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概要:伊賀大記 [東京 31日 ロイター] - 円債金利が、日銀がマイナス金利政策導入を決めた2016年1月以来の高水準に上昇した。日本の消費者物価指数の伸び率は依然2%に届いていないものの、世界的にイン
伊賀大記
[東京 31日 ロイター] - 円債金利が、日銀がマイナス金利政策導入を決めた2016年1月以来の高水準に上昇した。日本の消費者物価指数の伸び率は依然2%に届いていないものの、世界的にインフレが進み、各国中銀が利上げに動く中で、日銀もいずれ金融正常化に向かうのではないかとの思惑が市場でくすぶっている。
<「完全否定」でも消えなかった思惑>
日銀の金融正常化に関心が高まった1月17─18日の金融政策決定会合。黒田東彦総裁は会見で、物価目標の2%まで遠い状況下で「利上げとか現在の緩和的な金融政策を変更するというようなことは全く考えていない」と言い切った。その後公表された同会合の「主な意見」でも、各政策委員からの早期の正常化提案はみられなかった。
マーケットの思惑はいったん完全否定された形だが、円債金利は再び上昇を始め、31日には、新発10年国債利回り(長期金利)が一時0.185%と、日銀がマイナス金利政策の導入を決めた16年1月29日以来の高水準を付けた。同じように日銀の金融正常化を巡る思惑が強まった昨年春の「点検」時を上回る水準だ。
円金利上昇の背景には、海外金利の上昇がある。株安進行にも関わらず、今後の金融政策がタカ派的になる可能性を否定しなかったパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長の会見(26日)を受けて足元のフェデラル・ファンド(FF)金利先物市場は年内に約5回の利上げが実施されるとの見方を織り込んだ。
ただ、米金利上昇は一服しつつある。前週末28日の米10年債利回りは4bp低下の1.80%。31日のアジア時間に入っても1.78%台と低下している。米金利に連動しやすい円債金利としては珍しい「逆行現象」の要因には、日銀の金融正常化への警戒感があるという。
SMBC日興証券のチーフ金利ストラテジスト、森田長太郎氏は、先週後半から円債が米国債に対し再びアンダーパフォームし始めたと指摘。「需給要因もあるかもしれないが、市場は日銀が最終的にはグローバルな環境変化に抗しきれないとみている面もあるようだ」との見方を示す。
<消えないマイナス金利導入時の「記憶」>
「黒田総裁が強く否定すれば否定するほど、市場は疑心暗鬼になってしまう」と、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア・マーケットエコノミスト、六車治美氏は指摘する。日銀の「完全否定」にもかかわらず、市場で思惑がくすぶり続けるのは、マイナス金利導入時の「記憶」があるためだという。
16年1月21日の参院決算委員会で、黒田総裁は「現時点ではマイナス金利政策を具体的には考えているということはない」と発言。しかし、日銀はその8日後にマイナス金利導入を決定した。その後の黒田総裁の国会答弁にあるように、経済や物価の情勢は毎回の決定会合で検討するものであり、「変節」とは言えないが、市場にはサプライズの印象が残ってしまった。
日銀が金融正常化に向かう道筋はいくつかあるが、その1つはターゲット金利の短期化だ。現在のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策は短期金利をマイナス0.1%、10年物国債金利をゼロ%を中心に維持しているが、目標金利を10年から5年に短期化すれば、5年以降の金利は上昇しやすくなる。
国際通貨基金(IMF)は今月28日、利回り目標をより短期的な金利を対象にするのが望ましいと指摘。経済活動に重要な短中期債の利回りを低く抑えつつ、長期化する金融緩和が金融機関の収益性に与える影響を軽減しうるとした。
5年債は27日にマイナス0.010%とゼロ%が視界に入る水準まで上昇。「事実上の短期化を織り込んだといってもいい水準」(国内証券)を付けている。10年債の1年先のフォワードレートは31日、0.270%とYCC目標レンジの0.25%を上回る水準まで上昇した。
<「ワンクッション」が必要か>
しかし、マーケットも日銀が次回会合(3月17─18日)で政策変更に動くとまではみていない。「黒田総裁があれだけ強く否定したからにはすぐには動けないだろう」と、アライアンス・バーンスタインの日本債券ポートフォリオ・マネージャー、橋本雄介氏は話す。
このため10年債金利がこのままYCC目標上限の0.25%をすぐに目指すとの見方は少ない。連続指し値オペなど、日銀が金利上昇を抑える「ツール」は豊富だ。米10年債金利が2%を目指すような展開にならなければ外部環境の後押しも弱い。
日銀が正常化に向かうには「ワンクッション」が必要だとみる声が多い。物価動向を点検して日本の物価も2%に届かないにせよプラスが安定的に維持できるとの分析が出るとか、政治側からインフレ抑制を求める声が強まるといった後押しだ。
世界的にインフレが進行。日本でも消費者物価指数は2%にまだ届かないが、多くの商品が値上げされている。その中、各国中銀は利上げなど金融正常化に動き始めた。「政策の柔軟化を検討するのであれば、今ほどのチャンスはない」(三菱UFJMS証券の六車氏)とも言える。現時点では市場の思惑先行ではあるが、思惑はなかなか消えそうにない。
(伊賀大記、取材協力:植竹知子 編集:石田仁志)
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