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概要:[ヒューストン/ロンドン 24日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は23日、同国がウクライナ侵攻に絡んで指定した「非友好国」に輸出する天然ガスについて、代金をルーブルで支払うよう近く求める考えを
[ヒューストン/ロンドン 24日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は23日、同国がウクライナ侵攻に絡んで指定した「非友好国」に輸出する天然ガスについて、代金をルーブルで支払うよう近く求める考えを示した。これにより欧州でガスの需給ひっ迫が起きるのではないかとの警戒感が強まっている。
ガスの買い手側は、ロシアや同国の幅広い企業が欧米から経済制裁を受けている点を踏まえ、どうすればルーブルでの支払いが可能か必死に手掛かりを求めている。多くの専門家からは、ルーブル決済は契約違反に当たるのではないかとの声も聞かれる。
◎決済通貨変更の背景
ロシア経済は、欧米の制裁で大打撃を受けている。ただ、ロシア産の石油とガスに依存している欧州連合(EU)は、エネルギー輸入をまだ制裁対象に含めていない。
コンサルティング会社のライスタッド・エナジーによると、現在はほぼ全てのロシア産ガス購入契約がユーロ建てないしドル建てで決済されている。
ルーブル決済は、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降、急落してきたルーブル相場の押し上げ要因になるだろう。実際、プーチン氏の発言だけでルーブルの対ドル相場は9%反発した。
◎重大問題となる理由
欧州はガス需要の約40%をロシアから輸入しており、年初からの支払額は1日当たり2億─8億ユーロに上る。
市場では各国がルーブルで決済するつもりか、あるいは本当にできるのか懸念が広がり、欧州天然ガス価格の指標となる「オランダTTF」は高騰している。
ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は、ルーブル決済要求について「プーチン氏が(EUと米国の)同盟分断を狙って打った一手だ」と評し、欧州諸国が要求に応じれば「制裁の足並みは大きく乱れる」とツイッターに記した。
◎合法性
複数の買い手は、契約で決済通貨変更が認められていないので、今後もユーロで支払い続けると話している。何人かの法律専門家の見解に基づくと、ロシアが一方的に契約条項を変えることは、まず不可能だ。
シドニー工科大学の公共政策ガバナンス研究所でチーフエコノミストを務めるティム・ハーコート氏は「契約は買い手と売り手の双方で成り立ち、ドル建てかユーロ建てが普通。だから、どちらかが一方的に『違う。これ(ルーブル)で払うのだ』と言ってしまうと、契約は存在しなくなる」と説明した。
もう1つ厄介な問題は、西側の銀行がロシア資産取引に消極的な点にある。
INGバンクは「たとえ買い手がルーブルで支払おうとしても、多くのロシアの銀行に制裁が発動されている以上、かなり難しいことが分かるのではないか」と指摘。ロシアがルーブル決裁にこだわった場合、期間など契約の他の条項も再交渉できる余地が生まれるとの見方を示した。
◎ルーブル決済のメカニズム
ブルガリアのニコロフ・エネルギー相は、同国側はルーブル建て取引に対応できると発言。「だから既存契約に基づく決済上のリスクはない」と語ったが、詳細は明らかにしていない。
ライスタッドのシニア・バイスプレジデント、クラウディオ・ガリムベルティ氏は、ロシアがルーブル決裁を義務化する新たな契約をひねり出すことはできるとしながらも、相手側の政府が自国の中央銀行にルーブルを保有させるか、市場で調達する必要が出てくると説明した。
外国為替取引を専門とするある銀行幹部によると、制裁はあくまで部分的なので、ルーブル決裁は技術的に可能だ。西側の買い手がユーロないしドルを取引銀行に支払い、その銀行がロシアの銀行に送金するとともに「ガスプロムに対してルーブルで払って」と頼めばよいという。
もっとも欧州の買い手が市場でルーブルを調達できるほどの規模で、ロシア中銀がルーブルを供給できるかは、まだ分からない。
◎西側銀行の負担
この銀行幹部は、西側の銀行がロシアと関係する取引に制約を課されている事情を挙げた上で「どの取引も通常の何千倍もの審査をくぐり抜けることになる」と付け加えた。
ルーブル取引は為替リスクも伴うので、西側の銀行はヘッジを行う必要があり、取引コストがかさんでしまう。
ルネッサンス・キャピタルのエコノミスト、ソフィア・ドネツ氏は、外銀とすれば「流動性と為替のリスクに対処できるよう、レポやスワップなど幅広い金融手段を利用できることが不可欠」になると指摘。ただし、ロシアが各種資本規制を実施し、外国人の資本市場参加を制限しているため、そうした手段が使えるかどうかは不明だと述べた。
◎長期的影響
ルーブルは短期的に上昇するかもしれないが、この決済通貨変更によって、ロシアの対外債務と輸入代金の支払い能力が圧迫される、とキャピタル・エコノミクスは顧客に解説している。
ルーブル決裁が他の分野にも広がれば、ロシアのコモディティー輸出業者も外貨流入が細る。
一方で、この方法がうまくいった場合は、国際貿易におけるドルの役割を弱め、米国の借り入れや資金調達のコストにも長期的に影響を及ぼす可能性がある。米政府から頻繁に金融制裁を適用される国は、ドル建て貿易から一層遠ざかろうとするだろう。
だが、そんな警戒は杞憂かもしれない。
先の銀行幹部は、ドル建てロシア国債の返済を引き合いに出す。ロシア政府はドルではなくルーブルでの支払いをちらつかせたが、同幹部によると、いざデフォルト(債務不履行)の可能性が迫ると、結局はドルで返済資金をねん出した。ルーブル決済を振りかざすのは「対外的なポーズ」という側面が強いという。
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