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概要:なぜ今、NVIDIAはソフトバンクGからの「Armの巨額買収」を決めたのか。それは「NVIDIAの泣きどころ」と関係がある。今後半導体産業に与える影響を考察してみよう。
NVIDIAの社屋。
Shutterstock
だが、NVIDIAにも泣きどころはあった。それが「CPUのIP(知的所有権)を持っていない」ということだ。
現在の半導体は、IPと呼ばれるいわば「半導体の設計図」をベースに開発が進められる。その設計図を数多く保有していることが、半導体メーカーが他社と競争する上での強みになっている。
CPU、GPU、そしてNPU(Neural Processing Unit=人工知能向けの処理チップ)などの、種類の異なるIPを多数開発し、顧客の幅広いニーズに応えることが他者との競争上重要になっている。
例えば、NVIDIAの競合であるインテルやAMDは、このIPポートフォリオを幅広く所有している。
CPUであればインテルはx86プロセッサという強みを持っており、AMDはそのインテルからライセンスを受けて独自のx86プロセッサを開発している。
また、GPUでも、AMDはRadeon(ラデオン)というブランド名のIPポートフォリオを持っており、これを武器にマイクロソフトのXboxシリーズやソニーのプレイステーションシリーズに半導体を供給している。
それに対して、NVIDIAはCPUのIPポートフォリオは十分ではなかった。
Arm社からライセンスされたIPをCPUとして使ったり、自社ブランドのAI処理向けサーバーにインテルやAMDのCPUを採用する……といったように、「NVIDIAが他社の製品に依存している」状況が続いていた。
今後、他の半導体メーカーと競争していく上で、IPポートフォリオを充実させたい……それがNVIDIAにとっては喫緊の課題だったのだ。
今回のArm買収でNVIDIAは、Armが持つ、CPU、GPU、NPUなどの幅広いポートフォリオを得ることになる。それがNVIDIAのビジネスにとって有益なことであることを否定する人は、半導体業界には誰もいないのではないか。
「Armの中立性」が損なわれることを懸念する競合企業
アップルの2019年のiPhone 11 Pro発表時の基調講演より。独自のAシリーズチップにArmの設計が使われている。
出典:アップル
ただ、NVIDIAがArmを所有しても影響を受けないArmの顧客もある。例えばアップルだ。
アップルはArmから仕組み(アーキテクチャ)を利用するライセンスを供与され、自社製品のAシリーズチップにArm CPUを組み込んで出荷している。
しかし、ArmからCPUのデザインそのもののライセンスは供与されていないので、自社製品の開発には何ら影響を及ぼさないと考えられる。
それに対して、クアルコムやMediaTek、そしてファーウェイの半導体子会社HiSilicon(ハイシリコン)などは、IPのライセンスを供与されている。だから、それがNVIDIAに有利な設計になったりという疑念は捨てきれないだろう。
NVIDIAは「Armの中立性は今後も維持される」と
もちろん、NVIDIA側も、半導体業界のこうした懸念は非常に強く認識している。
ソフトバンクGとの連名のリリースの中で、
「NVIDIAの⼀員として、Armは引き続きオープンなライセンスモデルの運⽤を⾏うとともに、これまでライセンシーにより1800億個以上のチップの出荷実績を有する世界中の顧客に対して、Armの成功の基盤である中⽴性を維持します。また、NVIDIAによる数々のイノベーションを含む両社の製品は、Armのパートナーにも利益をもたらします」
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と述べている。
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リリース文のなかで、Armの現在の体制は維持され、ライセンスビジネスには何ら影響は及ぼさないと、あえて言及したわけだ。さらにクアルコムやMediaTekなどのArmの顧客にとっては、NVIDIAのIPライセンス(例えばNVIDIAの強みであるGPU)を供与される可能性が出てくるというメリットがあるということだ。
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しかし、NVIDIAがいくらそれを強調しようが、NVIDIAという事業会社がArmを所有することと、ソフトバンクGのような投資会社が所有することでは、自ずとそれが持つ意味は変わってくる。
この事実をArmの顧客がどう考えるのか。今後行われるであろう規制当局の判断も、業界への影響をどう評価するかが、争点になるのではないだろうか。
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(文・笠原一輝)
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