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概要:外食大手の生き残りが注目されるなか、すかいらーくの2021年度決算は、ファミレス大手の現状と、ビジネスモデルの転換の決意を感じさせるものでした。
撮影:横山耕太郎
外食産業はいかにコロナ禍を乗り越えていくのか。
外食大手の決算が注目されるなか、すかいらーくの2021年度決算は、ファミリーレストラン大手の現状と、決意を感じさせるものだった。
前年度に通期営業赤字230億円を計上したすかいらーくは、2021年12月期の通期売上高2646億円(前年比−8.3%)、営業利益182億円、最終利益87億円となった。
黒字決算に巻き返したとはいえ、すかいらーく経営陣の心境は複雑に違いない。期間を通してコスト削減への取り組みを続けてきたが、黒字転換の要因として何より大きいのは、「時短協力金427億円」なのだから、両手をあげて喜べるものではない。
前年からの営業利益の増減分析。「時短協力金」が非常に大きな比率を占める。
出典:すかいらーく2021年12月期通期決算資料
すかいらーくは1年前の前年通期決算時に、2021年度は業績予想ベースで売上高3100億円を見込んでいた。誰にも予想などできない事態とはいえ、レストラン業態を襲うコロナショックの長期化と、外食客の意識の変化は、想定を大幅に超えていると言わざるを得ない。
すかいらーく会長兼社長の谷真氏は、決算会見の冒頭で「(今日の会見では)生き残りの戦略も加えた上での、その先の成長戦略をお話しさせていただきたい」と、危機感をもった経営に全力で取り組んでいる決意をにじませた。
「ディナー需要は7割減」に向き合う
オンライン決算会見で現状について話すすかいらーく会長兼社長の谷真氏。
出典:すかいらーく2021年12月期通期決算説明会より
「昨年のデルタ緊急事態宣言下に比べると、極めて土日の売り上げが大きく落ち込んでいる」
「ナイト(夜)やミッドナイト(深夜)は時短営業していることもあり、ほとんどない状況」(いずれも谷真社長)
谷真社長は質疑のなかで、この2年の需要の変化を自身の言葉で淡々と語った。2019年対比で、すかいらーくグループの時間帯別の売り上げは、
モーニングが60%
ランチ、ティータイムは60%弱
ディナーは最も打撃が大きく30%程度
深夜については(時短の影響もあり)0に近い
という状況にまで落ち込んだ。
谷社長は「国民の大多数が非常に用心をされていることが売り上げから見てとれる」と、収益構造に大きな変化があることをコメントした。
一方、前年対比で大きく伸びたのはデリバリー・テイクアウトの売り上げだ。
デリバリ・テイクアウト売り上げの推移。コロナ流行以降大きく成長しており、直近2021年度には売上高の23%を占める事業になっている。
出典:すかいらーく2021年12月期通期決算資料
2020年度時点で480億円あまりだったデリバリー・テイクアウト売り上げは、2021年は612億円。全店合計で前年比100億円以上、成長している計算だ。
すかいらーくは2021年時点ではデリバリー専業店舗の拡大にも言及していたが、今回の決算では一転、イートインを扱う既存店からのデリバリーなどを強化していく方針を打ち出した。
デリバリーやテイクアウトが、一過性のものではない「新しいレストランの楽しみ方」として生活に定着する一方で、実店舗のレストランビジネスをいかに巻き返すかが経営を左右する。
イートイン店舗の最大活用でその両立が可能だと、経営判断した形だ。
収益構造を「自動化」と「手頃な価格」「デリバリー」で転換する
コスト増をメニュー価格へ転嫁しないための効率化にも取り組むが、原価アップは世界的なトレンドだけに相当な企業努力が必要になる。
出典:すかいらーく2021年12月期通期決算資料
すかいらーくの決算に語るべき点は多いが、注目は2022年度に掲げる業績予想だ。
「国内でコロナワクチンの3回目接種が十分に行き渡ること」を前提におき、時短協力金は377億円減少した50億円程度を見込む。その上で、売上高3360億円(2021年比27%増)、営業利益100億円(同45%減)と、一気にコロナ前の2019年度に近い水準にまで回復させる計画を立てている。実際、日商では2022年第4四半期には「2019年度比100%」を目指す、と公表している。
鍵になるのは、大きく分けて3つの施策。
手ごろな価格のメニュー開発
それによる来客頻度増(客数増)を人件費を増やさずさばくための「大規模な配膳ロボット導入」(2022年末までに全国2000台規模)
さらに自社宅配網の強化と専用メニュー開発による「デリバリー売り上げの成長」
これらの施策は、いずれも「どれが欠けても目標達成に悪影響が出る」という意味で、すかいらーくにとって大きなチャレンジの1年になる。特に(1)と(2)は外食産業としても注目度の高い動きになるはずだ。
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まず(1)のメニュー(商品)開発については、原価高騰が叫ばれるなかでも、価格転嫁を最小限とし、賃金の上がらない日本特有の需要にあった商品開発を進める。効率化のため自社工場の自動化も進めるとするが、世界的なトレンドである値上げ圧力に抵抗した施策という意味で、企業努力のハードルは高い。
(2)は、以前からすかいらーくが掲げる、「客数が増えれば人件費も増えるという産業構造からの脱却」であり、こちらもレストラン業態として大きなチャレンジだ。
配膳ロボ導入に関して、すかいらーくは、「先行導入した実験店では人件費の削減分だけでも費用対効果が見込める効果が出ている例もある」と説明している。
出典:すかいらーく2021年12月期通期決算資料
店舗へのロボット導入に関するBusiness Insider Japanの質問に対し、すかいらーくは「配膳ロボのリース料の半分を人件費削減で、残り半分をランチピーク時の客数増でカバーする」と回答している。つまり、(1)のメニュー開発と広告宣伝も含めた来店促進の成功が、(2)の施策が最大効果をあげるための前提条件ということになる。
さらに目標達成には、まだ(1)と(2)だけでは、不十分だ。
「2022年第4四半期の日商ベースで2019年比で100%」という計画は、イートイン売り上げだけでは「(第4四半期の)日商でいえば(2019年比)94%」(谷社長)で、まだ6%足りない。
この残り6%を埋める鍵が(3)のデリバリー。実は、すかいらーくのデリバリー売り上げは、その8割以上が「自社の宅配網」によるもの。ここが「他社は持っていないインフラ」(金谷実常務)であり、ユニークな部分だ。結果、デリバリーへの投資が(外部企業への手数料支払いなどのない)効率的な事業成長に寄与する構造になっている。
2022年の業績予想の達成は、これらすべてを組み合わせる必要がある、いわば徹底した改革で実現するプランだ。
すかいらーくによると、仮にコロナ流行が2022年末まで続いたとしても、その際は時短協力金で相殺されることになり、いずれにせよ営業利益の予想に大きな影響はないとする。
2022年度の通期業績予想。こちらの日商は2022年度通年でならした数字となっている。
出典:すかいらーく2021年12月期通期決算説明会より
すかいらーくは2022年の業績達成に向けてすでに動き始めている。商品開発はデリバリー向けの専用商品も含めてすでに進行中だという。また配膳ロボ導入は、まず「ガスト」などを中心に、早くもこの4月までに1000店規模の導入を終える予定だ。
とはいえ、これだけの施策をやりきって、収益構造の転換を1年の間にしなければならない ── 会見冒頭に谷社長が口にした「生き残りの戦略も加えた上での、その先の成長戦略」という言葉は実に重い。
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(文・伊藤有)
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