなくなったとしよう。それは、モノの名目上の価格が上がったとも言えるし、紙幣の価値が目減りしたとみることもできる。
スタグフレーションにせよ、インフレにせよ、価格の上昇は通貨価値の目減りを意味する。このため、一般的に言ってインフレに直面している国の通貨は、為替市場で売られやすい。その結果、通貨安が進めば、さらに輸入インフレを助長する負のスパイラルに陥る。
翻って、足元では程度の差こそあれ、多くの国や地域が数十年ぶりのインフレに見舞われている。この場合、為替市場ではどのように優劣がつくだろうか。名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利は1つの尺度とはなるだろう。ただ、それと並び、外貨を保有する際の動機や需要に着目することも重要だ。
<外貨保有、3つの需要>
具体的には、いずれの通貨も投機的需要、取引需要、そして予備的需要に支えられている。このうち、投機的需要とは当該通貨の保有によって利益を狙う動きだ。上がると予想する通貨を買うのは、この需要による。
取引需要は、様々な取引の支払い手段として通貨を保有する需要だ。従って、当該通貨の値動きをどう見込むかはあまり関係ない。
最後の予備的需要は、主に取引需要を想定し、不測の事態に備えて予め余分に外貨を保有する需要だ。各国中央銀行の外貨準備がその例だ。
こうして考えると、インフレによってあらゆる通貨価値の目減りが懸念され、投機的需要が減衰する場面でも、基軸通貨であるドルだけは、相対的に強い取引需要と予備的需要によって選好される可能性が高い。
実際、双子の赤字を抱えるドルは、世界の外貨準備全体の中で、6割程度と最も高いウェートを占めている。年末にかけて米国経済の減速を理由に、ドル安に転じる可能性はあるが、他の国や地域でも同様に景気に不安を抱える。
世界的なスタグフレーションの到来に備えるなら、他の通貨よりも取引需要と予備的需要に勝るドルを保有することが1つの合理的な選択となり得る。
<1980年代のドル高、プラザ合意で是正>
過去に遡ると、1980年前後の第2次石油危機を主因に、多くの国はスタグフレーションに見舞われた。米国でも、ボルカーFRB議長(当時)が景気と引き換えに、インフレ退治に立ち向かい、ピーク時の1981年には政策金利が約20%に到達。為替市場ではドル高が進行した。
しかも、米国が利下げに転じた後もドル高はおさまらず、実質実効相場でみて史上最高値を更新し続けた。その結果、ドルを押し下げる協調介を決めた1985年のプラザ合意が結ばれた。その点、最近の動きは第3次石油危機と呼んでも差し障りはないはずだ。スタグフレーションが世界経済を襲うとき、歴史もドルの独歩高、それも破壊的なドル高の到来を暗示する。
<ドルロングの相手は円の公算大>
ドルロングの相手通貨を検討するなら、新興国通貨の中でも、特に経常赤字国かつ資源の輸入依存度が高い国の通貨が有力な候補だろう。ただでさえ、FRBのバランスシート縮小は、経験則上、ドル高と新興国通貨安を招きやすい。
その点、インドルピーは筆頭候補となりそうだ。とは言え、一般的に新興国通貨は、主要通貨に比べて流動性が低く、ボラティリティが高い点には要注意だ。
一方、主要通貨について、年初来の対ドル下落率を小さい順に並べると、加ドル(マイナス2.2%)を筆頭に、豪ドル(同4.0%)、スイスフラン(同5.5%)、ニュージーランドドル(同7.2%)、ユーロ(同7.4%)、英ポンド(同9.3%)、スウェーデンクローナ(同10.4%)、ノルウェークローネ(同10.5%)、日本円(同15.8%)と続く。(カッコは6月21日時点の下落率)
資源価格の騰勢を支えに、総じて資源国通貨が上位に位置しているのは妥当と映る。供給制約の長期化と経済活動の正常化に伴う需要の高まりによって、今後も資源価格はある程度の騰勢を保つとみられる。
資源国通貨は時々、ドルをしのぐ場面も見込まれ、ドルロングを見合いに売るのはやや躊躇される。ただし、ノルウェークローネだけは、ロシアとの地理的な近さから敬遠されているのかもしれない。
次に、中盤に並ぶ欧州通貨は、総じて資源の輸入依存度が高い。ただ、それだけにインフレ圧力も高まっており、米国以上のビハインド・ザ・カーブに直面しているとみられる。今後、「たが」が外れたかのように利上げを加速する可能性もあり、対ドルで一方的に下落するわけではなさそうだ。欧州通貨の中で最も長期金利が低いスイスフランが、上位に位置していることがそれを示唆している。
<通貨安容認姿勢のツケ>
こうして消去していくと、やはり日本円が残る。日銀は、世界的な引き締めラッシュの中でも、揺るぎない異次元緩和継続の姿勢を堅持したばかりだ。国内の経済情勢に照らせば妥当な判断も、異次元緩和開始後、10年目を迎えてもなお世界で最も緩和的な政策を維持せざるを得ないことは、グローバルには特異と映る。
また、内閣府などのマクロ経済モデルでは、円安が国内総生産(GDP)に対し、プラスに作用するため、政府も緩和継続を基本的には支持している。日銀に対して、緩和の修正と円安の是正を本気で求めることはしないだろう。7月10日投開票の参院選を前に、対処療法的な物価高対策に注力するとみられ、その脈絡で日本が単独介入に踏み切る可能性はゼロではない。
とは言え、異次元緩和を維持したままの単独介入は、たき火に油を注ぎながら、合間に水をかけることに似ている。外貨売りの介入には限度もあり、債券市場での指し値オペとは威力が異なる。円安抑制効果は限られよう。円の実質実効為替レートは、既に変動相場制始まって以来の安値更新をうかがっており、ここからさらに下落するとはやや考えにくい。
ただ、既に市場は日本が本気で円安を抑制するつもりがないことを勘ぐり始めている。デフレ脱却のためなら通貨安もいとわないこれまでのスタンスのツケを、日本はここから未曽有の円安という形で払わされる危険性がある。
そう考えると、スタグフレーション下での破壊的なドル高が進む場合、その矛先が円に向けられる可能性は決して低くないように思われる。1998年に記録した147円台への言及が、市場関係者の間で次第に増えていくのではないか。
編集:田巻一彦
(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*内田稔氏は、高千穂大学商学部准教授、ALCOLAB外国為替アナリスト。慶應義塾大学卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。マーケット業務を歴任し、2012年から2022年まで外国為替のチーフアナリスト。22年4月から現職。J-money誌の東京外国為替市場調査では2013年より9年連続個人ランキング1位。国際公認投資アナリスト、証券アナリストジャーナル編集委員、公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、経済学修士(京都産業大学)。
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