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概要:2020年4月から6月の四半期決算をもとに飲食業界の比較、また売り上げ増減で対照的な「LINE」と「ぐるなび」を比較した上で、飲食業界のトレンドの行方も追う。
A. コロナ禍で飲食関連の売上を激増させたのはLINE、激減させたのはぐるなび
2020年4月から6月の四半期決算が出揃ってきましたので、今日は飲食関連のサービスを提供する会社を比較していきます。
その中でもコロナ禍で売上を大きく増やしている「LINE」と、大きく減らしている「ぐるなび」の対照的な2社を比較した上で、飲食業界のトレンドがどのような方向に向かっているのか、ということも見ていきたいと思います。
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LINEのレストラン関連ビジネスの決算
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冒頭でも書きましたが、LINEの飲食関連ビジネスは、コロナ禍において非常に大きく売上を伸ばしています。
LINE株式会社 2020年12月期 第2四半期 決算補足説明資料(2020年7月29日)
4〜6月のLINE全体の四半期売上は584億円で前年同期比+5.3%でした。その中でも戦略事業と位置付けている「LINE Pay」、「LINEグローバル」、「グルメ領域」などの四半期売上は79億円で前年同期比+11.7%と成長しています。
一般的に飲食関連のビジネスはコロナウイルスの最中は厳しくなるのですが、LINEのグルメ領域事業の「LINEデリマ」などテイクアウト・デリバリーに関連した事業の取扱高は前年同期比+66.8%とが大きく伸びています。
LINEのトラベル領域の取扱高が前年同期比▲81.2%と大きく落ち込んでいることと比べると、非常に対照的な結果だと言えるのではないでしょうか。
ぐるなびの決算
続いてコロナ禍で苦戦している、ぐるなびの決算を見ていきたいと思います。
株式会社ぐるなび 2021年3月期 第1四半期 決算説明会資料(2020年7月30日)
四半期売上は前年同期の75.5億円から、前年同期比▲76.4%の17.8億円と売上が約1/4まで落ち込んでしまいました。
上図の「サービス別売上」のグラフを見れば分かる通り、ストック型のサービスも、スポット型のサービスも両方大きく落ち込んでいる形になり、相当大きなダメージがあることが読み取れます。
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四半期の売上が17.8億円で、営業利益が▲38億円と売上の2倍以上の赤字が出てしまったというのが今回の四半期決算でした。
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2019年5月に楽天と業務・資本提携を強化する発表をし、いわば楽天グループ入りしているので、短期的な資金面やキャッシュフローの心配はないとはいえ、非常にお腹が痛い状況になっていると言えるのではないでしょうか。
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コロナ禍の飲食業界の全体トレンド
ぐるなびの決算説明資料の中にいくつか飲食業界全体のトレンドを把握するのに役立ちそうなスライドがあったので、ご紹介していきます。
ぐるなびは多くの飲食店で利用されており、マーケットシェアが十分大きいので、ぐるなびの出店店舗の傾向は飲食業界全体のトレンドにかなり近くなるのではないかと思います。
初めにこちらのグラフですが、ストック型の売上が4月、5月と大きく落ち込んでいます。売上が大きく減少した最大の理由は、ぐるなびが「休会対応」を実施したためです。
飲食店側は、売上自体が大きく落ち込んでいるため、ぐるなびの料金を支払える状況ではありませんので、一時的に休会という形で対応しています。
右側のグラフにある通りに加盟店の数は減ってきてはいますが、休会対応したことによって、まだ復活する望みが残っていると言えるのではないでしょうか。
6月の月間売上は3月との比較で約43%、前年同期比で約39%と、まだ通常時の4割稼働という感じだと思います。ぐるなびが休会対応をすることで、一時的に売上は落ち込みますが、コロナウイルスが落ち着いた時に顧客の再獲得コストを少しでも減らすことができ、一刻も早く売り上げを元に戻すことができるようにするための救済措置だと考えれば良いでしょう。
左側のグラフの「ネット予約件数」が6月にはだいぶ戻ってきていますが、右の「ネット予約件数の前年同期比」によると、まだ半分程度の回復という状態です。
ひとつ前の「ストック型の売上の推移」のグラフと合わせて考えると、飲食業界の稼働は今のところ正常時の40〜50%程度だと推測できるのではないでしょうか。
この資料はぐるなびの決算にいつも出てくるグラフです。横軸が有料加盟店数、縦軸が1店舗あたりの売り上げ(ARPU)を示しています。
4月と5月は、東京都の飲食店の時短営業要請があったこともあり、1店舗あたりの売り上げが大きく落ち込んだタイミングでした。
6月以降は経営難により退会した飲食店が増えたため、有料加盟店の数が減少する一方、休会から復帰した店舗がもあり、一店舗あたりの売上が上がってきています。
ぐるなびとしては、コロナウイルスが落ち着いた後には右図のように、新サービスの導入や営業エリアを拡大することで、店舗数も一店舗あたりの売上も再成長が望めると予想しています。
飲食店側のテイクアウト・デリバリー対応状況
最後にぐるなびの決算説明資料に、現状の飲食業界のテイクアウトとデリバリーの対応状況を表す、とても面白いデータがあったので紹介しておきたいと思います。
左側のグラフを見ると、4月時点では通常営業中の店舗が3.9%しかなかったにも関わらず、6月には55.9%まで戻ってきているというのが現状です。
4月、5月は国や都道府県毎に、飲食店の時短営業や開店自体の自粛要請を行なってきましたが、その要請が緩和されてから営業が徐々に戻りつつあったということがよく分かります。
しかし、東京や大阪など大きな繁華街がある地域では、8月も再度飲食店の営業自粛要請があり、売り上げが戻ってきたタイミングでの時短営業要請で対応を決めかねている店舗が多いようなので、今後も右肩上がりに回復するのは難しいのではないでしょうか。
右側のグラフを見ると、テイクアウトに対応してるお店が約70%あるのに対して、デリバリーに対応しているお店はまだ27%しかありません。
さらにデリバリーに関しては、57%の店舗が「対応の予定なし」としているのが特徴的です。
これだけコロナウイルスによる売上減少で苦しんでいるにもかかわらず、唯一売上を維持する手段であるデリバリーへの対応が、これだけ遅れているということが、アメリカに住んでいる私からすると信じられない部分もあります。
Shutterstock/DELBO ANDREA
「Uber Eats」や「出前館」など、デリバリーを丸ごと外注できるプラットフォームがあるのに、これだけデリバリーが普及しないのは一体なぜなのでしょうか?
日本の飲食店の大半は個人経営の小さな店舗のため、ネットへの対応が遅れているのかもしれません。そのためにデリバリーそのものを外注する仕組みがあることはわかっていても、店主自身のネットリテラシーが低いため、なかなか着手できていないという可能性もあります。
東京都などではテイクアウト、デリバリー、移動販売を始める飲食店向けに最大100万円の助成金を補助しているので、そのような補助を活用しながら、飲食店の方には上手にデリバリープラットホームに対応をしてほしいと思います。
もしかすると、飲食店側では短期間でコロナウイルスが終息すると思って、あえてデリバリーに手をつけずにいるのかもしれません。しかし今の報道を見れば分かる通り、短期間で収束することはほぼありませんので、ぜひ早くデリバリーにも対応していただければなと個人的には思います。
まとめ
今日の内容をまとめると、このようになります。
2020年4-6月
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デリバリービジネスが主であるLINEのグルメ関連は事業の取扱高は前年同期比+66.8%と高成長
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飲食店の集客支援をするぐるなびの四半期売上高は前年同期▲76.4%と大きく減少
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飲食店の稼働状況は6月時点で40-50%程度
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飲食店のテイクアウト対応率は高いが、デリバリー対応率は低い
(テイクアウト70%対応、デリバリー27%対応)
数字を見れば明らかですが、テイクアウトとデリバリーに一刻も早くリソースを集中させることが、 飲食店の経営と、飲食店関連のブラットホーム事業者にとって重要になると言えるでしょう。
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コロナウイルスの影響は、おそらく我々が想像している以上に長く続くことになると思いますので、是非これを機にテイクアウトやデリバリーがもっと普及するように、と個人的には思っていますが皆さんはいかがでしょうか。
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シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーでSearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中
決算が読めるようになるノートより転載(2020年8月10日公開)免責事項:
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