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概要:日銀の鈴木人司審議委員は29日、熊本県金融経済懇談会出席後の記者会見で、追加緩和の可能性について「(物価安定の目標に向けた)モメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には具体的な検討をするが、現時点において追加緩和は必要ない」との認識を示した。
日銀の鈴木人司審議委員は29日、熊本県金融経済懇談会出席後の記者会見で、追加緩和の可能性について「(物価安定の目標に向けた)モメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には具体的な検討をするが、現時点において追加緩和は必要ない」との認識を示した。
むしろ、金利がある一定水準を下回ると、かえって貸し出しなど金融仲介機能に悪影響を与える「リバーサル・レート」に「それほど遠い将来ではない時期に達する可能性がある」と指摘、低金利長期化による金融システムに対する懸念を示した。
市場ではマイナス金利の深掘りなど追加緩和観測が出ているが、鈴木委員は「マイナス金利の深掘りを行う場合は、副作用を上回る効果があるかどうかを慎重に検討する必要がある」と繰り返した。「それだけをもって効果が副作用を上回る形になるのかどうかは疑問がある」とも語った。
午前の講演では「物価安定だけでなく、金融システムの安定にも配慮しつつ金融政策を運営していくことがより重要になってきている」と語っている。
足元では長期金利はマイナス0.290%まで低下しており、長短金利操作付き量的・質的金融緩和(イールドカーブ・コントロール=YCC)の下限と意識されているマイナス0.2%を割り込んだ水準で推移している。
これについて鈴木委員は「金利変動の具体的な範囲を過度に厳格にとらえる必要はない」と指摘。金利低下の背景に欧米金利の低下があることなどを挙げ、「見通しが変化した場合には、もう少し正常に戻る可能性がある」との見方を示した。ただ「場合によっては、少し行き過ぎているかもしれない」とも語った。
日銀は現在、YCCで長期金利をゼロ%程度に誘導しているが、誘導目標には一定の幅を持たせている。従来はプラスマイナス0.1%程度としていたが、2018年7月に政策の枠組みを強化した際、黒田東彦総裁が「その倍くらいの幅を念頭においている」と説明したことから、市場ではプラスマイナス0.2%が上下限金利として意識されるようになった。
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