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概要:国内通信事業者2社・NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの決算が発表された。ソフトバンクを除き減収に苦しむ状況だが、10月には楽天の参入や新しい法規制の実施も控えている。各キャリアの社長はどう受け止めているのか、見てみよう。
日常生活やビジネスの現場でも必需品となったスマートフォン。その買い方や料金が10月を機に大きく動こうとしている。
撮影:今村拓馬
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが相次いで2019年度第1四半期決算会見を行った。NTTドコモやKDDIが値下げや販売方式の変化による「減収」に苦しむ中、ソフトバンクだけが増収増益を達成した。
ドコモでは、5月末まで提供していた、端末割引をやめる代わりに毎月1500円を請求額から割り引く「docomo with」が収益の足を引っ張った。
ドコモの新料金プランは7月23日時点で357万契約を突破。
撮影:小林優多郎
今後は、菅官房長官による2018年8月の「携帯電話料金は世界に比べて高すぎる。4割値下げできる余地がある」という発言を受けて、2019年6月に導入した新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」が収益を悪化させる可能性が高い。
ドコモの吉澤和弘社長によると「新料金プランの申込件数は7月23日時点で375万件。ギガホの加入率は3割弱」という。
ドコモでは4年前に料金プランを改定しているが、当時は音声通話のカケホーダイが目新しいこともあり、申し込みが殺到。同じ時期で500万以上の申込みがあったという。
ただ、今年の新料金プランは、端末の割引が適用中のタイミングでの切り替えでは値下げにならないため、新料金プランへの変更を見送っているユーザーも多い。吉澤社長は「1年後には1700万契約を見込めるのではないか」と語った。
10月の楽天の参入で既存3キャリアは対抗プランを発表か
楽天の三木谷浩史CEO。
撮影:小林優多郎
ただ今後、既存のキャリアにとって厄介なのは楽天の存在だ。
2019年10月には楽天が第4のキャリアとして新規参入を果たす。同社の三木谷浩史CEOは「携帯電話業界の民主化」を掲げ、安価な通信料金プランで大手3社に対抗する構えだ。
そんな中、「政府の値下げ要求には微調整で対応する」と新料金プランを発表せず、静観の構えを見せていたのがソフトバンクだ。
宮内謙社長は「(サブブランドである)ワイモバイルで新料金プランを発表するつもりだが、楽天による料金プランの発表を待っている状態。おそらく、楽天はMVNO的なプランを出すとするならば、いまの格安スマホ領域に出てくるのではないか」と語る。
ドコモ吉澤社長は、筆者のインタビューで「楽天の動向を見守りたい」としており、楽天の料金プラン発表によって、大手3社が一気に対抗プランを発表していくことも予想される。
10月には「違約金1000円」「端末割引2万円上限」の逆風も
総務省も新規制に向けて動いている。
撮影:今村拓馬
3キャリアを襲う逆風は、第4のキャリアとして参入する楽天だけではない。
総務省ではキャリア間の競争をさらに促進させようと、法律の改正に着手。10月1日には改正電気通信事業法が施行される。
まもなく施行に向けたパブリックコメントが公表される予定だが、「違約金(契約を早期に解除するときにかかる料金)は9500円から1000円に値下げ」「端末割引は2万円までが上限」「長期契約の見直し」などが盛り込まれる見込みだ。
KDDIの提供する「アップグレードプログラムEX/EX(a)」の実施例。9月30日で受付を終了する。
出典:KDDI
現在、スマホを購入する際、KDDIやソフトバンクでは、10万円以上するハイエンドモデルでも月々の負担額を軽減させようと4年割賦が導入されている。
しかし、機種変更したくても4年、同じスマホを使い続けなくてはならないのはストレスとなるため、2年間、割賦を支払えば、残り2年の残債を免除するという仕組みが導入されている。
つまり、10万円のスマホであれば、ユーザーは5万円の負担だけで新しい機種に交換できるというわけだ(ただし、使っていたスマホは回収されてしまう)。
この売り方は、端末を下取りで回収しつつ、割引を適用することで、ユーザーの負担額を下げるというものだ。しかしこの場合、下取り価格が下落したときなど、ユーザーへの割引額が2万円を超えてしまう可能性がある。
また、改正法では端末と料金の完全分離を求めている。そのため、10月以降、こうした売り方の継続が難しく、KDDIは8月1日に同様の売り方である「アップグレードプログラム」を9月30日で提供終了すると発表。ソフトバンクも宮内社長が「(端末代金と料金の)分離型ではないため、9月末で終息する」とした。
長期契約者優遇を継続するドコモ、チャンスと捉えるソフトバンク
NTTドコモの吉澤和弘社長。
撮影:小林優多郎
一方、長期契約者の優遇見直しについて、納得がいかないとしているのが、ドコモの吉澤社長だ。ドコモには契約年数が10年、15年を超えるユーザーが多い。
吉澤社長は「パブリックコメントも出したが、ユーザーが同じキャリアをずっと使い続けているのは、料金、ネットワーク、サービスを信頼してもらっているからだ。その感謝としてポイントなどを付与している。長く使っていただいている感謝の意味があり、補助には当たらないと考えている。このまま、進めていきたいと思う」として、長期契約者の優遇を継続していく考えを示した。
総務省としては、料金競争を促すため、ユーザーの流動性を高めたい狙いがある。そのため、キャリアを解約する際の違約金も9500円から1000円に値下げさせるつもりだ。
ソフトバンクの宮内謙社長。
撮影:小林優多郎
これにより、大手キャリアから楽天あるいは格安スマホにユーザーが移行すると見られるが、逆にチャンスと捉え始めたのがソフトバンクだ。
宮内社長は「(違約金1000円はネガティブではなく)その方向で決まったわけだから、頭は完全にチェンジしている。マイナス要因もあるが、流動しやすくなる。持っている3つのブランド(ソフトバンク、ワイモバイル、LINEモバイル)をうまく活用して、他社からお客さんをいただきやすくなるのでないか」と胸を張った。
楽天の参入、さらには電気通信事業法の改正によって、どんな地殻変動が起きるのか。3カ月後にはまた各社の決算会見が開かれるが、悲喜交々(こもごも)の社長たちの姿が見られるかもしれない。
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