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概要:ドル/円相場がわずか数週間で10%も下落し、約20年ぶりの安値を付けた。しかし、過去の円安局面と比較すると、まだ割安感は出ていない様子で、投資家は一段の円安進行を予想している。
ロイター編集
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[シンガポール 20日 ロイター] - ドル/円相場がわずか数週間で10%も下落し、約20年ぶりの安値を付けた。しかし、過去の円安局面と比較すると、まだ割安感は出ていない様子で、投資家は一段の円安進行を予想している。
ドル/円相場がわずか数週間で10%も下落し、約20年ぶりの安値を付けた。しかし、過去の円安局面と比較すると、まだ割安感は出ていない様子で、投資家は一段の円安進行を予想している。写真はドルと円の紙幣。都内で2010年9月撮影(2022年 ロイター/Yuriko Nakao)
円急落のきっかけは、日本経済に脆弱さが見られることと、日銀が米国など諸外国の中銀による金融引き締めに追随しない姿勢を示したことだ。
このため日米の国債利回り格差は開き、円の下落要因となった。同時にエネルギー輸入コストの急上昇が響いて、日本の貿易収支は赤字に陥っている。
過去最長の13日間連続の円売りにもかかわらず、アナリストはまだ下落余地が残っているとみる。その根拠は貿易収支の見通しと、前回の円安局面で得た経験則だ。現在は特に外国人観光客からの収入が途絶えているだけに、円安が続きそうだという。
ジャナス・ヘンダーソンの日本株運用部門責任者、井上純一氏は、これはレジームチェンジであり、レジームチェンジが起こる時には相場におけるサポートがなくなると語る。ドル/円は評価基準を見失い、125円前後の抵抗線を突破してからは、流れのままに漂っているという。
井上氏は、外為市場ではいったん下落の方向が定まると、何かが起こるまでヘッジ取引は姿を消すとし、従って(円安は)130円では止まらないだろうと述べた。一部のトレーダーは、130円に達すると日本の当局がドル売り・円買いの市場介入を行う可能性があるとみている。
20日の東京市場でドル/円は129円43銭と、2002年4月以来の安値を付けた。
当時、投資家は日本が1990年代の「失われた10年間」から抜け出し始めたと考え、長い円高局面が始まったところだった。トレーダーは今、アベノミクスが始まった2013年以降の円安を引き合いに、局面の転換は見通せないと言う。
円安政策は、デフレ脱却を目指したアベノミクスの一部だった。2013年に日米の10年物国債利回り格差は約120ベーシスポイント(bp)に拡大し、円は27%近く下落した。
今年も日米金利が似たような動きをしているが、円の下落率は約20%にとどまっている。しかもトレーダーは、円相場の安定化を図る当局者らの口先介入を織り込み済み。そして、日銀は多額の国債購入によって利回りの上昇を抑えている。
同時に、より高い利回りを求めて日本から資本が流出。また、貿易収支は8カ月連続で赤字となっている。
ドイツ銀行のマクロストラテジスト、アラン・ラスキン氏は「貿易収支と資本収支の動きが合わさった時、円は明確に方向転換する傾向がある」と言う。
ラスキン氏は、同行が調査している45カ国中、日本の輸出の平均伸び率は最低に近いと指摘。「円高シナリオにはまだ遠いようだ」と語った。
<介入効果に期待薄>
理論上、円安は輸出競争力の向上を通じて成長率を高め、円の反転上昇につながるような政策対応を促す。円の実質実効レートは過去数十年間の最低水準まで下がっている。
だが、生産の海外移転により、円安が成長を支える効果は薄れている。しかも輸入コストの上昇による景気への打撃が、輸出促進効果を相殺して余りある可能性もある。
このためアナリストの間では、政府が介入に踏み切る可能性が高まったとの見方も出ている。エネルギー高が家計を苦しめ始めていることも考えれば、なおさらだという。
確率は低いが、日銀が国債利回りの目標を引き上げる、もしくは撤廃する可能性もある。そうなれば円相場は跳ね上がるだろう。
ところが、大半の市場関係者は過去の経験に基づき、介入で相場の流れは変えられないと予想している。
オーストラリア・コモンウェルス銀行(シドニー)のジョー・カプルソ氏は「介入しても、為替のトレンドを変えるという政策目的をめったに達成できないことは、歴史が証明している」と言う。
唯一の成功事例は2011年3月、東日本大震災後に日米欧が協調して円売り介入を実施した時であり、その他3回の介入では、円は2週間以内に介入前の水準に戻ったと、同氏は説明した。
これら4回の介入はいずれも、円高を止めるのが目的だった。日本が最後に円買い介入を行ったのは1998年だ。
現在のポジションのデータを見ると、ドル/円のロングの建玉は3年半ぶりの高水準に積み上がってはいるが、2017、13、07年のピークに比べるとまだ少ない。つまり投資家は、まだしばらく円売りを続ける余地がありそうだ。
オプション市場の傾きを示すリスクリバーサルを見ても、ドル/円はドルロングの方向に傾いてはいるが、2015年当時ほどではない。シティのアナリストチームは、円に下落余地が残っているとの見方と整合的なデータだと言う。
JPモルガンのFXストラテジスト、ベンジャミン・シャティル氏は、円に対する日本の個人投資家のロングポジションと、外国人の投機的なショートポジションは、ともに円安のスピードに追い付いておらず、円の一段安を止めるほどの逆風にはならないと指摘した。
同氏によると、130円を超える円安は、米10年物国債利回りが3%台前半に上昇することと整合的だ。同利回りは現在、2.91%前後で推移している。
(Tom Westbrook記者)
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