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概要:「現在のバブルは利回りを追求する投機筋によって引き起こされ、体系的な金融政策への忠誠を放棄したFRBによって増幅されたものです」そう主張するヘッジファンドマネージャーのジョン・ハスマンは、米株式市場の70%という大幅下落を予想しています。
アメリカの株式市場はきわめて不確実性の高い局面を迎えている。
Spencer Platt/Getty Images
米連邦準備制度理事会(FRB)は、量的緩和を強化したり、金利を引き下げたり、あるいは景気の過熱を抑えるためにそうした緩和策を終了させたり、行き当たりばったりで金融政策を決めている——。ジョン・ハスマンはそう考えてきた。
2008年の株価暴落に始まった金融危機以降、とりわけ新型コロナの世界的大流行が始まってから、FRBは金融市場への流動性供給を強化し、低金利政策を継続してきた。
そしていま、インフレ率が約40年ぶりの高水準に達したことを受け、FRBは急速な金融引き締めに動こうとしている。
ハスマン・ファンズ(Hussman Funds)を率いるハスマンの目には、こうしたFRBの動きが、一貫した政策を生み出すシステムの枠組みを欠くその場しのぎの策にしか映らない。
そしてそれは、将来のリターン見通しという視点から見たとき、投資家に大きなリスクをもたらす動きでもある。ハスマンは自社サイトの記事でそうコメントしている。
ハスマンはその過当投機の相場状況を見抜く眼識を通じて、金融コミュニティでの名声を築いてきた。2000年(のドットコムバブル)と2008年(のサブプライム問題)当時の正確きわまりない予測で、その眼識は遺憾なく発揮された。
ハスマンによれば、現在の状況は当時よりひどいものだ。
「私たちはアメリカ史上最も過熱した金融バブルのなかで2022年を迎えました。このバブルは利回りを追求する投機筋によって引き起こされ、体系的な金融政策への忠誠を放棄したFRBによって増幅されたものです」
この踏み込んだ発言が批判を煽るためのレトリックではないことを、ハスマンはバリュエーション(=株価や企業価値の評価)の現状を示すいくつかのチャートを示して裏づけている。
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まずは、金融を除く米企業の時価総額に対する年間売上高の比率。ハスマンによれば、将来のリターンを予測する上で最も信頼できるバリュエーションだという。目下、過去最高水準で推移している。
Hussman Funds
続いて、米大型株の動向を表すS&P500種の各十分位数分類におけるバリュエーションの水準。これを見ることで、バブルの広がりを把握できる。例えば、ドットコムバブル当時、バリュエーションが最高水準の第10分類と他の(第1〜第9)9分類の間には、いまよりはるかに際立った差があった。それが現在では、いずれの分類も歴史的な高水準となっている。
Hussman Funds
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また、バブルの広がりを把握するもうひとつの手法として、S&P500の時価総額上位10%銘柄と下位10%銘柄の株価売上高倍率(PSR)の比較が挙げられる。中央値(=全銘柄の平均)と下位10%銘柄のPSRは、2000年や2008年よりはるかに高水準となっている。
Hussman Funds
ハスマンによれば、こうした高水準のバリュエーションは、今後10年間に市場で生み出されるリターンが悲惨なものになることを物語っているという。
下のチャートを見れば分かるように、今後10年間の期待リターン(=予想される収益率)は過去のバブル期を下回ると予測される(チャート内の「現在」は2022年1月4日時点)。
Hussman Funds
ただし、バブルが崩壊して市場が底打ちしたあとは、期待リターンも改善する見通しだ(チャート内の2002年10月あるいは2009年3月のリターンに注目)。
こうしたきわめて史上類を見ない高水準のバリュエーションが通常のトレンドに戻るためには、S&P500種株価指数が現在より約70%下落する必要がある。
ハスマンのコメントが掲載された1月14日以降、株式市場では急落が続いているものの、さらに68%下げて1400程度まで戻さなくてはならない。
ハスマンは以前もこうした株価下落を正確に予測してきた。
「2000年、2007年という極端な時期でも、テック銘柄が83%下落するとした2000年3月の予測をはじめ、当社は株価下落の程度を正確に予測できました。
それを踏まえた上で、当社はS&P500指数がこのあたりで約70%下落することになると予測しています。そうなればバリュエーションは通常の水準を回復し、名目の長期期待リターンは過去そうだったように10%程度になるでしょう」
市場は不確実な局面を迎えている
高水準のバリュエーションに批判的なハスマンの見方を支持する市場関係者もいる。
米金融大手モルガン・スタンレーの最高投資責任者(CIO)で米国株担当チーフストラテジストのマイク・ウィルソンは顧客向けレポート(1月18日付)で、高水準のバリュエーションと金融引き締めを急ぐFRBの動きを踏まえ、S&P500指数は2022年前半に10~20%下落すると予測している。
また、バンク・オブ・アメリカのサビータ・スブラマニアンは、現在のバリュエーションを踏まえ、S&P500指数は今後10年間のリターンがマイナス0.5%になると予測する。
スブラマニアンは2021年の顧客向けレポート(2021年11月15日付)で、予想長期成長率が高すぎることを指摘。過去のリターンとの相関関係を分析した上で、S&P500指数は(2022年11月以降の)12カ月で20%下落すると予測している。
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一方、高水準のバリュエーションを特に問題視しない市場関係者もいる。
米金融大手ゴールドマン・サックス投資戦略グループ(ISG)のシャルミン・モサバル・ラフマニ最高投資責任者(CIO)は1月初旬のレポートで、2022年中にバリュエーション(の高さ)が株式市場の脅威にはならない理由をいくつか挙げている。
そのひとつは、下のチャートから分かるように、シラーPERあるいはCAPEレシオ(=株価を過去10年間のインフレ調整済み1株当たり純利益で割って計算。株価の割高感を測る投資指標)に平均回帰性があることを示す明確な証拠はない、というものだ。
過去140年間のデータを見ても、(平均回帰性を示す)統計的有意性は26%にすぎない。つまり、CAPEレシオが長期的に戻るべき永続的な平均値は存在しないことになる。
Hussman Funds
いずれにしても、市場はいま不確実な局面を迎えている。
FRBが金融引き締めに向けて準備を進め、国債利回りが急上昇するなかで、株価はこの1年ほどで最大の下落幅を記録し、S&P500指数は年初来8.3ポイント安となっている(1月21日時点)。
実体経済に株価をいま一度引き上げる余力があるのかどうかは不明だ。
失業率は低下を続けているものの、雇用統計は精彩を欠く。景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数は、直近の2021年12月で前月比19万9000人増と市場予想の半分以下にとどまった。
インフレ率は上昇が続いており、FRBは金融引き締めのペースをさらに上げる可能性もある。景気の過熱は抑制され、市場の流動性は低下することになる。
米上院では、与党民主党内の対立から、バイデン大統領が掲げる大型歳出法案「ビルド・バック・ベター(より良い再建)」の可決が(下院では2021年に可決されるも)見込めなくなり、さらなる財政出動への期待はすでに薄れている。
一方で、FRBの金融引き締めは、同理事会がアメリカ経済の強さに一定の自信を持っていることを示すものでもある。
なお、ハスマンは2020年秋に「現在の株式市場のサイクルが終わるまでに、S&P500指数は価値の3分の2(約66%)を失うまで下落する」との悲観的な予測を顧客向けレポートに記している。それほどの規模の下落は今日(2021年1月21日)時点で起きていない。
ハスマンのそれ以前のトラックレコード(実績)については、過去のBusiness Insider Japan記事(2020年12月4日付)を参照されたい。
※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。
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(翻訳・編集:川村力)
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