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概要:「なんだし、なんだし、AGC」のCMで知られるガラスメーカーのAGCが、近年、医薬品事業に力を注いでいる。今、なぜ医薬品なのか。そして、全くの異分野を成長させる事業戦略の秘密を、CFOに聞いた。
イタリア・ミラノにあるモルメド社。
提供:AGC
多くの企業と同様に、AGCの事業も新型コロナウイルスの影響を受けている。主力のガラス事業はすでに回復傾向にはあるとはいえ、2020年第2四半期の売上高は前年比約2割減の2900億円だった。
一方、2016年に戦略事業として定めた「ライフサイエンス(医薬品)事業」は、コロナ禍においても勢いを見せている。
AGCのライフサイエンス事業は、「医薬品」といっても、新薬を開発しているわけではない。
あくまでも、製薬企業が開発した原薬の製造などを担う「受託製造・開発事業(CDMO)」という事業形態が中心だ。
AGCは、2020年6月に、米コロラド州にあるアストラゼネカ社の医薬品原薬製造工場の買収を発表。さらに、7月には遺伝子・細胞治療薬の開発を行なうイタリアの製薬ベンチャー、モルメド(MolMed)社のTOBを完了と、コロナ禍でも積極的な投資を進めてきた。
「ライフサイエンス事業の売り上げ規模は、2022年頃には1000億円に届こうとしています。ここ10年で、売り上げの伸びは10倍以上になっていると思います」(宮地氏)
グループ全体の売り上げ(2019年度総売上高:約1.5兆円)から見ると、まだ規模は小さいが、着実に事業として成長している。
緑内障の治療薬「タフルプロスト」。
提供:AGC
フッ素に関する技術は、化学品事業で培われていた。当時、フッ素を使った合成医農薬が増えるという流れもあり、技術的にもフッ素化学の高機能化という位置づけで、完全に飛び地というわけではなかった。
その中で、参天製薬と共同で開発した合成医薬品(化学合成で製造する医薬品)、緑内障治療薬の「タフルプロスト」が大きく花開いたのだ。
「この合成医農薬事業をAGCの化学品事業部の中で徐々に大きくしてきた、というのがライフサイエンス部門の歴史です」(宮地氏)
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一方で、AGCが近年力を入れている「バイオ医薬品」事業は、そううまくはいかなかった。
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バイオ事業の窮地に見つけた、CDMOという金脈
AGCのCDMO事業の生産拠点一覧。2016年以降に買収が進んだことで、一気に増えていった。
提供:AGC
AGCがCDMO事業を始めたのは、現・AGC若狭化学を設立した1990年代。合成医農薬の受託事業を続けていくうちに、事業規模は小さいけれども「確実に利益になる」ことが分かってきた。
そこで、バイオ医薬についても受託で稼ぎ、事業の継続を図る構造が徐々にできあがっていった。
「そうしている中で、製薬メーカーが製造を外部に委託する流れが強くなり、『受託事業の成長はもう間違いない』という状況になっていきました。
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当時、日本ではまだ受託ビジネスがあまり認知されておらず、気がつけばバイオCDMOとしては国内最大級の会社になっていました」(宮地氏)。
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「技術こそ違えど、攻め方は同じ」グローバル展開の方程式
CDMO事業のアメリカ拠点、AGC Biologics。
提供:AGC
事業の拡大戦略について、宮地氏は、ライフサイエンス事業も、創業当初から取り組んできたガラス事業も、「ニッチで付加価値がつけやすい性質の素材やサービス」であるという点がポイントだと話す。
特定の分野で先行している巨大企業とガチンコで競おうとするのではなく、少しずれたニッチな素材を作り、見落とされている規模感のある需要を掘り起こす。
「ガラスは鉄と比べると圧倒的に産業規模が小さい。でも、機能は付加しやすく面白いニッチな素材なんです。AGCはこれで攻めてきた。最初は建築、そして自動車。次にディスプレイと成長産業が変化し、今では半導体などの分野でハイエンドなニッチ素材を提供しています」(宮地氏)
ニッチであるがゆえに競合も少ない。グローバル展開しても、マーケットを支配することが比較的容易なわけだ。
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ただし、単にニッチなだけではなく、化けると数百億円、数千億円規模の市場になるような素材を狙うことが重要だ。その鍵を握るのは、企業が持つ技術力ということになる。
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「AGCはヒルトンではなく、星のや」
撮影:今村拓馬
技術は違うが、バイオ医薬品でもニッチであるがゆえに優位に働く構造は同じだった。
AGCは、バイオ医薬品事業で一度の培養にしか使わない、小さな培養タンクの技術を持っている。大量製造には向かないが、薬の開発ステージにある小さなベンチャー企業にとっては、使いやすい「ニッチ」な仕組みだ。
ベンチャーの小さな開発案件を受託しながら、技術の質を上げていると、そのうち「当たり」が出てくる。すると、当たった薬を大量生産する案件を受託しやすくなる。
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小さな受託案件を進めながら、研究投資やM&Aによって、ニッチな技術力を高めておく。
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その一方で、製薬企業が業界再編の流れで手放そうとしている工場を買収して、製造キャパシティの確保も進めておく。
これがうまくはまることで、近年、AGCのライフサイエンス事業の存在感が高まり、今のポジションがある。
「CDMO事業はどちらかというと、宿泊業と似ているところがあるかもしれません。
例えば、大手のCDMO事業者は、一度に受託できる規模が大きく、均質なサービスを提供しています。アメリカの大手ホテルチェーンで例えればヒルトンといったイメージでしょうか。
一方、我々は、星のやさんのような立場でしょうか。星のやさんは業界が再編される中で、既存の旅館をリノベーションして質の高い特徴あるサービスを提供しています。我々のライフサイエンス事業は、そういう特徴的で質の高いCDMOを目指しています」
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後編:【ガラスメーカー最大手AGCが「医薬品事業」で存在感。鍵は投資判断の2つの基準】はこちらから
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(聞き手・構成、三ツ村崇志)
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